中国の子供たちによる訪日教育旅行、その充実ぶりから見えてくるもの(前編)(やまとごころ 2019年10月3日)https://www.yamatogokoro.jp/report/34621/?utm_source=newsletter&utm_medium=email

訪日教育旅行が増加している。これまでの訪日教育旅行は、学校訪問での交流を目的としたツアーが多かった。台湾(401校・1万3392人)、韓国(237校・5774人)、中国(166校・4127人)、アメリカ(265校・3844人)が学校訪問したという。しかし訪日しやすい夏休みに日本の子供たちを登校させるのは難しいなど、受入は消極的なようだ。近年の訪問先は、お菓子工場、寿司づくり、茶道教室、防災センター、リサイクル施設などで、農家民泊に宿泊するという。訪日教育旅行に参加する海外の小・中学生の真面目な姿は、かつて日本にもあった真剣さを感じる。

【ポイント】近年急増しているのが、中国からの訪日教育旅行だ。8月上旬、中国広東省の小学生から高校生までの約40名の子どもたちが、教育旅行を目的としたツアーで関西地方を訪れた。ツアーに参加したのは、心和青少年商学院という塾の生徒たちだ。
経営者の子弟が多く、夏休みや春節などの長期休暇を利用した海外研修旅行を実施している。
小中学生と高校生の二班に分かれた子供たちが7泊8日の訪日教育旅行を体験した。訪問先は、お菓子工場、寿司づくり、茶道教室、防災センター、リサイクル施設、農家民泊だった。USJのようなアミューズメント系のテーマパークは日程に入っていない。
子供たちは、毎晩夕食後に教員たちの指導でその日の見聞や体験をおさらいし、感想文を書くなど、夜遅くまで研修授業を行っている。取り組む姿も真剣だ。「日本人は正直で、サービス精神は素晴らしい。ぼくたちは日本から多くのことを学ぶべき」などと、大人びたことを感想文に書く子もいる。
子連れ旅行者が日本を訪れるのは、中国で夏休みが始まる7月1日からだ。訪日中国人は2019年7月105万500人(19.5%増)。8月100万600人(16.3%増)と過去最高だ。
これまで訪日教育旅行といえば、学校訪問での交流を目的としたツアーを指すことが多かった。「外国の若者に日本の魅力を知ってもらい、また訪れたいと思ってもらうことにあり、受入地域におけるリピーターの獲得」「日本の児童が海外に行かずとも異文化を体験し、国際理解を深める」などのメリットを挙げる。
2017年の学校訪問を伴う教育旅行の受入数は3万9531人(6730人増)で、2005年以降、増加傾向を示す。台湾(401校・1万3392人)、韓国(237校・5774人)、中国(166校・4127人)、アメリカ(265校・3844人)、オーストラリア(215校・3647人)。その他マレーシア、タイ、ニュージーランド、インドネシア、シンガポールなど、アジア太平洋地域の国々が大半である。
学校訪問では、授業参観や給食などの日本の学校生活体験、両国の子供たちが一緒に書道や剣道など日本文化体験、日本側の吹奏楽演奏などクラブ活動の成果発表が行われることが多い。中国の子供たちはクラブ活動の経験がほとんどなく、困惑する面もあった。
台湾は、訪問校について専攻や学力など共通する学校との交流を求める傾向にあり、中国は、エリート校との交流が求める。アメリカは、日本語学習の一貫として日本人と交流する目的があるという。日本側が各国のニーズに合わせることはたやすいことではない。日本を訪れやすい夏休みでも、日本の子供たちを登校させるのは難しい。受入に積極的に取り組む自治体は限定される。
こうしたことから学校訪問にこだわらない、新しい訪日教育旅行が生まれているのである。中国の訪日教育旅行は、学校交流が主流だった時代から、エリート育成を意識した学びの旅に変わってきている。