回復期を見据え、タビナカ企業の買収が活発化、 成功するスタートアップの共通点を分析した【外電】
(トラベルボイス 2021年6月1日)
https://www.travelvoice.jp/20210611-148847

【ホッシーのつぶやき】
タビナカ企業の買収も、アフターコロナ に向けた活動が盛んになっているようです。
サスティナブルツーリズムへの関心が高まっていますが、サスティナブルツーリズムも本物体験が肝になってきます。
ウォーキングツアーやサイクリングツアーも、「何故、ここを訪れるのか」のストーリーを語る必要があり、ガイドの力量が求めらます。

【 内 容 】
現地体験&ツアー会社の買収が続いている。旅行市場が逆境下にあるなかでも、この分野への注目度は、予想以上のようだ。

米ホーンブロワー・グループは、ウォーキングツアーを催行するウォークス社のほか、複数の現地体験ブランドを買収。一方、リンドブラッド・エクスペディションズ(Lindblad Expeditions)は、自転車ツアーのデュヴァイン・サイクリング&アドベンチャー(DuVine Cycling & Adventure)の最大株主になった。ゲットユアガイドはガイドツアーズを傘下に収めた。

いずれの買収劇も、規模的には小さいが、象徴的なできごとだと言える。細かく業態が分かれている現地体験&ツアー分野でも、販売手法などビジネスのやり方をアップデートする動きが再び本格化している。

スキフト・リサーチによると、ベンチャーキャピタルによる旅行分野への投資はすっかり冷え込み、2020年は前年比55%減の41億ドル(約4510億円)、過去10年間で最低レベルだ。

パンデミック前夜までの数年間は、旅行関連の中でも、特に現地体験&ツアーは投資先として大人気だった。この分野には10億ドル(1100億円)以上の資金が入り、eコマースやオペレーション用ソフトウェア開発が進んだ。これに比べると、最近のディールは控えめだが、新しいうねりの兆候とも言える。

コロナ危機が落ち着けば、リアルな体験を求める旅行需要は急増し、モバイルからの予約も増えるだろう。とはいえ、しばらく休眠状態にあり、体力が低下しているサプライヤーがこのチャンスを捉えるためには、ある程度の規模と資金力が必要という訳だ。

では、どのようなスタートアップが買収先として選ばれているのだろうか。ウォークスとデュヴァイン・サイクリング&アドベンチャーの2社の事例を見てみよう。

過去のインタビューにおける両社CEOのコメントの類似点は、顧客にフォーカスし、商品を改良していくことがビジネス成長につながるという見方だ。だが言うは易く、行うは難し、だ。

ウォークスの共同創業者、ステファン・オドー氏は「投資家からは、なぜもっとスケールメリットが出せないのか、細分化されたままなのかと聞かれる。だがこの分野では、旅行者一人一人の期待ポイントが本当にバラバラ。応えようとすればするほど、業務がどんどん複雑になる。だが期待に応えられるかが成功のカギ」と指摘する。

パンデミック以前の実績を評価
ウォークスを2021年4月に買収したホーンブロワーは、米アルカトラズ島や自由の女神像までのフェリー・ツアー催行会社として知られるが、同1月のショアトリップス&クルーズ・エクスカ―ジョンズ買収を機に、世界各地で取扱いツアーを拡大する方針を打ち出した。

パンデミック前、ウォークスのビジネスは好調で、欧米など14都市で100種類のツアーを催行、2019年の取扱人数は50万人。こうした実績が、買収先として注目されるきっかけだった。だが2020年2月末、両社がニューヨークで初会合を予定していた週に、米国内では新型コロナウイルス感染による初の死者が出て、結局、実現しなかった。

秋に交渉再開した時、ウォークスの状況はずっと厳しくなっていた。105人ほどいた社員の9割を解雇せざるをえなくなり、待機中のガイド700人についても十分な仕事はない。動画を使ったバーチャルツアーも焼け石に水だった。

ただ、同社ブランドには、これまでに築いてきた消費者からの認知度や信頼があった。平穏な時期であれば、十分に利益が出せる事業ノウハウやプロダクト改革に精通しており、幅広い分野に応用できるテクノロジーもあった。

また、これまで投資マネーに頼って拡大路線に走ることなく、利益を再投資して地道にウォークスを育ててきたため、非現実的なリターン目標がなかったのも幸いだった。

景気変動もしなやかに駆け抜ける自転車ツアー
一方、リンドブラッド・エクスペディションズは2021年3月、デュヴァイン・サイクリング&アドベンチャーの最大株主となった。リンドブラッドは過去数十年間、海での小型船ツアーに特化してきたが、地上でのアドベンチャー・ツアーは、既存ビジネスとの補完関係があり、潜在需要も大きいと考えた。これに前後して、北米の国立公園での体験ツアーを催行しているOff the Beaten Path社も買収している。

リンドブラッドがデュヴァインの自転車ツアーに目をつけたのもパンデミック以前だ。利益はもちろんだが、ハイエンドな顧客層にフォーカスしており、今後の成長が見込める点も魅力だった。

同社のスヴェン・オロフ・リンドブラッドCEOは「自転車ツアーそのものが成長分野。電動自転車を使えば、さらに参加者層も広がる」と話す。パンデミックすらも追い風だ。自粛生活の中で大人のユーザーが増加し、自転車の売上は記録更新の勢いだ。サイクリングツアーへの関心も高く、デュヴァインでは今年4月の予約数が1996年の創業以来、過去最高となった。

同CEOは「特定の分野に深く深くフォーカスして起業する会社が好きだ。なんでも揃えることに、それほどのメリットはない」と話す。

※ドル円換算は1ドル109円でトラベルボイス編集部が算出

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。英語記事が公開された2021年5月17日時点に基づいた内容となります。