観光庁の『インバウンド向け 体験型観光ガイド始めませんか?』にNPO理事の中西弘之さんの『airbnb体験ホストになろう』が取り上げられました!(実践ナビブック P98〜)
https://www.taikenguide.com/pdf/e-book_lite.pdf

Q:創業から現在に至る歩みについて教えてください。

もともと東京と大阪でサラリーマンをやっていました。1992年から建築系の会社に法人営業として16 年勤めました。会社を辞めないといけない理由は特になかったのですが、人生1回ですし、ずっと脱サラしたいと思っていたんです。ただ、中々勇気もなくて結局会社を辞めたのは39歳の時でした。

2008年1月、奈良でcafe WAKAKUSAをオープンします。飲食店をやるつもりは全くなかったし、やりたいと思ったことも一度もなかったんですが、たまたま現在の物件と出会い、脱サラしていきなりカフェを始めることになりました。今から考えたらとんでもないことです。物件も見比べてもないし、家賃の相場も知らない。何も知らないで勢いだけでやってしまいました。絶対やっちゃいけないパターンだと思います(笑)。

エアビーの体験をはじめたきかっけも偶然でした。2018年2月に奈良でエアビー体験セミナーが開催されました。セミナー会場がうちのカフェから徒歩2、3分の場所だったんです。エアビーについては聞いたことはあったけど、積極的にやろうとは思っていませんでした。たまたま予定が空いて、会場も近かったのでとりあえず申し込んだという感じです。セミナーに行くと、地元の色々な事業者さん、ホテルや飲食店などから20名ぐらいの方が参加していました。知っている顔も2、3人いました。このセミナーがきっかけで、エアビー体験を始めることになったのですが、この日参加した中で、実際に体験を始めたのは僕だけだったと思います。エアビー体験は、英語力が必要だったりするので、敷居が高いと思ったのかもしれませんね。

実は、エアビー体験を始める前に、カウチサーフィンという無料で海外からの旅行者を泊めるサービス2階に大きいソファーがあって、そこに旅行者を泊めていました。2013〜2014年の2年間で、200人ぐらい泊めましたね。毎晩、カフェのカウンターで、色々な国の人と酒盛りでした。そのおかげで、英語のコミュニケーション力が鍛えられました。今はそれが僕の武器になっています。

Q:提供しているツアーの種類についてお聞かせください。

オンラインを除くと、リアルな体験は、サイクリングや飲み歩きなど4種類ぐらいです。多い時はもうちょっと種類がありました。エアビー体験ツアーの審査で、何が通るかなと思って色々試したんです。エアビー体験の審査をクリアするためのコンサル的な仕事もしようと思っていたんです。エアビー体験の審査は体験が魅力的でないと通してもらえません。ホストがプロフェッショナル、エキスパートであるということが必須になります。「あなたじゃないといけない理由がない」ということで、通らなかったものもいくつかありました。ただ、僕がチャレンジした体験はほとんど通っています。

リアルな体験の中ではサイクリングツアーが圧倒的な人気ですね。サイクリングツアーのコースは、もともとは2人の娘を自転車の前と後ろに乗せて保育園へ行く時に通っていた川沿いの道です。徹底的に知り尽くしているルートです。自転車は、東京で働いていた時から大好きでした。江東区に住んでいましたが、銀座、渋谷、六本木、どこへ行くのも自転車でした。昔から人が通らない裏道とかで魅力的なルートを探るのが得意で、サイクリングコースを作る才能があると思っています。奈良のサイクリングコースも地元の人が通ったことないような道ばかりを行きます。人が歩いていない裏道から、いきなり人通りの多い観光地に出るから、みんなビックリします。
ツアーに参加されるお客様はアメリカ、オーストラリア、中国がトップ3です。中でもアメリカが圧倒的に多いですね。

Q:利用しているOTAについて

利用しているOTAは、エアビーだけです。エアビーのお客様とトリップアドバイザーのお客様を混ぜるのはダメですし、予約の管理も難しくなりますよね。
エアビーって、ホストとゲストの関係が入れ替わることがあるんです。僕のサイクリングツアーに参加したお客様も自国でホストしているって方が多かったです。もし違う国へ行ったら、僕も体験を予約するだろうし、民泊に泊まります。その時は僕がゲストになります。エアビーは、ゲストとホストの主従がはっきりしていなくて、より対等な感じなんです。そこがエアビーの文化の良いところだと思うんです。僕は、ゲストにレビューを書いてもらえるように頼んだことは一度もありませんが、エアビーのゲストは、みんな自然に書いてくれるんですよ。

