羽田空港の救急体制に不安 病院到着まで52分、外国人はさらに(SankeiBiz   2019年10月29日)https://www.sankeibiz.jp/macro/news/191029/mca1910290500002-n1.htm

平成29年中の全国の救急出動件数は634万件。119番通報から現場到着まで5分〜10分が61.8%。現場への到着時間は平均は8.6分だが、病院収容までは39.3分だ。(消防白書 https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h30/chapter2/section4/38607.html

救急車の現場到着までの時間は年々長くなっている。羽田空港の場合、病院到着まで日本人で52分。外国人は61分だという。空港ではクリニックまで患者が歩くことを想定しているという。空港内は動線が長く、応急処置が遅れることも想定される。ロンドン・ヒースロー空港では、自転車救急隊員が巡回し、応急処置ができる体制が整っているという。管理体制もクリアしなければならないが、医療機関への到着時間の短縮は早期解決が求められる。

【ポイント】羽田空港の救急医療体制に不安があることが専門医や研究者の指摘で明らかになった。国際線ターミナルから病院までの到着時間は東京消防庁管内全体の平均を大きく上回り、外国人ではさらに時間がかかる。改善策として、欧米の空港で実績を上げている自転車救急隊の導入などを提言している。

羽田空港には国内線と国際線で3つのターミナルビルがあり管理運営が分かれている。それぞれのビルには患者が自ら歩いてくることを想定したクリニックがある。厚生労働省東京検疫所東京空港検疫所支所にも医師が常駐するが、倒れた傷病者の元に駆け付けるのは本来業務ではない。原則として119番で救急車を要請することが多い。

2015年に東京消防庁救急隊が国際線ターミナルから医療機関に搬送したのは167件で、平均到着時間は52分。東京消防庁全体の39分を大幅に上回った。日本人の平均時間は49分だったのに対し、外国人は61分と時間がかかった。成田空港のクリニックには24時間医師が待機しているが、羽田は各クリニックの診療時間外の救急車要請が全体の37%を占めた。原因は「軽傷、軽症者で、救急車に収容してから出発までの時間が長い。コミュニケーションの問題で、搬送への同意や搬送先の病院決定に時間がかかるのではないか」という。

救急車の出発から到着までの時間は管内全体と同じだが、患者にたどり着くまで2分、搬送時間も5分、羽田空港からの方が長い。救急隊がビルに到着してから患者にたどり着くまでの動線が長く、複雑なことで時間がかかるという。

羽田と同規模のロンドン・ヒースロー空港では、日本の救急救命士より広く医療行為が認められている救急隊員が、1日5人体制で常駐している。AEDをはじめ応急処置の装備を携え、自転車でビルを巡回。傷病者が発生すれば平均2分で駆け付けられるという。また、空港専用救急車が常駐し先導なしで空港内を走れる。運転手も空港内の通行方法や地理を熟知し、現場に急行する。救急ヘリが飛行機のそばまで乗り入れることも可能だ。一方、羽田では空港外の消防署の救急車がゲート通過の手続きを取り、制限区域内では先導車と同行する必要がある。また、東京都はドクターヘリを導入していない。

羽田の現状を改善するため、救急隊を導入するための法整備を急ぐことや、制限区域内への救急車の配置、周辺自治体とのドクターヘリ乗り入れ協定の締結などを提言している。