民泊の社会的役割と課題について考えるシンポジウム開催、「観光立国と地域社会の創生に向けて」
(やまとごころ 2019.02.26)
https://www.yamatogokoro.jp/inboundnews/pickup/30538/

インバウンド観光を考える時、「民泊」や「オーバーツーリズム」の問題を避けて通ることはできない。
Airbnb責任者のレヘイン氏が「誰にも心地よい居場所を提供することが重要」と述べているが、旅行者の立場だけを考えてはいけない。地域住民や受け入れ施設側の声も取り入れて、相互理解のうえで観光は成立する。
日本の将来のためにも、関係団体が胸襟を開いて合意点を見つけていかなければならない。

【ポイント】
民泊の社会的役割と課題について考えるシンポジウム「観光立国と地域社会の創生に向けて」が行われた。

人と人との直接のつながりを育む場としての民泊

基調講演で田端観光庁長官が、「国内外の旅行者が安心して利用できる民泊の普及拡大」について話すと、第二部ではAirbnb責任者のクリストファー・レヘイン氏が、「誰にも心地よい居場所を提供することの重要性」を強調。世界中で毎秒6人のゲストがAirbnbの物件にチェックインしている現状で、デジタル時代でもコミュニティをベースにしたモデルは人と人の直接のつながりを育むと話した。

パネルディスカッション 民泊は多様化する訪日客のニーズに欠かせない存在

日本総研の高橋氏は、民泊は経済、地域、業界の活性化に欠かせないが、宿や地域が、多様化する訪日客のニーズへの対応ができていないことを指摘。受け入れ態勢の整備を課題として挙げた。
岐阜県高山市の國島市長は、年間460万人の観光客が訪れる中で、宿泊者は220万人でうち55万人が外国人、課題は宿泊者を増やすこととだが、民泊は少なく、ゲストハウスが増えており、今後は各層のニーズに合わせて、宿泊施設を提供していきたいとした。

日本の魅力を発信する場として期待される民泊

望月氏(日本商工会議所観光専門委員会学識委員)は、団体客から個人客への変化に伴い、個人客のニーズの把握が大切。その場所が観光客にとっていいところなのかを考えなくてはいけない。
日本は古来、旅人たちを胸襟を開いて迎える文化があり、それが地方にイノベーションを与えていた。今も、観光は大事なものだと理解し、人々を迎えるプラットフォームが必要。これからの最大のポイントは、やってきた観光客が地域に友人を作ること。いわゆるフレンズツーリズムとなると話した。

矢ケ崎氏(東洋大学国際観光学部国際観光学科教授)は、日本では国内旅行市場が圧倒的に大きかったため、宿泊施設が外国人仕様になっていない。宿泊施設は宿泊体験の多様化に対応すべきであり、地域の魅力を観光客に伝えるショーケースとなりうる。
暮らすように旅することを好むミレニアル世代にとって民泊は最適なツールであるし、それは食事制限のあるムスリムにも適していると述べた。

今回の副題に、「2020以降を踏まえた持続可能な観光の成長を考えるシンポジウム」とあったが、観光立国を目指す日本にはオリンピック・パラリンピックでは終わらない数々の課題があること、柔軟な対応と多様性の重要さを改めて感じさせられた。