(『観光のひろば』 2022年3月17日 )

【ホッシーのつぶやき】
今回は、釼菱さんの「地域」と「ホテル」の関係についての熱い思いに触れました。
ホテルのコンシェルジュに「丹後ちりめん」と「舞鶴引揚記念館」を学習してもらう機会を作り、コンシェルジュとして「本当の地域を伝える」ための場を提供された話でした。
世界的ホテルチェーン「マリオット」の会員によるホテルの強みも学びになりました。

【 内 容 】
 私ごとですが、京都府観光連盟の仕事は3月末で終ります。今後はフリーになり、観光を応援していきたいと思っています。

 京都のホテル稼働率は、ビジネスホテルから4つ星ホテルまで入れて30%前後です。その中でコンシェルジュのいらっしゃるホテルが17〜18ほどあり、コンシェルジュの人たちを通して感じたのですが、マリオットホテルチェーンと販売提携しているところが増えており、マリオットに加盟しているホテルの話を聞くと、宿泊客の6割程度がマリオットの会員だといいます。日本人もマリオットのボンヴォイ会員が非常に多くて、マリオット会員のホテルは値段があまり下がっていません。ポイントがあるので安売りする必要はなく、高い値段を払ってもポイントを貯めたい、持っているポイントを使いたいという方が多いと言います。マリオットに加盟したプリンスホテル(今はザ・プリンス)もゼロだったコンシェルジュを4人配置されました。
 京都の平均宿泊は1.5泊ですが、マリオットに来る日本人は3、4泊しており、マリオットのようなホテルチェーンに加盟の検討をされているホテルも増えているようです。

 先日、海の京都DMOから受託する形で、コンシェルジュの人達7名を舞鶴と与謝野町へ連れて行きました。 与謝野町は「丹後ちりめん」で日本遺産に認定された地域で、舞鶴は明治時代の近代化を推進した旧軍港で、引揚記念館にも連れていきました。
 「丹後ちりめん」は西陣の着物の素材として利用されており、コンシェルジュ達は「わざわざ丹後に行く必要はない」と思ったようですが、丹後ちりめんのなかの1社はパリにファッション素材として出されており、そういう世界に向けて動いている人たちがいること、繭から草木染めして反物にすると一反50万円はするようですが、製作される方の想いをお聞きすることができました。
 舞鶴では引揚記念館へお連れしました。ウクライナ問題も含めて、戦争で収容所生活をした方がヨーロッパには多いので、引き揚げてきた体験ということだけでなく、世界平和のレイヤをいかに守るかみたいなことを共感してもらえる場所になれば良いと思いお連れしました。
 コンシェルジュの方は、引揚記念館も知らない、丹後ちりめんも知らない、知らないから案内もできないと言う状況でしたが、地域に根ざしている歴史について、実際に携わっている方の言葉で語っていただき、人と触れ合ってもらうことが良かったのではないかと思っています。
 京都に来るお客様も、京都市内だけでは満足しなくなっており、自然のある所、海や山のある所へ行きたいという声が出ています。そのような時、地域を本当に案内できるコンシェルジュの必要を感じていたのですが、コンシェルジュの方もコロナによって変わってきていると感じました。

 観光庁の既存観光拠点事業で京都に隣接する亀岡市に関わりました。湯ノ花温泉にある13室ある旅館「翠泉」は客室すべてを露天風呂に変えられました。この旅館は二人で宿泊して一人37,000円以上の料金ですが、稼働率80%を超えています。この旅館には年間50泊する方もおられて、和風オーベルジュと言われているそうで、料理長は30泊されても料理で飽きさせないと言い切っておられました。
 私は、このような旅館も素晴らしいのですが、泊まりに来て、景色を眺めて、良い温泉に入って、美味しいものを食べて帰っていくだけで、この先ずっと続けていけるのかという思いも感じます。例えば亀岡で、まだこういう所に行っていないと言うことであれば、こういう所に行ったらどうですかとか、ここにも美味しい所がありますよとか、そのような案内をどうされるのか確かめてみたいと思いました。
 コンシェルジュは、自分達が食べたり、経験したアナログの情報をお客様に提案します。だから地域に住んでいる方の話を聞いたり、感動したことをお客さまに伝える必要があるのではないかと思っています。

 地域の持続可能性を考えるとき、僕は、京都のホテルと地域をつなぐようなことをして参りたいと思っています。