Q:体験コンテンツはどのように開発していますか。

売れるかどうかはやってみないと分かりません。 だからまずは、やりたいこと、例えば自分が住んでいるところに何があるかとか、自分の得意なことは何なのかなどからスタートします。エアビーに体験を掲載する場合、どうして自分でなければダメなのかという点が明確になっていないと審査に通りません。「なぜあなたがこの体験に相応しいのですか」 と問われます。それは資格を持っていますとか、3 歳から書道をやってますといった能力の場合もありますが、それだけとは限りません。以前、新大阪でエアビー体験をやりたいですと相談してきた女性がいました。最初、彼女に何が出来るかって考えたとき、すぐには何も出てこなかったのですが、一つだけあったのが、生まれてからずっと新大阪に住んでいるということでした。それじゃあ、新大阪の駅のツアーやったらいいんじゃないかということになったんです。新幹線を見せたり、駅の構内で食べ歩きをしたり、ショッピングをしたり、新大阪の駅を楽しむというツアーにしました。写真を撮って文章を 書いて体験を申請したら、見事エアビー体験の審査に通りました。彼女は新大阪駅の構内で働いていた経験もあったので絶対に通ると思っていました。

Q:価格設定についてはどのようにお考えですか。

最初サイクリングツアーは2,800円から始めて、今は7,300円でやっています。ちょっとビビリながら小刻みに値上げしていきました(笑)。タイとかパリとか東京とか、世界各国のサイクリングツアーの値段を見たら4,500円とか5,000円とか、相場がそんなものだったので、あんまり自分のところだけ高くてもいけないかなと思って価格を決めました。

Q:プロモーションはどのように行っていますか。

エアビーの体験に掲載されている時点である程度マーケティングやプロモーションは出来ていると思います。その辺りがしっかりしていないとエアビーの審査に通りません。
ホームページに関しては自分で作っています。 ワードプレスを初期のころから使っているので、技術力も上がってきています。今ではお金取って出来るぐらいのレベルになっていると思います。僕はコーディングなど一切できませんが、今は技術が進歩して、ホームページ制作もすごく簡単になっています。

Q:競合事業者との差別化はどのように行っていますか。

当初、調べた時には奈良でサイクリングツアーを提供している人は僕以外にいなかったです。今はいくつかあるようですが、誰か登録しているなってくらいで、あまり競合は意識していないです。

Q:リピーター獲得のために 行っていることはありますか?
アメリカからだったかな、一度目は彼氏と来て、二回目は家族と来てくれた方がいました。あと、リピーターではないですが、オーストラリアの20代の女性が、めっちゃ僕のツアーを宣伝してくれました。彼女とはフェイスブックで友達になっているのですが、彼女が奈良に行ったら絶対に僕のツアーを予約しろといろんな人に言ってくれているんです。 家族や親戚、友達など合計5、6組は紹介してくれましたね。そのたびにフェイスブックで、また紹介してくれてありがとうと返信しています。彼女だけじゃなくて友達に紹介してくれる人は結構いらっしゃって、めっちゃありがたいです。

Q:安全対策や危機管理についてお聞かせください。

過去に一回だけ事故がありました。細い川沿いの桜並木道の途中に踏切があります。そこは車が通れないので、ガードレールがありません。それまで 1,500人以上連れて行って、一度も事故はありませんでした。事故を起こしたのはアメリカから来た20代の男性でしたが、走っている途中パッと後ろを見た瞬間、猛スピードで崖を下っていくのが見えたんです。すぐに自転車を止めて、走って行ったら、水が流れていない側溝に落ちていました。まずは携帯電話で救急車を呼びました。「大丈夫か」と声をかけたら、意識もしっかりしていて「アイムソーリー」 と答えました。幸いにも1時間後には歩いて帰れるというくらいの軽傷でした。

エアビー体験は最大1億円までの保険が出るので、治療費も保険でカバーできました。彼に代わって、病院の領収書や現場の写真などを揃えて保険の申請をしました。時間はかかりましたが、手続きはスムーズに出来ました。エアビーは説明会の時に保険が出ますと聞いていたので、その点については安心して始められました。エアビーの支社が東京にあって、僕が仲良くしてもらっている担当の方の携帯番号も知っていたので、事故の時もすぐにホットラインに電話をかけました。その点はとても安心です。

