訪日中国人消費単価 74.7万円は少し高すぎる? ~訪日外国人消費動向調査(23年1-3月)をやや深堀りしてみた~
(株式会社D2C Xの中西恭大 2023年4月23日)
https://note.com/ynakanishi/n/ne740cd159f69

【ホッシーのつぶやき】
2023年1~3月の訪日外国人の旅行消費額は1兆146億円、1人あたり支出は中国がトップで74万7000円という数字に驚きと、???が浮かんで、中西さんのnoteを見たのですが納得でした。あくまで推測ですが、1-3月は旧正月期間でり帰省する中国人留学生が多く、空港での調査対象になった可能性があり、平均宿泊日数が75.8泊と長く、年間の留学費を回答された可能性がありそうです。
ここまで深掘りしなくては分からない数字だけに中西さんに脱帽です。

【 抜 粋 】
非常に驚きのニュースが先週4/19(水)に発表されました。

訪日外国人の旅行消費額、2023年1~3月は1兆円越え、1人あたり支出は中国がトップ、買い物代は減少 ー観光庁(速報値)
https://www.travelvoice.jp/20230420-153357

なんと、2023年1-3月での訪日外国人旅行消費額が1兆円を超え、コロナ前の9割近くに達したとのことです。日々現場で様々な方々とお話ししているので肌感覚的にはかなり消費が進んでいるのを実感していましたが、既に1兆円を超す規模までとは想像していませんでした。

また、国籍別でみると以下とのことです。

国籍・地域別では、韓国がトップで1999億円(19.7%)、次いで台湾1535億円(15.1%)、中国1069億円(10.5%)、香港1054億円(10.4%)の順。一般客(クルーズ客を除いた訪日外国人) 1人あたりの旅行支出は21万2000円と推計。国籍・地域別では、中国が最も高く74万7000円、次いでオーストラリア35万8000円、フランス30万円が続いた。韓国は12万5000円、台湾は19万5000円。すべての国籍・地域で2019年を上回った。

『韓国が全体でシェアが高いのは納得だな、一人当たり単価では中国が一番高いのか、富裕層が来て爆買いでもしてるのかな?』

初めてこの情報に接したときはその程度の認識でした。しかし、何となく喉に何かが詰まってしまったような感覚を覚えて、もう少し深堀りしてみようと思い、今回筆を取りました。

訪日中国人消費単価74万7000円
全体平均の消費単価は21万2000円の中で、その3.5倍以上の消費単価となった訪日中国人。とはいえ、これを鵜呑みにしてよいのか?少し疑問を持つと調べずにいられなくなる性格の私は、二日酔いとスマホの使い過ぎによる首の痛みに耐えながら、追い打ちをかけるワインに手を伸ばして調べ始めた。

調べ始めてすぐに大きな違和感を発見する。

訪日外国人消費動向調査(2023年1-3月)

平均泊数が75.8泊?????

私が見る限り、訪日消費額が1兆円を超えたことや中国人の消費単価が70万円を超え一番大きいことを伝えるメディアは数あれど、平均泊数について報道しているメディアは無かったと思います。常日頃から一次情報にアクセスすることを反射的に意識している私は、これは原文やデータを見に行くしかないと決意する。

訪日外国人消費動向調査の2023年1-3月期の速報概要
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001602880.pdf

今回はこのEXCEL表を開いて中身を見てみようと思います。

少し当てをつけている項目がありました。”娯楽等 サービス費” です。一人当たり単価で宿泊費や買物代より高くなっていまして、コロナ前は高くなかった項目なので、まずはここから深堀りしようと。

娯楽等サービス費の定義は何だろうか? 集計表を見てみると内訳が判明した。

表2-1 国籍・地域(21区分)別 費目別購入率および購入者単価

詳細は割愛するが、他国と比べても中国はこの娯楽等サービス費を利用した回答者数が多い。
この ”その他娯楽等サービス費” に含まれた選択肢に、公営競技(競馬・競輪等)の入場料・投票券(馬券・車券等)がある。

表4-1 国籍・地域(21区分)別 平均泊数

平均泊数の内訳をのぞき見ると興味深いことが分かりました。なんと
・91日以上1年未満の宿泊回答者数が多く、平均198泊
・性別/年代別で見ると、男女ともに20代が最も長く100泊以上

これはもしかして留学生のことかな?という疑念を持ち始めます。

参考1 国籍・地域(21区分)別 1人1回当たり旅行消費単価

20代が最も消費単価が高いのだ。通常20代の消費単価が高いということはあまり考えづらい。しかし、あくまで仮説の域を出ないのでもう少し他のデータも見てみる。

ここで疑惑がほぼ確信に変わる。”主な来訪目的”の回答者合計316名中、85名が”留学”と回答しているのだ。そして宿泊施設に関する回答も”学校の寮・会社所有の宿泊施設”が多い。

”留学”と回答した方の一人当たり平均消費単価は、1,670,990円だ

まとめ
あくまで推測の域は出ないですが、今回調査した結果、2023年1-3月の訪日中国人消費単価を大きく押し上げているのは、留学生である可能性が高いと考えています。そうなると、平均宿泊日数が75.8泊であることやその他娯楽等サービス費の消費単価が高くなる≒留学費の年間学費を回答している?ということも納得できるかなと思います。

・平均宿泊数を押し上げているのは20代の男女
・平均消費単価が最も高いのは20代の男女
・主な来訪目的の回答者約25%が留学と回答
・利用した宿泊施設の内、学校の寮の単価が高い
・その他娯楽等サービス費には、学校の授業料が含まれている

また、1-3月は旧正月期間であったことから一時的に帰省する中国人留学生も多い可能性があり、その方々が空港での調査対象になった可能性はあると思います。

最後に、今回のnoteでは言及しませんが、訪日外国人消費動向調査には ”観光・レジャー目的” の方に特化した集計表もありまして、そこでは訪日中国人旅行者の回答サンプル数はそもそも42人しかありません。(訪日韓国人旅行者のサンプル数は1,050人です)

今回の訪日外国人消費動向調査の中国に関する結果については、あくまで参考値として捉えるのがベターかなというのが私の結論になります。