LGBTQファミリー旅行を取り込む攻略法は? OTAの戦略や受け入れの考え方を整理した【外電コラム】
(トラベルボイス 2020年7月13日)
https://www.travelvoice.jp/20200713-146521

「LGBT」に「Q」が加わり「LGBTQ」だという。レスビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)に、クイア(Queer)またはクエスチョニング(Questioning)が加わり、自分がLGBTに当てはまるか分からない人やLGBTに入らない人も含めた表現だという。
LGBTQの人は、フレンドリーに旅先で受け入れてもらえるかを心配している。そして「ブッキングドットコム」は、研修を受講したパートナー企業には、サイトに「プラウド認定バッジ」を掲載するという。
観光は、多様な方が訪れることを認識しなければならない。

【ポイント】
LGBTQの旅行に積極的なホスピタリティ関連企業やデスティネーションが、ここ数年で多くなった。
それでもまだ旅行のプランニングに、困難を感じているLGBTQがゼロとは言えない。

LGBTQとは、レスビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)にクイア(Queer)またはクエスチョニング(Questioning)の頭文字Qを加えた単語。
セクシュアルマイノリティ(性的少数者)を表すだけでなく、自分がLGBTのいずれに当てはまるかわからない人やLGBTに入らない人も含めた表現だ。

旅行先の地域で、自分たちは歓迎されるのだろうか? 危害を加えられる心配は? 現地の法律はどうなっているのか? また、家族旅行の同行者にLGBTQの人がいても、ファミリー客としてあたたかく迎えてくれるだろうか? に不安を感じているという。
「LGBTQの両親であっても、まず行き先と宿泊施設、現地で何をするかを考えるときには、子供たちの希望を最優先して決めていく」その後に「デスティネーションやホテル、現地体験は、我が家にフレンドリーか、歓迎してくれるだろうか」と考える。これはゲイでもレスビアンでも、子供を持つ同性愛カップルでも共通の傾向だ。「異性愛でシスジェンダー(自分の性別に違和感のない人)のカップルであっても、子供が少し変わっていて、自分の性別が男女どちらにも当てはまらないと感じていたり、性別に関する固定観念から自由になりたい場合にも当てはまる」という。

LGBTQファミリーは、友人や家族、LGBTQ専門の旅行ブログやインフルエンサーに頼ることが多くなる。デスティネーション側やサプライヤーでも、LGBTQの旅行者や家族連れへの歓迎姿勢をもっと明白にし、現地到着後も安心して過ごせることを示す必要がある。

LGBTQ向けの家族旅行ブログ「2人のパパと旅行カバン(2 Dads With Baggage)」を立ち上げたジョン・ベイリー氏によると、ここ数年で、旅行各社の受け入れ態勢はかなり進み、ターゲットマーケティングでLGBTQ市場にリーチするだけでなく、コミュニケーション一般において、同性の両親やLGBTQの家族を“普通”と位置付けるようになってきた。しかし、ジョージア州サヴァナでは、LGBTQの家族連れを歓迎しているかの情報は“ゼロ”。これに対し、ニューヨーク、ラスベガス、サンディエゴ観光局では、ウェブサイトに専用セクションを設けている。
「もし私が何か検索している時に検索広告が表示されたら、他の公民権やマイノリティ対応サイトよりも先に、まずそこにアクセスする」。そして関連情報を探すという。
「各地域や企業がお互い競争しながら、我々を誘致し、予約を獲得しようとしているのだから、安心できるサイトが見つかったら、情報が出ていないサイトではなく、そちらを選ぶに決まっている」。

2019年版「LGBTQツーリズムとホスピタリティ業界調査」では、LGBTQ旅行者が過去12カ月に取得した休暇の回数は平均3.1回。回答者の80%は、地元で暮らすLGBTQを大切にしないデスティネーションには行かないと答えている。
さらに回答者の69%は、LGBTQフレンドリーだと分かるホテルに滞在し、大多数はそのホテルや企業が、性的指向に関する差別撤廃を掲げていたり、スタッフ向けにLGBTQの多様性について学ぶ研修を実施しているかも重視している。

OTAの「ブッキングドットコム」がLGBTQ旅行者やファミリー客への対応に力を入れいる。
コネティカット州ノ―ウォークを拠点とする同社では、LGBTQの3人に一人が、ホテルのスタッフからどう見られているか心配していることが分かった。「世界全体で考えたら膨大な人数になり、ありのままの自分を見せることに躊躇していたということだ」。
宿泊関連のパートナー企業に、75分間のオンライン研修「プラウド・ホスピタリティ」を受講してもらい、「プラウド認定」を授与する。トレーニングが目指すゴールは、違う視点から物事を考えられるようにすること、そして即、実行できるテクニックや実用スキルを伝授することだ。
研修を修了したパートナー企業には、サイト掲載時、レインボーカラーのスーツケースをデザインした「プラウド認定バッジ」を付ける。研修は無料。
トラベル・プラウドのパイロット版は数週間以内に始まる予定で、アムステルダム、ベルリン、マンチェスターなどの宿泊事業者が参加する。

「自社のことを‘LGBTQフレンドリー’だと言うブランド企業は増えたが、TやQが何かも知らない。どうすればもっと歓迎していることになるのかなど、全く分かっていない」と話す。
「ホスピタリティ産業に従事している人のほとんどは、LGBTQがどんな人々か、彼らの旅行体験をより良いものにするために何が必要なのか、といった問題について、専門的な知識に触れたことがないと気が付いた」。
「当社の社員は一人残らず、オペレーション、営業、予約、マーケティングとあらゆる部署で研修を受けており、LGBTQの顧客に接するときは、どんなことに注意し、どのように敬意を示し、相手のニュアンスを読み取るべきかを学んだ」。
求められているのは「もっと注意深く、相手の話を聞くこと。すべては会話からだ」と話す。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。