自転車活用は、ロンドンと尼崎に学べ
(日経ビジネスオンライン 11月28日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20141127/274328/?P=1

歩道を歩いていると猛スピードで駆け抜ける自転車にヒヤッとした経験のある方も多いことだろう。
また、自転車対歩行者の事故も急増しており、賠償額も高額になるなどの悲劇も生んでいる。
今、歩道を拡幅して車道を削減するなど、人が往来するのに便利な方向に舵が切られつつある。
自転車道をどのように作るかを考えると難しい課題が見えるのも事実だが、
可能な所から尼崎市のような取り組みを広げてほしい。

・自転車は道路交通法で「軽車両」に該当するため車道を通行するのが「原則」だ。車道では左側の路側を走るのがルール。
 2013年12月施行の改正道路交通法では、右側を走った場合には法律違反となり、罰則が科されることになった。
・交通事故の総件数は2000年の93万1934件から2010年には72万5773件へ約2割減少した。一方、自転車対歩行者の事故は、1827件から2760件と約1.5倍に増加している。

・ママチャリが普及した1970年代の日本はモータリゼーション花盛りで、車道はクルマの走りやすさが優先された。
 ママチャリが歩道を走っても、それをとがめるという風潮はなかった。その「例外」が40年にわたって続いている。
・マウンテンバイクやロードレーサーなどのスポーツタイプ自転車の愛用者の多くは道路交通法を守って、車道を走っている。

・英国・ロンドンが2012年の五輪開催をきっかけに、自転車シティに変化した。
 2008年にロンドン市長に就任したボリス・ジョンソン氏は、渋滞解消や健康増進を掲げて、ロンドンを自転車シティに改造する計画を打ち出した。
 市内中心部から放射状に12本、全長900キロメートルに及ぶ自転車専用レーンを整備した。
 今では市内600カ所で自転車の貸し出しと返却ができるシェアサイクルも実現している。

・ロンドンを視察した舛添知事も「都内の自転車レーンの距離を2倍にする」と発言している。
 自転車専用レーンは『歩道の中』を区分した道。車道に設ける自転車専用レーンを指していないという。
 東京都では歩道内を区分した自転車専用レーンは120キロメートルあるが、車道に敷かれたレーンはわずか9キロメートルしかない。
・ロンドンの自転車専用レーンは車道側。ニューヨークでも1500キロメートルの自転車専用レーンが敷設されているが、ほとんどが車道側だ。
・車道に専用レーンを作らなければ歩行者と自転車の事故が増える可能性が高い。

・兵庫県では、2012年度から「歩行者・自転車分離大作戦」を展開し、尼崎市を中心に自転車専用レーンの設置を進めてきた。
 歩行者と自転車の事故が多い路線や通学路で重点的に安全対策を実施。車道の両端を青色に舗装して自転車の通行レーンを明示した。
 幅1.5メートルの自転車専用レーンを両側に敷いたため、車道をひとつ減らす道路もあったが、特に交通渋滞が発生したことはないという。
 自転車の通行を意識するため、路肩に違法駐車するクルマが減少した。
 結果、車道を走る自転車が32%から59%に倍増し、自転車の逆走が8割減り、路上駐車は3割減ったという。
・カラー舗装の自転車専用レーンなら1メートル当たり5000円程度で敷設できるという。
・2014~2018年の5年間で自転車専用レーンを200キロメートルまで伸ばす目標だ。