コロナ危機後に航空・旅行ビジネスに起きる8つの変化とは? グーグルの方向転換から戻らない需要まで、航空コンサル会社が予測
(トラベルボイス 2020年5月28日)
https://www.travelvoice.jp/20200511-146116

旅行業界の供給規模は全体的に縮小し、需要は近場からとなる。消費者は旅行代金の値下げを期待し、公的助成などによる需要喚起から始まるようだ。
テレワークで仕事をする人が増え、少人数ミーティングはテレワークに切り替わり、ビジネス需要は長期的には5~10%減すると予測する。
グーグルは、オンライン教育や公衆衛生の分野で成長しており、旅行業界への進出は遠のくという。
旅行業界も大きく様変わりしそうだ。

【ポイント】
米国の航空コンサルティング会社アイディアワークス社が、コロナ危機後の旅行ビジネスに起きる8つの変化をまとめた。

  1. 供給、在庫は減少傾向へ
    IATA(国際航空運送協会)では、2020年の航空旅客数の予測で下方修正を続けている。同様に、ホテル、バケーションレンタル、レンタカー、観光ツアーも厳しい状況にあり、コロナ危機が収束するまで存続できない事業者も出てくる。
    結果として、旅行業界の供給規模は全体的に縮小する。大規模な公的支援がない限り縮小は避けられない。
    危機後、消費者はまず割安価格のものから手を出すと予想され、サプライヤー各社は供給数を絞り、雇用機会も不安定な状態が続く。
  2. しばらくは自宅から近い場所でのレジャーが主流に
    SARSでは、WHOのパンデミック宣言から事態が回復に向かうまで3~4カ月。今回のコロナ危機にあてはめると6~7月までかかる見込み。
    北半球では、今夏のホリデー需要にぎりぎり間に合うと期待する事業者があるかもしれない。
    9.11テロ事件後の米国では、旅行需要が完全回復するまでには2~3年かかった。
    需要回復は「自宅から近い方が安心」というムードが残る。
    米国では、米国内の国立公園に出かける人が増加する一方、都市部で人が大勢集まって楽しむような催しは警戒される。旅行においては「田舎、アウトドア」で健康的な過ごし方を楽しむ気運が高まる。
  3. 健康面での安全が重要なファクター
    危機が去った後も、飛行機の座席のトレイテーブル、ホテル客室内のリモコン、車のステアリングホイールなどに触れることに慎重になる。
    公衆衛生への配慮はマストになる。航空機も機内環境の衛生に注意が向けられ「清掃が不十分だった」ことを理由に、出発を遅らせるフライトもあり得るだろう。
  4. 消費者側に根強い値下げへの期待
    誰もが倹約志向に転じるなか、値下げによる需要喚起があちこちで始まる。
    景気後退の局面では、必ず値下げになるという消費者側の期待も大きい。こうした状況下では、消費者に対して各種サービスの手数料を値上げするのは好ましくない。
    宿泊ビジネス各社は、宿泊費とは別に徴収する「リゾートフィー」を見直すべきだ。
  5. 公的支援をうけた企業が背負う責任
    今回、航空会社は大打撃を受けた業界として、政府による支援対象となっている。こうしたサポートにより、航空産業が完全に崩壊する事態を免れることができるだろう。
    航空会社側は、支援への感謝を忘れないこと、また他業界や消費者からの視線を意識することが肝要だ。当面は、役員報酬の話題は大きな怒りにさらされる。航空需要が回復した後も、公平な利益配分を十分に考慮する必要がある。
  6. 変更手数料に対する厳しい視線
    世界中の航空会社が手数料なしでの変更や、現金またはトラベルクレジットでの払い戻しを行っており、ホテルやレンタカーでも同様の動きが広がっている。だが先行き不透明な状況は今後も続くだろう。
    財政難を理由に、事業者が再び手数料を徴収するようになることは、消費者は歓迎せず、政府当局や政治家の視線も気になるところだ。
    ウィズ・エアー(Wizz Air)では、利用者がクレジットカードやデビットカード口座への払い戻しではなく、トラベルクレジット形式での払い戻しを選んだ場合、金額の120%を提供しており、消費者に歓迎されている上、航空会社側はキャッシュを減らすリスクを軽減できる。
  7. ビジネス渡航需要の一部は永遠に戻らない
    自宅からオンラインで仕事をしている人が増えている。
    相手に会って仕事を進められる環境が戻ることを切望するのはもちろんだが、Zoomなどのコミュニケーションを経験するよい機会にもなった。
    多くの人がリモート会議に慣れることで、業務渡航マーケットに変化が起きる。
    スピリット航空は、長期的には5~10%減。特に3~4人での短いミーティングはオンライン開催に切り替わる。一方、顧客へのセールスコールや工場視察は、従来通り現地訪問が必要だと予測している。
  8. グーグルの関心は別の業種へ
    ここ数年、旅行業界はグーグルの進出加速を懸念してきた。
    学校では、リモート授業のためにグーグルのミーティングの「ハングアウト・ミート」を採用するようになった。保健当局は、パンデミック対策で重要な人々の移動状況を把握するため、モバイル位置情報を使ったデータの収集やトラッキングに乗り出している。
    グーグルは、オンライン教育や公衆衛生の分野で大きな投資が期待できる。対照的に、旅行マーケットはすっかり縮小している。