【データ】東日本大震災10年・防災意識アンケート調査
(観光経済新聞 2021年1月23日)
https://www.kankokeizai.com/【データ】東日本大震災10年・防災意識アンケート/

【ポイント】
防災セット(非常用持ち出し袋)は、「持つ必要がある」は88%だが、「持っていない」が57%で、「持っていない理由」は「自宅に保管場所がない」が44%だという。
東日本大震災の時、「防災セットは持っていたが、押し入れの奥に眠っていて持ち出せなかった」という意見は重要だ。また「避難所で一番つらかったこと」の一つに「座れなかったこと」がある。足が悪く、地べたに腰を下ろすと転倒する危険性が大きかったという。
防災セットを常備することも重要だが、シニアが増加するなか、避難所での対応の研究も深める必要があると感じる調査だ。

【 内 容 】
株式会社アントロット(本社:東京都中央区、代表:上田直輝)は1月12日、防災セット(非常用持ち出し袋)に関するアンケート調査データを公開しました。調査は2020年5月~9月、関東(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)在住者1215人と東北(岩手県、宮城県、福島県)在住者1091人を対象に調査手法や世帯人数の比率が同程度になるように実施。防災セットは1つ以上の防災グッズを袋やリュックなどでまとめて、避難が必要な災害発生時すぐに持ち出せる状態にしているものと定義しました。

調査の結果、
・防災への意識が高まっている昨今でも、避難を想定した防災セット(非常用持ち出し袋)の所持率は高くない
・最大の要因は「めったに起こらない災害に備えて、防災セットを保管しておく場所が自宅にない」
・所持率を地域別で見ると、東日本大震災を経験した東北地方が関東地方を下回った
・東北在住者の多くは東日本大震災当時、防災用品の準備をもっとしておくべきだったと回答
・それでも現在、防災セットを持っていない理由として、「震災時も防災セットは持っていたが、押し入れの奥に眠っていて避難所まで持って逃げることができなかった」「市販の防災セットの中身は震災時に必要だったものと乖離している」などの意見があった
・避難所でなかなか入手できず困ったものは充電器、洗顔料、コンタクトレンズの保存液、髭剃り、メイク落とし、スキンケア用品などの日用品だった
などの現状が浮かび上がりました。

こうした状況を解決する一助として、普段は内部に日用品をストックできる椅子として活用でき、災害時には背負って避難できる防災チェアを開発しています。地震や津波に限らず、豪雨被害、土砂災害、火山噴火…誰しもが災害に遭遇する可能性があります。この調査結果、そして防災チェアをきっかけに、避難が必要になった時のことをより鮮明に考えるきっかけになればと願っています。

今後は見落とされている防災の課題に取り組む企業との連携や、東北3県の災害公営住宅(復興住宅)への防災チェアの寄贈を予定しています。

■防災セット(非常用持ち出し袋)に関するアンケート調査結果
アントロットでは防災チェアの開発に先立って、この事業が本当に社会にとって意味があるのか、幾度となく検討してきました。事業の目的は防災チェアを必要としてくれる方に届けることだけでなく、多くの方々に災害時の避難についてより深く考える機会を作ることです。かつて被災地で聞いた声から生まれた防災チェアの必要性の裏付けとして、そして現状を映し出すデータとして、アンケート調査を実施しました。

調査期間:2020年5月~9月
有効回答数2306人(調査人数2477人)
10~80代の男女。各項目に自由記入欄を設置。
関東在住者と東北在住者でインターネット調査と電話調査・対面調査の比率が同程度になるように実施。
関東在住者と東北在住者で世帯人数1人と世帯人数2人以上の比率が同程度になるように実施。
関東(東京都611人、神奈川県196人、千葉県185人、埼玉県223人)1215人。
うちインターネット744人(61.2%)、対面・電話471人(38.8%)
東北(岩手県228人、宮城県677人、福島県186人)1091人。
うちインターネット649人(59.5%)、対面・電話442人(40.5%)
防災セット(非常用持ち出し袋)=1アイテム以上の防災グッズを袋やリュックなどでまとめて、避難が必要な災害発生時すぐに持ち出せる状態にしているものと定義。自宅に保管している水や保存食などの備蓄物は除く。

■防災チェア(試作品)

製造業の品質管理のサポートやリハビリ用品の開発を手がける株式会社アルモ・リベルタ(富山県入善町)の協力を得て、現在開発を進めています。

■防災チェア開発の経緯
新聞記者として東日本大震災の被災地を取材していた2016年。宮城県石巻市の仮設住宅で高齢女性から凄惨な震災当時の体験を取材していました。
「避難所では、何が一番つらかったですか?」
ありきたりな質問に対する女性の回答は意外なものでした。今後の生活への不安、親戚や友人の安否、食料不足や寒さでもなく「座れなかったこと」。
女性は足が悪く、地べたに腰を下ろすには転倒する危険性が大きく、一度座ると自分で立ち上がるのは非常に困難でした。朝だけ近くの人の手を借りて立ち上がり、夜までほとんど座らずに過ごしていました。体育館などにマットを敷いただけの避難所は、高齢者や足が悪い人にとって厳しい環境だと知りました。
「椅子なんて持って逃げられないからね」と話した女性の言葉はずっと耳に残り続け、数年の時を経て防災チェアの構想につながりました。(アントロット代表 上田直輝)