深刻な観光公害と災害弱者 世界的な旅行者増でリスクも拡大(SankeiBiz   2019年10月29日)https://www.sankeibiz.jp/business/news/191029/bsc1910290500003-n1.htm

世界の海外旅行者は2000年の6億8000万人から、18年に14億人、30年には18億人と予測されている。大きな経済効果ももたらし、観光は世界の一大産業セクターとも言われる。北海道倶知安町でG20観光相会合が開かれ、旅行者急増に伴う「観光公害」と「自然災害」について語られた。交通機関の混雑やごみ問題から治安の悪化、住民の生活との調和なしには、観光は成り立たない時代に入っている。この記事はこれらの要旨が簡潔にまとめられている。

【ポイント】世界的な観光ブームの陰で、旅行者急増に伴う「観光公害」と、「自然災害」のリスクの懸念材料が浮上している。放置すれば成長を阻害しかねず、北海道倶知安町で開かれたG20観光相会合では取り組みが開かれ、赤羽一嘉国土交通相は「新たな一歩を踏み出せた」と総括した。

国連世界観光機関によると、世界の海外旅行者数は2000年の6億8000万人から、18年に14億人へ増加。30年には18億人に拡大すると予測され、世界景気の回復基調、LCCの台頭に加え、ビザ規制緩和が要因だ。ミャンマーは18年、日本人観光客らのビザを免除。サウジアラビアは今年9月、観光ビザを解禁した。日本も各国に対し規制を緩めており個人旅行で効果が出ている。

その陰で、観光公害も指摘されている。交通機関の混雑やごみ問題から治安の悪化、物価の高騰までさまざまだ。スペイン・バルセロナなどでは、行政の観光振興政策をめぐり、住民の抗議デモが起きた。
美しいビーチが広がるフィリピン中部のボラカイ島。観光客の殺到で開発が進み、海には汚水が垂れ流された。18年4月、ドゥテルテ大統領は半年間の閉鎖を命令。排水施設の整備、違法建築物の撤去を経て再開にこぎ着けた。訪問者数には上限を設けた。

京都市では、無断で私有地に立ち入ったり芸舞妓の写真を撮ったりするケースが相次ぎ、門川大作市長は「市民生活との調和を一層重視しなければいけない」と訴える。
岐阜県の白川郷。合掌造り集落をライトアップする冬のイベントには国内外から1日7000~8000人が詰め掛け、特定の時期は集落を臨む展望台の入場を予約制に。「住民は渋滞に巻き込まれ、展望台に向かう狭い道は観光客があふれる危険な状況だった」と話す。
沖縄・宮古島は、リゾート開発ラッシュによる建設作業員の需要でアパートなどの家賃が東京都心並みに高騰し、条件に見合う転居先も見つからず、生活基盤の確保に不安を感じている住民が多いという。

地球規模の気候変動による災害への対策も急務だ。今年も、インドネシアのバリ島で噴火、バハマはハリケーン。台風19号では、訪日客から避難に関する相談が殺到した。
土地や言葉に不慣れな観光客は「災害弱者」になるため、避難誘導などの体制整備が欠かせない。
避難所となる体育館、観光施設に無料Wi-Fiを整備、スマホによる情報を入手しやすくする環境が欠かせない。