Q:ガイドさんについてお聞かせください。

自分のツアーを誰かと一緒にやろうとか、人数を増やそうとか、そういう考えはないです。僕と同じようにサイクリングツアーの案内が出来る人はなかなかいないと思います。自転車がよほど好きじゃないと継続が出来ないですし、1日2回も3回も情熱をもって同じクオリティでツアーをやるのはとても難しいことなんです。ただ、人を育てたいという思いはあります。今、取り組んでいるオンライン体験で、女性ホストを1人登録させるお手伝いをしました。まだ予約は入っていませんが、かなり難易度の高いエアビー審査を通りました。 

Q:ガイドに必要なこととはなんでしょう?

色々なガイドがいていいと思います。僕はどっちかというとプロガイドというより、アマチュアっぽくやっています。以前、ツアーに参加した方のレビューで、「もっと奈良の歴史とか知りたかった」 と、2点とか3点の低評価をつけられた方がいらっしゃいました。東大寺は何年に出来てとか、基本的な説明はしています。でも、僕はそんなに歴史は好きじゃないし、歴史を説明するツアーじゃなくて、サイクリングだよと言っています。でも、それはしょうがない。合わない人はいるので、ある程度は割り切るようにしています。

やっぱり、好きなことでないと継続ができません。例えば、サイクリングが嫌いな人がサイクリングガイドをしたり、料理嫌いな人が料理を教えるとか、絶対無理があります。興味のなさが顔や表情に出てしまいます。ガイドは短期的な仕事ではありません。継続するからこそスキルもどんどん上がってきます。やっぱり好きなことを好きな人がやるべきかなと思っています。その上で、観光客だけでは見つけられないもの、体験できないものを見せてあげ るのがガイドの価値だと思っています。

Q:オンライン体験について お聞かせください。

エアビーのオンライン体験で折り鶴体験を提供しています。始めたのは昨年の6月からです。最初は、そんなもの誰が予約するんだろうと自分でも思っていましたが、予想外に好評で、現時点でオンライン折り鶴体験のレビュー数は67件、全ての評価が最高の5点なので、大変ありがたいです。

団体客が増えて来たのも大きいです。海外の有名大学や企業など、チームで予約していただけることが増えました。国別ではイギリスやアメリカからの予約が圧倒的に多いです。長期化したコロナ禍によってオンライン体験を使ったチームビルディングなど新たなニーズが出て来ています。会社に行かないのでチームメンバーとも会えず、Zoom会議にも飽きてきたので、折り紙なんか面白いんじゃないみたいな感じでしょうか。

インドのご家族に、お父さんのお誕生日パーティ としてご利用いただいたこともあります。インドの 北部にお父さんとお母さんがいらっしゃって、息子 さんたちは海外に散らばっていて、ファミリー全員 でお父さんの70歳のお祝いをするために折り鶴体験を利用してくれたんです。

Q:今後の課題・展望についてお聞かせください。

現在、アマゾン(Amazon)のバーチャル旅行体験ができる新サービス「アマゾン・エクスプローラー」でツアーを提供する準備をしています。登録する体験はショッピングでもショッピングを伴わないものでも、どちらでも構いません。既に登録は終わっていて、まずは身近な奈良公園、東大寺ツアーから始め、その後インバウンド消費が無くなって厳しい状況の大阪の道具屋筋、日本橋のアニメグッズなどのショッピングツアーに広げていこうと思っています。既に幾つかの土産物店、キッチン用品店、 包丁屋、アニメ専門店などとお話をしています。皆さん口を揃えて『是非ともアマゾン・エクスプローラーの買い物で寄ってください』と切実におっしゃいます。「アマゾン・エクスプローラー」は当初はアメリカ人向けだけのサービスですが、ゆくゆくは世界中に広がると思います。日本には自信をもって売れる伝統的な商品がたくさんあります。「アマゾン・エクスプローラー」は、そういう商品を海外に売って、外貨を稼ぐチャンスをもたらします。これはクールジャパンをバーチャルでショッピング出来るという点で面白いと思いますし、僕が絶対に面白くさせます。少しでも興味のある方は私個人でも所属するNPO宛でも気軽にご連絡ください。

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