奈良県観光戦略本部 〜今後のインバウンド戦略について〜(講演概要①)
奈良県観光局 局長 竹田博康さん
(観光のひろば 2024年11月22日)

【ホッシーのつぶやき】
竹田さんの講演は気迫を感じました。都道府県の観光トップでここまでの発言は聞いたことがありません。恐れることなく観光で攻める! そして奈良の観光をホンモノにしていく気迫です。
ポイントは「観光とまちづくりをセット」でやるべきだです。そして人口が増加している時に作られた法律に縛られるのでなく、人口減少時代にあったまちづくりを考え、観光に結びつけるという考え方です。これからの奈良がどう変わるのかがよく理解できる講演でした。

【 内 容 】
土木職の竹田さんですが、2010年の「平城遷都1300年祭」を契機に、2011年、奈良公園のハード、ソフト両面から観光のワンストップ窓口“奈良公園室”が必要とのことから、初代の奈良公園室長補佐、同室長を経て、現在、観光局長になられておられます。SNSで奈良のことをFacebook、Instagram、Xで、1200日連続投稿されておられる強者です。

竹田さんは、観光とまちづくりをセットでやるべきだという考え方で、今までの観光はプロモーションやイベントをしていれば良いと思われている節があったので、地域づくりから観光へという考えのもと“観光地域づくり”という考え方で取り組まれています。

自論ですがと講演を始められました。日本の人口は2000年を境に減少に転じましたが、都市計画法などの法律、昭和40年頃に作られた法律は“百年の計”を考えてつくられたものが多く、人口増加に合わせた計画が多いですが、人口減少時代を迎えている今、「法律のあり方も変わらないといけない」ので、現行の法律にとらわれているのではなく、実情をよくみて考えて仕事をしなければならないと考えます。これまでやってきたことが正しいと思うのではなく、どうすればできるのかと自問自答や疑問をもちながら、実情に合わせて業務に取り組むことが大事であると部下に伝えて指導しています。

京都と奈良の差は国土軸の問題が大きいととらえています。リニア新幹線が開通すると世の中が変わるのではないかという期待があります。国土軸が大きく変わるリニア新幹線が開通する15〜20年後にどの様な奈良をつくるのか、奈良の地域づくりをどう進めるのかを考えるのが大事です。
インバウンドが押し寄せてくる時代なので、小さい組織でものごとを考えるのではなく、もっと広域のDMOなどの組織で考える必要があります。

奈良県は1300年の歴史を持つ古都です。そして県土の3割が大和平野で、人口の9割が住んでいます。奈良県の強みは世界遺産認定数が全国1位、国宝・重要文化財は全国3位とポテンシャルがあることですが、観光客は奈良の1300年来のキラーコンテンツである大仏さまや奈良のシカに集中し、来訪者は多いものの“奈良に泊まらない”“あまりお金を使わない”“深く奈良を知らない”が弱みで、「安い」「浅い」「狭い」という状態に陥っているのが現状です。訪日外客数は2019年に350万人で全国5位ですが、観光消費額は6,606円で29位でした。観光消費額と客室数は相関しており宿泊客を獲得する必要があるので、高付加価値の宿泊施設の誘致には今後も取り組む必要があり、改善ポイントは「訪れたくなる地域の魅力の磨き上げ」「快適に過ごす受入環境の整備」「おもてなしができる人材育成」であると考えます。