[議論]新型コロナでリモートワーク急拡大、でも少し変じゃない?
(日経ビジネスオンライン 2020年3月19日)
https://business.nikkei.com/atcl/forum/19/00026/031600008/

コロナウィルス問題はさて置いてと言いますか、在宅勤務、リモートワークが叫ばれている中で、この対談はとても腑に落ちます。
パソコンが導入された頃、メール未確認によるトラブルも良く発生していました。
少子化問題、雇用者不足からもリモートワークが求められると思いますので、ご一読の価値ありの情報です。

【ポイント】
◎問題提起
・これまで、多くの大企業が「リモートワークの導入は難しい」と言っていませんでしたっけ?
・1~2週間やって「うまくいかなかった」といい、元の働き方に戻ろうとしていませんか?
・リモートワークが効率的にできない理由は、本当に「リモート」だからですか?
◎議論のポイント
●「出社組」と「リモート組」の分断問題
●リモート組が感じる「後ろめたさ問題」
●eメールが職場に登場したときと似ている
●最初は快適だったけど、寂しくなってきた?
●オフィスの良さは「人の気配」
●仮想オフィスでも“ザワザワ感”を可視化する
●“6メートル以内のチーム感”をどう再現するか
●オンラインでの“いいチーム”の作り方は?
●「自己管理できるかどうか」はリモートとは無関係
●成功のポイントは「タスクばらし」と「ふりかえり」
●成功体験を積む前に管理しようとしてはいけない
●「いつか元の働き方に戻す」という前提は捨てよう
●“逆戻り”は経営への信頼を損なう
●「いい仕事」の定義をアップデートしよう

・多くの大企業が「我が社には到底できない」と言っていた理由は、労務管理の難しさや情報漏洩リスク。
・コロナ問題で、これまで「できない」としていたリモートワークを導入したが、多くが準備不足。
・この状態が続くと結局「リモートワークって駄目」となるのではないかと心配。
・リモートワークをやってみて「いつもよりはかどった」の声も多いが、「うまくいかない」も増えつつある。これは「リモート」がうまくいってない場合と、「ワーク」つまりチームワークがうまくいってない場合がある。
・リモートワークを「選択制」や「許可制」にしている企業が多いが、選択制や許可制では、うまくいかない。
・リモートワークを許可する人がリモートワークしない状況。許可する人は部長といった“偉い人”です。「真面目に仕事するって、毎日オフィスに来て仕事をする」というスタイルだ」と信じている。
・許可制にすると、同じチームの中に「出社メンバー」と「リモートメンバー」が混在する。その結果、短期の比較で「リモートのほうが生産性が落ちる」という誤った認識が広がる。当初は「慣れない」ので不具合が起きる。それは当然です。
・今までの仕事のやり方は「オフィスにいることを前提として最適化されたチームワーク」なので、新たに「リモートでのチームワーク」を確立するために、試行錯誤は不可欠です。
・選択制の場合、たいていは「出社メンバーが多数派で、リモートメンバーは少数派」になり、リモートメンバーは「後ろめたさ」を感じる。
・問題は、知識や技術で解決可能な「技術的問題」と、複雑な関係性の中で生じる「適応課題」がある。リモートワークが機能しない多くのケースは「適応課題」です。
・「全員リモートで働きながら、今までと遜色ない成果を出すこと」で設計するほうが、断然うまくいく。
・「eメール」が登場した時に似ている。電話で調整していたことをメールだけで調整すると、「メールを見ていない」という問題があちこちで勃発した。
・リモートワークを始めてから実際に起きているのが、人との接触が極端に少ない故に起こる「寂しさ」の問題です。
・リモートワーク導入前は「リモートって集中できる」「無駄な会議がないから効率がいい」と言っていた。この“集中できる環境”はリモートだからなのか?、オフィスでも実現可能なのではないか?。
・リモートの「寂しい」を分析すると、“オフィスで働くことの本質的な価値”が見えてくる。オフィスの良さは「人の気配」にある。チームメンバーの雑談が聞こえて、気軽に雑談したり、困ったことがあるとすぐに相談できること。
・オフィスが持つ、いつでも雑談や相談ができる機能は重要だと明確に位置付けて、それをリモートでどうやって可能にするかを考えるほうがいい。
・その答えとして実験から始めたのが「仮想オフィス」という環境づくりです。

