【海外メディアななめ読み】持続可能な空の旅に向けた挑戦 100年先も地球の裏側へ飛んで行けるよう、今できること
(やまとごころ 2021年5月13日)
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【ホッシーのつぶやき】
フランスで「2時間半以内で列車移動が可能な区間の航空機運行を禁止する法案」が、可決する可能性があります。オーストリア航空は、2020年にウィーンから直通で3時間以内の都市間フライトを廃止しました。KLMオランダ航空は「飛行機の代わりに列車を選ぼう」と呼びかけています。
日本では、東京=大阪間は新幹線で2時間半。航空機移動をやめる選択ができるでしょうか?
持続可能な社会の選択とは、利便性を大きく犠牲にしなければならないのかもしれません。

【 内 容 】
2時間半範囲内で列車移動が可能な区間の航空機の運行を禁止する法案が、2021年の4月10日、フランスの下院を通過しました。上院での可決を待って、正式に法案化されると、国際線の乗り継ぎ便を除く、パリ=ナント間(約350km)、パリ=リヨン間(約400km)、パリ=ボルドー間(約500km)を含むいくつかの路線が廃止されます。英BBCやThe Guardianが報じています。

二酸化炭素を大量に排出する飛行機

この法案は「気候変動対策・レジリエンス強化法案」というもので、温室効果ガス排出量を削減するための具体的措置を盛り込んだ法案です。2019年にマクロン大統領によって招集された150人の市民によるFrance’s Citizens’ Convention on Climate(気候変動市民評議会)の環境政策提言に基づいており、元々は4時間以内で列車移動が可能なフライトの廃止が提案されていました。一部の地域や、2004年の経営統合で欧州最大の航空会社グループとなったエールフランス‐KLMの反対を受け、2時間半以内へと短縮されたといいます。

オーストリアではウィーン=ザルツブルグ間を列車移動に置き換え

このような動きは、フランスだけではありません。ヨーロッパの航空メディアaeroTELEGRAPHによると、2020年オーストリア航空は、コロナ禍による業績悪化を補うため、政府などから総額6億ユーロの金融支援を受けることに伴い、ウィーン空港から直通で3時間以内の都市との間のフライトを廃止しました。その路線とは、ウィーン=ザルツブルグ間(252km)で、その代わりに、ウィーン空港とザルツブルグ中央駅を結ぶ特急列車「AIRail(エアレール)」の運行が拡大されました。「エアレール」とは、オーストリア航空とオーストリア連邦鉄道が協力して運航している特急列車で、オーストリア航空の便名がついており、乗車券は航空券と一緒に予約できます。同区間の列車移動の時間は約2時間半です。

飛行機と新幹線がライバル関係だった東京=大阪間は新幹線で2時間半

この動きを日本に当てはめると、「のぞみ」で2時間半の東京=大阪間(約550km)は廃止路線となる可能性があります。私がCAとして乗務していた頃は、東京=大阪間はジャンボジェットと呼ばれる2階建ての大型機材が、日々満席のお客様を運んでいました。現在もビジネスマンが多く利用する、日本の航空会社にとって無くてはならない路線です。また、この区間は、長い間、新幹線と飛行機の乗客争奪戦の主戦場でもありました。1992年についにこの区間を2時間半で結んだ「のぞみ」は、「大阪で朝9時の会議に間に合います」をうたい文句に、飛行機と勝負するために誕生したのでした。この戦いに、環境破壊というテーマがあっさりとピリオドを打つとしたら。当時の誰がそんな結末を想像したでしょうか。

KLMオランダ航空は2019年に「飛行機の代わりに列車を選ぼう」と呼びかけた

今回「4時間以内で列車移動が可能なフライトの廃止」には反対したエールフランス‐KLMですが、KLMオランダ航空は2019年、航空会社としては異例の「飛ばない選択」を促す意見広告を出し「航空会社が飛行機の代わりに列車に乗ろうと呼びかけた」と話題になりました。これは、同年10月7日に創立100周年を迎えたKLMオランダ航空 (KLM Royal Dutch Airlines) の「Fly Responsibly(責任ある航行)」という計画に基づいた、Royalの名に恥じない、品格とユーモア溢れる動画広告でした。
その動画には、まず青空を飛行するKLMの航空機が登場します。「飛び始めて100年間、色々な場所へいきました」というナレーションに合わせて、エジプトのピラミッドや、ハバナを思わせるカラフルな街並みが現れ「そして、そう、こんなところへも行きました」という台詞の後に、モダンなホテルの客室の窓の外に富士山が見えている画像が映ります。そして「子供たちにも、この美しい世界を知って欲しいから、100年の歴史を持つ航空会社は大きな責任を担っています」と続き「いつでも直接会う必要がありますか?」「飛行機の代わりに列車を使うことはできませんか?」と提案します。次の100年も飛び続けるためには、航空会社の努力だけでは足りず、旅する人ひとりひとりが「責任ある航行」を選択する必要があると訴えています。最後には、この映像が全てスタジオで撮影されたという事実が明かされ「この動画を作るために飛行機は一度も利用しませんでした」という字幕で終わります。
https://www.youtube.com/watch?v=L4htp2xxhto

持続可能な空の旅のため、日本では何ができるか

短距離路線廃止と鉄道移動を促す動きは、飛行機をなくすための動きではありません。今後100年も変わらず、飛ばなければならない時に世界のどこへでも飛んでいける為の動き、つまり持続可能な旅への挑戦です。日本には新幹線という世界に誇る安全な高速鉄道があります。良きライバルだった飛行機と新幹線が今後、地球のために協力関係へと発展することを期待します。