観光地域づくりの幹部認証の制度「CDME」とは? その中身と研修手法【コラム】
(トラベルボイス 2020年3月2日)
https://www.travelvoice.jp/20200302-138946

米国のDMOの人材育成制度「観光地域づくり幹部認証」が紹介されています。
人材育成は推進するべきですが、ただ今の観光業会は変化が激しすぎて、研修内容が実態に追いつかない面があります。研修は、教材を与えられるから受講する姿勢では意味がなくて、自ら学ぶ姿勢がないと役に立ちません。
米国のCDMEのように、実践的で多様な問題提起を、講師と受講者で議論するところに意味があるのではないかと思います。

【ポイント】
米国のDMO最大の業界団体の人材育成制度「観光地域づくり幹部認証(制度)」の紹介です。
約20年前に創設されて以来、約400人がCDMEを取得(2019年7月時点)し、私(丸山)は現在、CDME研修を受講している唯一の日本人です。

CDMEとは、DMO幹部を対象とした資格制度。申し込み時点で、経理・財務、マーケティング、人事、戦略策定といった13項目を5段階の自己評価で提出します。
資格取得要件の研修をすべて受講するには、DI 会員で7500ドル(約82万円)、DI 非会員で1万1260ドル(約123万円)となっています。CDMEの研修はとても人気で、申し込み開始とともに即定員に達するほどです。

DMOの費用負担で受講が推奨されているパターン。規模が大きいDMOなどは、複数人が受講しています。小規模のDMOは、CEOなどが自らの権限で決定したり、部長クラスでも上長にかけ合って受講の許可、研修費用を捻出してもらっています。CDMEはDMO幹部の能力開発に大きな成果があると広く認知されているからです。取得すると、名刺に肩書として表記できます。

DMO幹部の前職は、企業でのマーケティング責任者、雑誌の編集などさまざまな職種があります。
米国DMO幹部には、ホテル業界出身者が比較的多い印象もあり、ホテル業界はDMOの隣接領域のようです。これはDMOがコンベンション・ビューローから発展した経緯が影響しているかもしれません。
DMOへの就職はホスピタリティ専攻だという国もあります。米国がDMO幹部に多様なキャリアの人材を活用しているのは、DMOが始まったばかりの日本でも参考になるのではないでしょうか。

CDMEの研修の質を高めるためにガバナンス機構も整えています。
CDME理事会を独立した機関として設置して、カリキュラムの検討、承認を行っています。理事は、DMOだけではなく、観光関連の産業界、大学などの学術界などから選出されています。
CDMEのカリキュラムは随時改訂されます。2017年にも見直しがあり、従来の内容とのギャップ分析で、産業界のニーズに不足している項目、必要性が低くなった項目を明らかにしました。CDMEの高い品質が広く評価されている背景には、研修内容を最新事情に対応させることで、実践的で役に立つことが担保されているからです。

CDMEの研修は、ケーススタディ、ワークショップの演習、アイデア交換、ビデオ、小グループでのディスカッションを組み合わせた双方向性が高いセッション形式が特徴です。講師は、現役のDMO幹部が担当することがほとんど。講師は、研修中で自らが取り組んだ事例や、実際に体験している最新情報を提供することが推奨されます。
DMO幹部である講師から自身のDMOでの取り組みが説明され、その上で「さらに良くするには、どういった工夫ができるか」と問いかけ、受講生側からさまざまな意見がでます。このようなやり取りを通して、効果的な方法を理解していくのです。
ディスティネーションは多様であり、観光に関する変化が早い現状では、講師が100%の正解を提供することは不可能です。多様なテーマを講師と受講生との双方向性の高い研修が効果的です。日本でもDMO人材の育成の参考になるのではないでしょうか。

DMOコンサルタントの丸山芳子氏による、米国のDMO最大の業界団体である「ディスティネーション・インターナショナル(DI)」の、「サーティファイド・ディスティネーション・マネジメント・エグゼクティブズ(CDME)」という人材育成制度の記事です。