・PCのカメラに写ったものが1〜2分おきに更新され、今何しているかがなんとなく分かる。「集中して作業してる」とか「離席中」とか、実際のオフィスのように様子が分かるようにしている。
・アイコンをクリックすればチャット機能で話しかけることもできる。Zoomボタンを押せば、すぐにオンラインミーティングも始められる。ただし「今話しかけていいか」を周りが判断できることが重要なので、みんなが予定をこまめに共有する。
・実際に、今いる場所はバラバラで、全員リモート前提で働いている環境。
・Twitterのような文章は全部読まなくていいという前提で、なんとなく目の端で眺めておくくらいのもの。目的は“オフィスのザワザワ感”を可視化すること。
・相手と心理的に安全なチームであることを感じられるのは“6メートル以内”、これをリモートの世界に持ち込むこと。
・実験するといいのは、6人くらいまでのチームでオンラインミーティングを“1日つなぎっぱなし”にしてみることです。
・“いい仕事”とは「誰も正解が分からなくて、皆でやらざるを得ない状態になっている仕事」です。
・リモートにも出社にも良さがある。その違いで断絶を生むことになるのは経営として致命傷。「全員が同じ条件、フェアな環境にしよう」とした。
・「リモートワークに向く人、向かない人」という資質や経験の違いはあるが、トレーニングによって習得可能。
・成功のポイントは「タスクの見える化」と「ふりかえり」。
・「タスクの見える化」は、1〜2時間程度で完了できる業務量に分解するアプローチ。これをやると「1週間でやってほしい仕事」の業務が1〜2時間×10個くらいに小分けできて、進捗が確認しやすくなる。
・加えて「ふりかえり」の習慣が重要です。個人の仕事の進め方に周囲も口出ししながら「なぜ今回は遅くなったのか。どうしたら改善できるのか」とブラッシュアップしていく。
・この「タスクの見える化」と「ふりかえり」は、ソフトウエアのアジャイル開発でよく活用されている手法。
・「リモートワークの阻害要因」と言われてきた「労務管理」「情報漏洩」「紙ベース業務」をどうするかについても、すぐに解消できると思わずに、腰を据えて対策を練ったほうがいい。
・「リモートワーク」導入のためにとガチガチのルールを決めてしまうことも禁物です。ルールを決めると「そんなの無理だ」「言われた通りにやっているのにうまくいかない」と反発が出る。ルールで縛るのでなく「こういう選択肢があるよ」と提案すると「じゃあ、自分はこうしてみよう」となる。
・そもそも管理というのは、「うまくいったことを分析して、こういうルールにすれば再現性が高まる」ということで実施するものです。

・リモートワーク導入に伴うプロセスを当てはめたら、第1ステージで「集中できてはかどる」などと気分上々のフォーミング(同調期)。第2ステージで「どうやったらうまくできるか」とみんなで試行錯誤を始めるため、一時的にパフォーマンスは下がります。第3ステージで「こうやったらうまくいった」という成功体験が生まれ、第4ステージでブラッシュアップしていくと、格段にパフォーマンスが伸びる。そこまで諦めずに待てるかが大事です。
・「いつまで続けるか」と“元の働き方に戻す”前提は捨てたほうがいい。
・リモートワークを導入する際「さぼらせないことを目的にしたルール」で固めるのも、社員をげんなりさせてしまうし、働き方の変革を阻むので要注意です。
・働き方を変えていくことは、「いい仕事ってなんだろう?」という定義をアップデートしていくことともつながる。