2040年の旅行のカタチは？ 20年後の旅行予約の進化から「5G対応の都市交通」まで予測
（トラベルボイス 2020年7月8日）
https://www.travelvoice.jp/20200708-146561
コロナ禍における旅行需要の2020年の最悪のシナリオは、前年比80%減。コロナ以前に戻るまで4年かかるという。
「2040年までに起きる旅行産業の変革」のポイントは、サステナビリティ、パーパス、そしてデジタル化だ。「コンタクトレス」化が進み、AI対応、ロボティクスの導入も進む。
未来の旅行手配は、ユーザーが自宅でヘッドセットを装着し、目の前に、相手の反応を読み取るアバターが出現し、相談に応じる。予約決定は音声で伝え、決済には生体認証を使う。
夢物語のような予想もあるが、形を変えてでも、このような方向に進むのだろう。
【ポイント】
ユーロモニター・インターナショナルは「2040年までに起きる旅行産業の変革」を発表した。
コロナ禍で世界中に渡航制限が拡がり、旅行市場はリセットを余儀なくされている。
一方で、これを機に遅々として進まなかった気候変動問題への関心が高まり、消費者側にも企業側にも大きな変革が起きると予測した。「ポスト・パンデミック期は、サステナビリティ、パーパス（社会的な存在意義）、デジタル化を念頭に、これまでにないマインドを持つことが必要」との見方を示した。
旅行需要のシナリオは、基本パターンに加え、状況悪化を想定した3パターンを想定。最悪のシナリオでは、2020年の旅行需要は前年比80%減となり、コロナ以前のレベルに戻るまで4年かかるとしている。
経済や雇用面で、観光への依存度が大きい地域にとっては厳しい状況が続くことになるが、これを地域社会のニーズに即したサステナブル・ツーリズムへ転換するきっかけにするべきだと提言した。
長期的な影響としては、安全面への配慮から、デジタル技術を活用し、人との接触を最小限に抑制する「コンタクトレス」化が進み、旅行業におけるビッグデータとその解析、AI対応が加速する。
旅行中の荷物の運搬など、単調な作業を繰り返す業務では、ロボティクス技術の導入も進むとした。
パンデミックで高まった健康や安全に対する意識は、気候変動などの環境問題と結びつき、よりサステナブルで、逆境下でも耐性のあるビジネスを模索する機運が高まり、若年層ほど、自分たちの消費行動が社会や環境に影響を与えるという意識は強い。ミレニアル世代とベビーブーマー世代で、こうした傾向が最も高い。一方、ジェネレーションZ世代では、意識はしているものの、価格が高ければ敬遠する様子もうかがえた。
OTAの未来図
未来の旅行手配は、店舗でもスマホの画面上でもなく、スマート化された自宅で行われる。
ユーザーがヘッドセットを装着すると、目の前に、相手の反応を読み取るソフトウェアを搭載したアバターが出現し、相談に応じる。
旅行先の映像を見たり、価格を聞くだけでなく、その旅行がもたらす気候変動やエネルギー問題への影響も比較できる。予約決定は音声で伝え、決済には生体認証を使う。
アーバンモビリティ（都市交通）
都市内の移動は、自動運転の電気自動車。車内には座席が4つ、内側向きに設置され、中央にあるスクリーン経由で乗客とのコミュニケーションや様々なサービスを提供する。
移動中に夕食の予約をしたり、行き先へのルートを検索したり。走行する道は５GとIoT対応のスマート道路。車窓には、景色の説明などが表示される。
ヘリポート間を往来する空の交通システム、宅配便を届ける電子ドローンも登場する。
空の移動の未来
飛行機は電動式になり、最大でも100席ほどのサイズに小型化する。
搭乗客は、自分のフライトによる排ガス値など、環境への負荷をチェック。大きな窓には、AR（拡張現実）技術によって、飛行エリアに関する情報などが表示される。
搭乗時の諸手続きにはバイオメトリクスが活用される。
旅客にはデジタルIDが付与され、これに必要な個人データが紐づけされる。機内の座席スクリーンにはAIを搭載し、相手に応じてサービスをカスタマイズ。機内空間はカフェやバー、家族向けエンターテイメント、睡眠など、目的別にゾーニングする。
ホテルの未来
ホテルスタッフは複合現実（MR）対応のヘッドセットを装着して、宿泊客の事情に即した接客を行う。
時にはホームレスや支援が必要な人に宿泊を無料提供するなど、ホスピタリティ産業ならではの社会貢献も行う。
到着ゲストを出迎えるのはアバターのコンシェルジェ。ロボットのドアマンが荷物を客室へ届ける。
滞在中に必要な洋服や洗面用品をすべてレンタルするサービスもあり、手ぶらの利用客もいる。
館内ではテーブル、壁、鏡などあらゆる部分がAR対応仕様。インテリアにもデジタル技術を駆使する。