【海外メディアななめ読み】コロナ禍で急速に進む自転車ブーム、専用レーン化を進めるパリが描く構想
(やまとごころ 2021年6月7日)
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【ホッシーのつぶやき】
ニューヨーク市で、歩道などにテーブルを設置する許可が下り、昨シーズンの冬「こたつが冬のニューヨークレストランで活躍」したといいます。そう言えば、我が家にホームスティしていた留学生も「こたつ」を土産に持って帰りました。「こたつ」も世界に広がるのかもしれません。
ロンドン、ニューヨーク、パリ、ミラノと「自転車レーン」が広がっているようです。パリ市ではパンデミック中に、数百kmもの自転車専用レーンができた」というのですら凄い! 東京都も2040年代までに約1800kmを目標にするようです。
でも、自転車が我が物顔に走る姿を想像すると… 不安になってしまいます。いかんいかん、事故が起こらないように計画すれば良い。これも新しい時代への転換の姿ですね。

【 内 容 】
世界の大都市で今、道路の使われ方が変化しています。
ニューヨーク市では、密を避けながらレストランでの食事を楽しむことができるよう、2020年6月、歩道や駐車スペース、裏庭などにテーブルを設置する許可が下りました。今年1月の当コラム「こたつが冬のニューヨークレストランで活躍」でも「ニューヨークのレストランの屋外席は、コロナによってもたらされ、今後、文化として定着して行くであろう」と紹介しました。

自転車レーンがみるみる増えていく欧米の都市
多くの都市で始まっている更に大きな波が、自転車専用レーンの整備です。WHOが2020年4月21日「移動に関する新しいガイドライン」で、「可能であれば、自転車か徒歩移動を」との指示を出し、アメリカと、ヨーロッパの多くの都市が反応しました。『ロンドン、ニューヨーク、パリそしてミラノが、自転車と歩行者の為に道路を譲った』という同年5月のデザイン誌の記事では、ロンドンでは、暫定的だった自転車レーンが市の主な通路として定着し、路上駐車場と車道が歩道へと移行して行く予定であること、ニューヨークでは、市内の車道約65kmが5月中に歩行者と自転車専用にとって代わること、パリでは最も有名なショッピング通りが車両通行禁止となったこと、ミラノでは夏の間約35kmが暫定自転車レーンとなること、いくつかの通りで制限速度が時速30kmに引き下げられることなどが紹介されています。

ロックダウン明けには、目抜き通りが自転車専用レーンに!
その中でも2020年5月11日に一度目のロックダウンが解除されたパリでは、自動車から自転車への移行がフルスピードで進んでいます。約2ヶ月に及ぶ一度目のロックダウンで街に人がいなかった時期と、公共交通機関利用を避けたい市民が自転車に目を向け始めた風潮を捉え、市内の道路が着々と自転車レーンに移行しているのです。今年5月14日のBBCの記事よると「パリ市ではパンデミック中に、数百kmもの自転車専用レーンができた」といいます。その中で最も印象的で象徴的なのは、コンコルド広場からルーヴル美術館の北側を通るパリの目抜き通りである全長約3キロのリヴォリ通りが、自転車専用となったことです。バスやタクシーそして緊急車両などを除く車の通行が禁止され、その代わりに自転車レーンが大幅に拡張されました。さらに、主要なメトロの路線に沿って自転車レーンが整備され、マスクをつけメトロで会社に行くのが耐えられないパリ市民の多くが自転車通勤を選んでいるようです。加えて、パリと周辺都市を結ぶ自転車ネットワークとして、郊外線鉄道網(RER)に沿った総距離約650㎞の自転車道「RER-V」の計画も始動しています。

車を使わずどこへでも15分で行ける街、現市長が描く未来のパリ
これには、2014年にパリ市長に就任し2020年7月に再選されたアンヌ・イダルゴ氏が、以前から自転車の普及に取り組んでおり、パンデミックを追い風に計画の実現が急速に進んだという背景があります。2016年に5月に始まった車のない街を目指す計画のプロジェクト名は「Paris Respire (パリが呼吸する)」で、空気のきれいなパリを目指し、日曜祝日は市内各地の道路が歩行者天国となりました。2017年にはヴェリブ(Vélib)という公共のシェア自転車が導入され、市民が安価で自転車を利用できるようにもなりました。同時に、自転車専用レーンの整備にも積極的に取り組んできたイダルゴ氏がいたからこそ、今回の新型ウィルスの蔓延による密を避ける動きに素早く反応し大胆な変化が実現したのです。
同氏は「15分シティ」構想の実現を選挙公約に掲げています。この構想は「パリを、誰もが車を使わず職場にも子供の学校にも、15分で行ける町にする」というもので、「車」に占領された街の主役を「人」へと戻そうという取り組みです。
フランス政府が自転車利用者連盟と協力して、自転車の修理に最大50ユーロを補助し、長い間自転車に乗っていなかった人が再び自転車に安全に乗るための無料講習を提供する「Coup de Pouce Vélo(自転車を助けよう)」という政策を実施したことも手伝って、パリでは今、空前の自転車ブームです。もちろん、パリですから、パリジェンヌのおしゃれな自転車ファッションにも、注目が集まっています。

東京都は2040年代までに自転車通行空間約1800kmを目標
東京都も先月、3密を避ける新しい日常に対応した交通手段である自転車に注目し、2012年の「東京都自転車走行空間整備推進計画」に続く計画として、「東京都自転車通行空間整備推進計画」を策定したと発表しました。整備済みの約300キロメートルに加えて、2030年度に向けて新たに約600キロメートル、累計約900キロメートルの整備に取り組むとのことです。

ポストコロナの都市観光は自転車が主流
観光客にとっても、自転車は魅力的な移動手段です。中学の修学旅行の京都で自由時間に自転車を借りたのですが、人が少ない場所を選んで気ままに走っては小さな寺院やお店に立ち寄るという自由さが楽しくて、それが旅行の一番の思い出になったという経験があります。徒歩や自転車での移動では、見られる範囲は狭くなりますが、興味の赴くまま、より深くその場所を見ることができます。大都市の観光と言えば、自転車でするもの、になっていくのかもしれません。