俳優・山口智子さんが語る旅のチカラとは? 「体感」が生み出す心の旅、人生を豊かにする旅の醍醐味を聞いた
(トラベルボイス 2024年11月28日)
https://www.travelvoice.jp/20241128-156497
【ホッシーのつぶやき】
「兼高かおる 世界の旅」懐かしいですね… 1959年から31年間で1500回以上放送されています。約160カ国を訪れ、移動距離720万kmです。 俳優・山口智子さんも「世界で一番旅が大好きな私」と言われ、2023年に「兼高かおる賞」を受賞されています。
私も観光を考えますが、旅って、楽しいから行くのであって、考えることから抜け出して旅を楽しみたいと思います。
【 内 容 】
ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2024のスペシャルサポーターを務めた俳優の山口智子さん。TEJ開幕の記者会見では、「きっと世界で一番旅が大好きだと自分では思っております。人生における感動はほとんど旅から得たと言っても過言ではないくらい、数々の感動をいただきました」と語るなど、旅に対する愛があふれることで知られている。そんな山口さんに、人生を豊かにする旅の力について語ってもらった。
旅の原点は兼高かおるさん
10年間の音楽を追う旅をまとめた音楽映像「体感」、書籍「LISTEN.」を発刊。日本再発見の旅を映像に収めたYouTubeチャンネル「山口智子の風穴!?」も配信するなど、旅に関する活動を積極的に展開している山口さん。2023年には旅を通して文化を伝える業績を讃える「兼高かおる賞」を受賞した。
「今、一番言ってみたいところはエジプト」と山口さん。TEJの会場では、そのエジプトやインドなどのブースを訪れた。「それぞれの国のパワーを感じました。ちょっとした世界旅行をしている気分に浸れました。まだまだ知らないことにあふれている。それに出会うことが旅の醍醐味ですよね」と話す。
TEJ開催中、精力的に国内外のブースをめぐった
山口さんが、旅の楽しさに目覚めたきっかけは、兼高かおるさんだ。「世界に飛び出してチャレンジする兼高さんをテレビ番組で見て、世界にはこんなにキラキラ輝いているところがあるのを知って、『絶対行かなきゃ』」と思ったという。
これまで訪れた国や地域は数知れず。日本国内もさまざまな地域に足を運んだ。「日本からは遠い土地でありながら、その場に立つと、景色や、音楽のメロディやリズムに何故か懐かしさ覚えました。遥かな地を旅していると同時に、自分の中に深く降りていくような旅でした」と振り返る。
ポルトガルでは、日本との深い縁やファドに魅了された。その後、ポルトガルには何度も訪れ、アソーレス諸島にまで足を伸ばし、もっと深く知りたいとポルトガル語も学んだ。
山口さんは、撮影で海外に行くこともあれば、一人旅をすることもあるという。「一人旅は大変ですけど、贅沢でもありますよね」と話す一方、「旅は生命体としてサバイバルする能力を訓練する場だとも思う。普段の生活で弱った自分に喝を入れることにもなります」と笑う。
音で旅を表現する「LISTEN.」プロジェクト
そんな山口さんの旅歴を伝えるプロジェクトとして、2011年から10年間にかけて、世界の音楽を通じて世界の美しい文化を伝える「LISTEN.」プロジェクトを展開してきた。その歩みをまとめた「LISTEN.」も発刊。二次元コードをつけた「世界の音」を体感する一冊だ。兼高さんのように、映像や音などエンターテイメントで旅を表現する。
山口さんは、その「LISTEN.」から一つのエピソードを紹介してくれた。ジョージアの「ポリフォニー」との出会いだ。ポリフォニーとは、複数の独立した声部からなる音楽のこと。「声を重ねていく、その歌文化が素晴らしい。黒海近くのグリア地方の長老たちから素敵な歌を聞かせていただいた宴は忘れられない」という。そのジョージアのポリフォニーは、「LISTEN.」映画版のラストを飾った。
「何か知っているつもりになることと、本当にその場に立って空気を吸って、その地のものを食べて、現地の人と会うことは別物ですね。一歩踏み出すのは面倒だったりするけれど、地球は豊かな彩りに輝いている星。知らなかった文化を知って、そこに憧れて、尊敬しあって、一丸になれれば素敵なことですよね」。
言い換えれば、「体感」ツーリズム。「旅で一番面白いのは、居酒屋でもどこでもいいんですが、その土地の人とのコミュニケーション。世界に自分の友達や家族が増える感覚になります」。
脚本家・小山薫堂さん、「旅の面白さって、ハプニング」
TEJ2024の一般日には、山口さんのトークイベントが、兼高かおる基金代表理事の長内恵子さん、放送作家で脚本家の小山薫堂さんを交えておこなわれた。
トークショーでは、旅番組のパイオニア「兼高かおる 世界の旅」を紹介。日本人の海外旅行が自由化される1964年より前、1959年から放送が開始され、31年間で1500回以上、放送された。訪れた国は約160カ国、移動距離は720万キロ。兼高さんが記録したフィルムは、現在でも貴重な映像資産となっている。
山口さんは、「兼高さんは、常にスカートをはいていた。どんな過酷な場所でも女性らしさを忘れない人。日本代表として日本人女性を意識していた」と振り返る。
一方、小山さんは、イタリア・トリエステでの体験から、旅の面白さを披露した。
現地の友人に「地元の人しか行かないレストラン」に連れて行ってほしいと頼んだところ、『アンジェリーナ』という親子で切り盛りする大衆食堂に連れて行ってもらった。そこの壁には、訪れた人のサインがいっぱい。小山さんは、その中に、唯一、日本人らしき名前を見つけたという。
「森武大和(モリタケ・ヤマト)」。検索してみると、彼のフェイスブックを発見した。メッセンジャーで「アンジェリーナ」のことを伝えると、30分後「この店めちゃくちゃ美味しいですよね」と返信が来た。
実は、森武さんは、ウィーン放送交響楽団の副主席コントラバス奏者。日本に帰国時に、小山さんは彼の出身地である福岡の小さなおでん屋で食事を一緒にしたという。森武さんの奥さんはバイオリン奏者。宴もたけなわ、彼女はそのおでん屋でバイオリンを演奏した。83歳のおでん屋のご主人は「店の中で生のバイオリンを聴けるなんて」と感動したという。
「旅の面白さって、そんなハプニングですよね」と小山さん。人と人が出会い、また違う人と繋がる。「旅をきっかけに、みんなが幸せに感じられて、本当に良かった」と語った。
小山さんの体験も、まさに「体感」ツーリズム。予期しない出会い、その土地の人とのコミュニケーションで「世界に自分の友達や家族が増える感覚(山口さん)」は、人生をより豊かにする。
トークイベント「地球を楽しむ仲間達」で(左から)山口さん、小山さん、長内さん