世界の観光都市ランキング、2021年トップはパリ、東京は15位ながらサステナビリティに課題
(トラベルボイス 2021年12月9日)
https://www.travelvoice.jp/20211209-150223

【ホッシーのつぶやき】
観光から見た世界100都市ランキングではアジアの評価は相対的に低い。そのアジア太平洋ランキングでは「東京」が1位で、「観光インフラ」では世界の中で「東京」が2位につけている。
総合1位のパリは「観光実績」で1位はもちろんだが、コロナ後に海外からの旅行者受け入れを2021年6月に再開し、ワクチン接種完了した客への門戸開放も一早く行ったことも評価されている。日本は安全に軸足を置いており、世界の中の観光では低い評価となっている。

【 内 容 】
ユーロモニター・インターナショナルはこのほど、観光の側面から世界の100都市を評価したランキング「Top 100 City Destinations Index(トップ100都市デスティネーション・インデックス)」を発表。総合1位はフランスのパリとなった。

同インデッスは、海外からの訪問客数だけでなく、消費額や観光施設、空港などのインフラ、雇用や治安、さらにコロナ・ワクチン接種状況、SNSでのレビュー評価、空気汚染、混雑までをカバーした計6分野(経済・ビジネス、観光実績、観光インフラ、観光政策と魅力度、健康と安全、サステナビリティ)と54項目を測定基準とし、ユーロモニターが独自に数値化している。

総合ランキングの2位は中東ドバイ、続いて3位アムステルダム、4位マドリッド、5位ローマ、6位ベルリン、7位ニューヨーク、8位ロンドン、9位ミュンヘン、10位バルセロナ。

トップ10都市のうち8都市を欧州が占める一方、アジア太平洋地域の各都市は全般的に低迷し、同地域で最も総合順位が高かった東京が15位。そのほかの日本の都市は、大阪(33位)、京都(34位)、福岡(56位)、札幌(57位)だった。

国境を越えた旅行がまだ回復途上にあるなか、2021年度のランキングには、国内・近隣からの旅行需要、サステナビリティや感染対策への取り組みが色濃く反映され、よりバランスのある観光戦略が問われるものとなった。

ユーロモニターでは「パンデミック禍で観光客や産業の活動が一時停止したことで、環境汚染や観光地の混雑問題が緩和され、これをきっかけにレスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)に目覚めるところが増えた」と総評。従来からのオーバーツーリズム問題に加え、ウイルス感染拡大を防ぐ狙いからも、デスティネーション・マネジメントが重要になっており、都市型デスティネーションは転換期にあるとしている。

実績トップのパリ、サステナビリティに課題の東京
総合一位となったパリは、「観光実績」で1位、「観光政策」と「インフラ」で2位。パリ市は2021年6月、海外からの旅行者受け入れを再開したほか、ワクチン接種を完了した欧州客についてはPCR検査を免除。ライバルの英国より早く門戸を開いたことも奏功し、米国やアジアからの旅行者数が急増した。ただし国内のワクチン接種率の低さから「健康・安全」の評価では下位となった。

2位のドバイは2020年7月から観光目的の旅行者受け入れており、海外客の受け入れ数ではトップ。さらに「健康・安全」での評価が高く、同項目での順位は総合トップ10都市のなかで最も高かった。ワクチン接種率が高く、公共の場や観光スポットでの厳格な安全対策が徹底していることが国内外からの旅行者の安心につながっている。

全般的に順位が低迷したアジア太平洋地域において、例外となったのが国内旅行の需要リバウンドに支えられた中国。上海(昨年34位から31位)や北京(同45位から32位)は前回調査よりも順位が上昇した。政府が国内向けイベントに力を入れたことなどが奏功し、同国観光当局によると、2021年9月の観光収入は2019年比78%増の570億ドルとなった。

オリンピック・パラリンピックの開催都市だった東京は、「観光実績」と「観光インフラ」で高評価となったものの、「サステナビリティ」の評価が他都市と比べて相対的に低く、昨年の9位から順位を落とした。

なお、アジア太平洋の地域別ランキングは以下の通り。
1位東京、2位シドニー(総合23位)、3位シンガポール(同24位)、4位上海、5位北京、大阪6位、7位京都、8位ソウル(同35位)、9位メルボルン(同36位)、10位深圳(同38位)

以下に、6分野別の評価の一部を紹介する。
「観光実績」
1位パリ、2位オーランド(米フロリダ州)、3位ニューヨーク
欧州各都市に加え、国内旅行マーケットが大きい米国や中国の各都市が上位ランク入りしており、トップ10都市のうち4都市が米国、5位には観光フェスティバル開催で国内客が前年比200%増超となった上海。世界の国内旅行需要の約8割は、アジアと米国が占めているという。

「観光政策と魅力度」
1位ダブリン、2位パリ、3位マドリッド
欧州勢が圧倒的に強く、トップ10都市のうち9都市が欧州。EUによるデジタル・ワクチン証明も好材料となった。英ロンドンは、渡航制限の影響があり昨年より順位を下げて7位。一足早く米国人旅行者の受け入れ再開に動いたパリとダブリンが恩恵を受けた。

「観光インフラ」
1位ロンドン、2位東京、3位モスクワ
インデックス算出のベースとなる6分野の中で、最も高い25%の比重を占めているのが観光インフラで、ユーロモニターでは「引き続き、デスティネーションの競争力を左右する重要な要因」と位置付けている。上位10都市にはアジアと欧州が多く、1位は文化体験からレクリエーション、さらに教育面でも価値ある内容やサービスを提供している英ロンドン。続いて2位に東京がランク入りした。

「健康・安全」
1位シンガポール、2位シャールジャ(アラブ首長国連邦) 3位ドーハ
2021年の調査で、世界全体で最も大幅にスコアが向上したのがこの項目で、100都市中、60都市で上昇。トップのシンガポールでは、他のアジア各国が「ゼロ・コロナ」を目指すなかで、「コロナと共存」を前提に高いワクチン接種率を実現。感染者数より死亡者数を減らすことに重点を置く方針を掲げている。アラブ首長国連邦のシャールジャ、ドバイ、ドーハも高評価を獲得。同国では、ワクチンの完全接種率が86%以上、接種を一部、終えた人では96%に達している。

「サステナビリティ」
1位マドリッド、2位ストックホルム、3位ダブリン
パンデミック以前から、持続可能な旅行は課題だったが、これが急務であるとの認識が広がっている。環境、社会、経済的な持続可能性に対して、旅行が大きな影響力を持つということが、旅行者、産業界、政府当局の共通認識となり、制度設計から消費者への選択肢拡充まで、様々な取り組みが動き出している。特に活発なのが「グリーン・ディール」を掲げ、脱炭素とデジタル化により2050年まで排出ガスの実質ゼロ達成を目指す欧州。ランキングでは、この分野で先頭を走るストックホルムが2位、オーバーツーリズム対策やユネスコ世界遺産の登録数で勝るマドリッドが1位に。欧州外からは、豪州メルボルンが10位となった。