越境ECで何か売れた?インバウンド需要がECに移行した「越境EC世界ヒットランキング2020」
(ネットショップ担当者フォーラム 2020年11月16日)
https://netshop.impress.co.jp/node/8207

【ポイント】
新型コロナの影響により、訪日して直接商品に触れられない反動の「日本ロス消費」で、インバウンド需要が越境ECに移行しているという。
2020年はアニメやゲームなどのコンテンツを通じて世界のファンがつながり、2021年は5Gによる動画配信で加速し、コミュニティ内の熱狂が消費を動かすとも予測し、越境ECは中国だけではなく世界に広がっている。次に“沸点”が来るのはASEANともいう。
「越境EC世界ヒットランキング2020」では、「おもちゃ・ゲーム」が4エリアで売り上げ1位となり、伸び率は、ステイホーム需要から「音楽」「ゲーム」が高い。

【 内 要 】
BEENOSが11月10日に発表した「BEENOS 越境EC世界ヒットランキング2020」

日本から海外の消費傾向は「日本ロス消費」
日本から海外への商品販売ランキングは、BEENOSが運営する商品代理購入サービス「Buyee」の売り上げデータを元に算出。集計期間は2020年1月1日~9月30日まで。伸び率は前年同期と比較している。「東アジア」「東南アジア」「南アジア」「アメリカ」「ヨーロッパ」の5つのエリアにわけ、それぞれの売り上げ、伸長率をランキングにした。

「おもちゃ・ゲーム」が4エリアで売り上げ1位。ファッションなどのライフスタイル消費も人気だった。

前年同時期と比べて伸び率の高い商品は「音楽」「ゲーム」。コロナの影響を受けた「ステイホーム需要」が要因だという。

エリアごとに消費傾向に違いがあり、東南アジアではK-POP商品が伸長。韓国コンテンツの人気が高いことに加え、日本限定特典・商品のニーズが高まったことが要因だという。アメリカではコミック、アニメ、特撮系グッズがヒット。ヨーロッパは昔のゲーム機が伸長し、盆栽用具や浮世絵、武具などの人気が高い傾向があるという。

「Buyee」の会員数は約250万人で、日本のコンテンツが好きなユーザーが多いという。人気ジャンルはアニメなどのグッズや日本国内ファッションブランド、日本作家の陶磁器などの「Japanコンテンツ」やカメラ用品、カーパーツ、日本限定商品や日本のお酒など。

インバウンド需要がECに移行
2020年の消費傾向について、本間哲平氏(グローバルマーケティング From Jpana担当)は次のように分析した。
2020年、日本から海外への消費傾向は「日本ロス消費」。新型コロナウイルスの影響により、インバウンド需要がECに移行した傾向がある。日本に来て直接商品に触れられない反動や、巣ごもり需要や動画配信サービスの普及などにより日本のコンテンツに触れる機会が増えたことが後押ししているのではないだろうか。(本間氏)
また、2021年の消費傾向については「熱狂コミュニティ消費」になると本間氏は予測する。「2020年はアニメやゲーム、K-POPなどのコンテンツを通じて、ボーダレスに世界のファンがつながった。2021年は5Gによる動画配信などでさらにその流れが加速し、コミュニティ内の熱狂が消費を動かすのではないか」(本間氏)

海外から日本のキーワードは「超 趣味活 消費」
海外から日本への商品販売ランキングは、BEENOSが運営する海外ショッピングサイト「セカイモン」の売り上げデータを元に算出。集計期間は2020年1月1日~9月30日まで。伸び率は前年同期と比較している。「アメリカ」「ドイツ」「イギリス」「カナダ」の4つのエリアにわけ、それぞれの売り上げ、伸長率をランキングにした。
「セカイモン」のメインユーザーは30~40代で可処分所得の高く、多趣味でコレクターな男性。日本で入手できないカーパーツやアウトドアグッズなどが元々人気が高いという。ランキングは、売れている商品、伸びた商品ともに「おうち時間」需要の影響を受けた結果になった。

趣味を極める消費が活発化
従来から人気の高いカーパーツなどに加え、「おうち時間」が増えたことにより、趣味を極める消費が活発化。密を避けるアウトドアや釣り、自転車アイテムなどが売れた。

DVDなど「おうち時間」を過ごすための商品が伸びた。また、家の中で過ごす時間が増えたことから、食器やペット用品など生活を彩る商品も伸びたという。

2020年諦めた趣味を再開させる「待望消費」
2021年の消費について、海老澤佑太(マネージャー グローバルマーケティング To Japan担当)は次のように分析した。
新型コロナの影響で、旅行や映画、スポーツなどにおいて2020年は制限の多い年になった。2021年は延期になった映画の公開など明るい話題が出てきたことから、海外限定の映画グッズなどに期待している。
また、キャンプやスポーツ用品など、2020年諦めてしまった趣味を再開させたい思いが消費に表れると予想している。(海老澤氏)

「越境EC=中国」ではもったいない
世界の越境EC市場について、直井聖太氏(代表取締役社長兼グループCEO)は「コロナの影響でインバウンドが激減する一方、越境ECは年々増加している」と説明。「Buyee」の流通総額も前年比48.7%増加しており、過去最高を記録したという。

訪日外国人観光客が減少している一方で越境ECの流通額が増えていることから、直井氏は「日本商品への需要は顕在化しており、まだまだ伸びしろがある。しかし、日本は越境ECへの対応が遅れている。コロナで売り上げが低迷している事業者でも、越境ECに活路を見い出せれば、商品を販売するチャンスは十分にある。新規顧客の獲得にもつながる」と分析する。
「東アジア以外のASEANやアメリカ、ヨーロッパの伸び率が高い」と直井氏が語るように、「Buyee」のUUはASEANが2.1倍、アメリカ、ヨーロッパでは2.8倍に増加した。

また、国や地域によって売れている商品や消費者の年代層も異なるという。たとえばアメリカでは巣ごもり消費により日本のアニメなどに触れる機会が増えたことにより、おもちゃやその関連商品が伸びているという。「クールジャパン」によりアニメなどに興味のある20代のユーザーが多い。

越境ECというと中国を連想する人が多いと思うが、これから“沸点”が来るのはASEAN。中国市場だけを見ていてはチャンスを逃してしまう。国ごとのユーザーやニーズの違いを捉える必要がある。(直井氏)