国土交通省国土交通政策研究所は「持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究」中間報告
(国土交通政策研究所報第 71 号 2019 年冬季)
http://www.mlit.go.jp/pri/kikanshi/pdf/2018/71_5.pdf

国土交通政策研究所による「オーバーツーリズム」アンケート結果によると、「トイレの不適切な利用」45.6%「ごみ投棄」43.5%「立入禁止区域への侵入」40.0%「交通渋滞」58.7%などが上位だった。
観光による地域経済への影響や危機管理も重要としている。
「混雑による満足度の低下」28.3%という数字も上がっており、観光を国の柱にするためには、混雑対策が重要だ。

【ポイント】
持続可能な観光に関する取組みを実 施・検討していると想定される249 市区町村に調査票を送付し、46 市区町村から回答を得た。

1、マナー・ルール
「トイレの不適切な利用」「ごみ投棄」「立入禁止区域への侵入」が 4 割以上でみられた。
施策としては、「マナー等の周知のための広報」約 5 割、「自然や文化の保全意識を醸成するツアー等」約 3 割で実施されている。

2、混雑
「交通渋滞」が全課題中最も高い 59%、「観光客の満足度の低下」「公共交通機関の混雑等」が 3 割弱でみられた。
施策としては、「レンタサイクル(約 5 割)」「パークアンドライド」「マイカー規制」(約 3 割)等が代表的であるが、「地元住民の優先利用」等の実施もみられた。また、「観光通年化のためのオフ期イベント・誘客」が約 7 割、「広域的な観光客の分散」が約 6 割で実施されている。

3、自然環境保護及び文化財等の保護
マナーやごみ関係のほか、自然環境や生態系、文化財(地域)への負の影響について 1~2 割程度でみられた。施策としては、マナーや景観対策、自然公園条例や文化財保護条例の制定、立入禁止区域の設定等が実施されている。

4、土地利用・宿泊施設等
「宿泊施設の不足(約4割)」、「観光開発等による自然、文化、景観・町並みへの影響」が2割程度でみられた。
施策としては、「まちづくり条例等の制定」「形態意匠等の制限」(3割以上)、「都市計画域外での景観計画による開発コントロール」が約 2 割で実施されており、「観光エリアと居住区域の分離」や「観光客の分散化」のため、宿泊施設等の立地制限・誘導を実施する地域も1 割程度みられた。

5、地域経済への影響
「日帰り客等の増加によるリーケージ」や「季節変動による雇用の不安定さ」が約 4 割で認識され、特に重要な課題とする率も高い。
施策としては、「観光通年化のためのオフ期イ ベント・誘客」が約 7 割、「イベント等における地元企業、地元産品等の活用促進」が約 6 割で実施されており、通年化のために外国人観光客の誘客を推進する地域もみられた。

6、観光危機管理
「緊急時の観光客の安全確保等」は約 5 割で課題として認識され、「今後起こりうる課題として注視」を含むと全課題中最も高い 8 割強で認識されている。一方、「災害発生時の観光 客への的確な対応のための方策」の実施は約 3 割、「危機後の観光需要の早期回復のための 方策」の実施は約 15%に留まった。

7、全般
「地域社会の理解度・許容度の低下」は約 15%で認識され、その 5 割が 5 年以内に発生と回答している。施策については、DMO の設立など「観光関連機関や民間事業者との連携」 が約 7 割と多く、「観光指標の計測によるマネジメント」は約半数であったが、記述回答の多 くが観光客数や消費額、来訪者の満足度等の計測であった。また、「地域住民の理解度・許容 度を高める方策」は約 3 割で実施され、おもてなしの向上等の取組みが挙げられた。
このように、地域住民への影響の大きい混雑やマナーのほか、観光危機管理、リーケージ や雇用不安定、宿泊施設の不足が約 4 割以上の地域で課題として認識されており、観光開発 等による自然、文化、景観・町並みへの影響が 2 割程度でみられた。さらに、多数の課題に ついて、3~4 割の地域において今後起こりうる課題として注視されている。

国内現地調査地域の観光地特性と主な取組みとして、大分県由布市、京都府京都市、沖縄県が紹介されている。