統合型リゾートの導入効果を見てみたい。
観光客は、シンガポールでは2009年の968万人に対して2011年に1317万人と増加し、マカオでは2002年の1153万人に対して2011年は2800万人と大幅に増加している。
外国人観光客一人当たり旅行消費額も、シンガポールでは2009年の1302S$に対して2011年に1686 S$と増加し、マカオでは2002年の182 $に対して2011年は203 $に増加している。
雇用は、シンガポールに2つの統合型リゾートが開設されたことにより約2万2千人の直接雇用を創出しており、マカオでは、統合型リゾート開業前後の8年間で失業率が約3.8%低下しているという。
カジノ税収は、米ネバダ州でカジノ税率3.50〜6.75%で2011年に約8.65億$の収入があり、カジノ税収(一部目的税)を活用して、道路、小中学校、医療施設が整備されている。
マカオのカジノ税率は35.0%で、2010年に約83.69億$の収入があり、中学生以下の教育費を無料にしておられる。

カジノを含む統合型リゾートを導入するにあたり問題が無いわけではない。
先日のシンポジウムで大阪商業大学の谷岡学長の話によると、「ギャンブル依存症」は避けられないという。ギャンブルに熱中するあまり、経済破綻や家庭崩壊を招くのだ。これらギャンブル依存症への各国の対応は、①カジノ施設内にATM設置や金銭貸与の禁止、②ギャンブル依存症相談員の育成等、カウンセリング・治療体制や関係機関の協力体制、③カジノ収益等の一部を用いた依存症回復施設、治療施設の整備、④本人や家族の申し立てに基づく、ギャンブル依存症患者をカジノから排除するプログラム、⑤未成年のカジノ施設への入場禁止や本人確認の厳格化などがある。
シンガポールでは、自国民の入場には収入基準等の厳しいチェックがあるといい、⑤の本人確認と入場禁止措置を徹底しているようだ。また、④のように顔認証システムの導入により、ギャンブル依存症患者などを排除するシステムも大いに効果があるという。

暴力団など組織悪が介入することも懸念されているが、この懸念は少ないと言われた。暴力団などはヤミ賭博があるから資金源になるが、カジノが認められ厳格に運用されれば、ヤミ賭博の旨味はなくなる。禁酒法時代にギャングが暗躍したのと同じだという。

周辺環境に悪い環境が発生するとの懸念もある。これについては、カジノ施設と教育施設や住居環境と十分な距離をとり、入場制限等の対応が行われているようだ。台湾のように離島限定という方法もある。

今年の秋の国会で審議される可能性が高いという。
経済効果は大きいが、議論を急いでほしくない。国民的議論を踏まえたうえで、絶対多数の賛成の背景のもとに導入されることを希望したい。