韓国で日本食ブーム 政冷食熱 脱サラ組参入
(東京新聞 2019年6月5日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201906/CK2019060502000276.html

韓国人の訪日旅行の人気が復活しているが、「日本食ブーム」も起きているという。
韓国の日本食専門店は17900店で、14年から4割近く増加している。
日本では若い女性を中心に「第三次韓流ブーム」が起こっているといい、日韓関係は民間レベルで相互交流が盛んになっている。

【ポイント】
韓国で「日本食ブーム」が起きている。
韓国国税庁によると、すし店や居酒屋などの日本食専門店は2018年2月現在、約17900店で14年の約13000店から4割近く増加。食文化の変化や日本への旅行客増加を背景に人気が高まり、韓国人が会社を辞めて開業するケースも増えている。

ソウルの弘大(ホンデ)地区では日本語の看板が並び、日本の通りと見まがう風景だ。
韓国を代表する繁華街、江南(カンナム)地区でも日本料理店が増え、今では至る所で日本食を味わえる。
かつても日本食ブームはあったが、最近は日本の飲食店が進出する一方で、韓国人が日本食を学び、開業する店が増加している。

ソウル市内の日本食専門料理学校「立つ園」は、15年に開設。すしやふぐ料理など専門技術が必要な魚料理を中心に教え、受講生の創業も支援する。開校当初に年間120人ほどだった受講者は、18年には160人に増えた。
「日本食は価格を高めに設定できて事業性も高いため、韓国料理よりも日本食で開業を目指す人が増えている。韓国では社内の会食など大人数で食べることが多かったが、たくさんの料理を少しずつ少人数で食べる文化が定着してきたことも日本食の人気が高まっている理由」と指摘する。

受講生は20~60代まで幅広く、多くが脱サラして開業を目指している。
日本食ブームは、日本への旅行者の急増が支えている。18年に韓国から日本を訪れた旅行客は約750万人で、10年の240万人から3倍に増加した。
韓国人が日本を旅行する目的は、「日本食を食べること」が7割を超え、「ショッピング」などを抑えてトップ。「深夜食堂」や「孤独のグルメ」など日本の食番組が放映され、人気を集めていることもブームに一役買っている。

江南地区で居酒屋を営む経営者は、東京で食べた北海道名物のスープカレーがきっかけだったという。「カレーでこんな味が出せるのかと驚いた。日本料理は、同じ料理でもさまざまな味を生み出す多様性が魅力。韓国に戻り、自分でもやってみたいと思った」と振り返る。
「日本の味は韓国人にはあっさりしていたり、塩がきつかったりする。そのままの味ではなく、韓国人の口に合うように多少、味を変化させている」と話す。人気メニューの長崎ちゃんぽんも工夫を加え、辛めに仕上げているという。

歴史問題などで日韓関係は過去最悪とも言われるが、日本では若い女性を中心に「第三次韓流ブーム」が起こり、韓国では日本食人気と、民間交流が阻害されている様子はない。