【コロナ:世界の動き】台湾、日本との往来再開は2021年末になる可能性を示唆。第4波を抑制した香港 航空機クルーも14日間のホテル隔離へ
(やまとごころ 2021年2月17日)
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【ポイント】
新型コロナの新規感染者は、中国でも1月に2000人を超え、厳しい感染対策を取っている。
台湾は、1日の新規感染者が数人にとどまっているが、海外渡航は厳しく、留学生は入境後14日間の在宅検疫と、検疫終了時のウイルス検査が義務付けられている。台湾のワクチン接種は6月に始まるといい、接種率が6割に達すれば海外との往来制限が緩和されるという。
世界で「デジタル・パスポート」開発が続いているが、試験段階であり、海外渡航が回復するのには時間がかかりそうだ。

【 内 容 】
中国、春節連休のキーワードは「今いる場所で過ごす」
中国では、2月11日から17日が春節の大型連休となっているが、中国政府は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため厳しい措置をとっている。例年であれば春節の大移動が話題となるが、今年は移動する人が激減。「今いる場所で過ごす」がキーワードとなり、帰省せず春節の連休を過ごすことを推進するための策も増えている。
中国では1月に1カ月の感染者が2000人を超えて昨年3月以来の高い水準となったが、この1週間は1日当たり1桁台で推移している。政府は引き続き厳しい対策を講じており、春節中に農村部へ帰省する人にはPCR検査を義務付け、帰省した先でも14日間の自主隔離を求める省もある。
今いる場所で春節を過ごした人に優遇措置や特別手当を支給する自治体や企業も多い。深センは帰省を自粛した人に「デジタル人民元」を発行し、上海市松江区にある企業は春節に帰省しない社員に対し1人2000元の特別手当を支給している。北京市では春節連休中に市内の公園や全ての有料道路を無料解放するほか、12カ所の博物館も開館する。四川省成都では、同地に留まって年越しする出稼ぎ労働者に大晦日のご馳走が贈られた。江蘇省では315カ所の観光地を無料開放しているという。

シンガポール、金融通貨庁がデジタルお年玉を推進
中国系の国民が多数を占めるシンガポールでは、春節に「紅包(ホンバオ)」と呼ばれるお年玉を配るのが伝統となっている。今年の春節は新型コロナウイルスの影響もあり、シンガポール金融通貨庁(MAS)が、中国でも導入が進んでいるデジタルお年玉を推進。新札の発行を抑えられるので環境に優しいという点も後押しになっているという。

台湾、国内旅行、自然豊かな観光地がブーム
台湾では春節の大型連休が7日間となり、国内旅行がブームとなっている。2016年の国内総旅行回数は2億1940万回で過去最高を記録したが、その後下落が続いていた。しかし、昨年は国内総旅行回数が2億1000万回を突破すると予測され、過去3年で初めてプラスに転じる見込みだ。国内旅行の中でも、自然豊かな観光地「花蓮」が人気。花蓮にある海洋公園は期間限定で3〜6歳の子供が無料で入園できるなど、春節キャンペーンを実施して好評を得た。
正規留学生の入境申請受付を再開
台湾政府は9日、居留証を持たない域外の正規留学生に対する入境申請の受付を8日に再開したと発表した。留学生には入境後14日間の在宅検疫と、検疫終了時の新型コロナウイルスの検査が義務付けられる。台湾では、新型コロナの変異種が海外で確認されたことを受け、今年の元旦から水際対策を強化し、居留証を持たない外国人の入国を禁止していた。
台湾ー日本間往来、ワクチン接種率が6割になれば緩和の見通し
台湾中央感染指揮センターの陳指揮官は、日本で新型コロナウイルスのワクチン接種が進めば、今年末に感染状況が落ち着く可能性があると述べ、その際には両国・地域間での往来が再開できるとの見解を示した。陳氏は、台湾では6月にワクチン接種がスタートする可能性があり、接種率が6割に達すれば海外からの入境者に課せられている14日間の隔離を短縮でき、海外との往来制限が緩和されるとの見通しを示した。日本への渡航再開時期については、日本が緊急事態宣言を延長したことと、ワクチン接種の準備を進めていることに言及し、年末までに日本と台湾で感染状況が改善されていれば往来再開が期待できると述べた。
台湾では1日の新規感染者が連日数人にとどまっており、いずれも輸入症例が中心で市中感染は抑え込まれている。しかし、春節期間中は観光地の入場人数を制限したり、高校以下の学校の新学期開始も4日繰り下げて校内の消毒をしたりするなど、感染予防対策を徹底している。

香港、第4波を抑制。通常に戻りつつある市民生活
香港では夜間の外食禁止が昨年12月から続くなど、厳しい措置がとられおり、香港レストラン全体で春節期間中の売り上げが6割減となるとの予測も出ている。一方で、新型コロナウイルスの感染状況が改善したため、春節の連休が終了する18日からは規制が緩和され、現在防疫措置緩和のため、レストランでの飲食は1テーブル2人まで営業も18時までとなっているものを、1テーブル4人まで営業も22時まで延長される。18日からはテーマパークやジム、エステサロンを含む一部特定施設が条件付き再開され、公共サービスも全面復旧する。ただし、政府庁舎への入館には感染者追跡アプリ「安心出行」のスキャンが必要となる。
香港の林鄭長官は、第4波が既に明らかな緩和傾向にあり、春節後には市民生活が通常通り再開できることを期待すると述べている。
パイロットなど航空機クルーも指定ホテルで隔離へ
香港政府は中国本土・マカオ政府と出入境について協議を進めており、香港の新規感染者が1桁に近づけば、本土との出入境再開が現実的になるとの考えを示した。しかし、海外から入境する航空会社のパイロットと客室乗務員に対する検疫強化については、2月20日から予定通り実施する。

世界でデジタル・パスポートが続々開発
デンマークは国境間の往来をスムーズにするために、ワクチン接種の有無を証明する「ワクチン・パスポート」を発行する準備を進めている。同国のボドスコフ財務相代行は、簡易形式のワクチン・パスポートの発行を2月末までに始め、詳細を記したデジタル版のワクチン・パスポートは「今後3、4カ月以内に出張などで利用できるようになる」と述べている。
世界では、「コモンパス」や「IATAトラベルパス」など、いくつかのデジタルパスが開発され、試験運用が進んでいる。エストニア政府も、ワクチン接種証明書を持っている旅行者の隔離措置を免除すると発表した。

フランス、6月1日まで緊急事態宣言を延長
フランス議会では9日、緊急事態宣言を6月1日まで延長する法案が可決された。同国の緊急事態宣言はロックダウンなどの制限措置を可能にするもので、2月16日に期限を迎える予定だった。フランスでは新規感染者が1日当たり2万人前後で推移しており、高止まりの状態にあるため、専門家の間では3度目のロックダウンもあり得るとの声があがっている。9日には724人の死亡が確認され、累計死者数は8万803人(2月12日現在)に達した。