第6回「日本版IRの法制化における問題点」
(日経ビジネスオンライン 9月25日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140919/271478/?n_cid=nbpnbo_mlt

【ポイント】
・今秋の臨時国会で審議される「IR推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)」は、「IR実施法(特定複合観光施設区域実施法)」を作るための法律となる。
 IR推進法が可決してから1年以内にIR実施法を作ることを目指している。

・法的な枠組みについては、IR推進法で一定の枠組みが示されるが、法律的に何をどういう手段で規制するか、何も決まっていない。

・ギャンブル依存症への対処は、「賭博依存症患者の増大を防止し、その対策のための機関を創設する」とある。
・先進諸外国で行われている「自己排除プログラムならびに家族強制排除プログラム」(賭博依存症の症状がある本人やその家族の要請に基づき、当該顧客がカジノに立ち入ることを禁止する予防措置)の導入を積極的に検討することになる。
・自己排除プログラム、家族強制排除プログラムを実行するには、カジノの入り口で本人の個人情報を参照することになる。
 個人情報保護法は、個人情報を取得している事業者が、個人の同意なくして第三者に提供することを原則的に禁止しているので、IR実施法を制定するうえで、既存の法制度とマッチさせることが求められる。

・IR推進法案では、内閣府の外局として「カジノ管理委員会」が置かれ、「カジノ施設の設置及び運営に関する秩序の維持及び安全の確保を図るため、カジノ施設関係者に対する規制を行うものとする」となっている。
・外国のオペレーターは、自国において十分なコンプライアンス体制を求められているので、日本が厳しく適正な審査を行い、それをクリアした企業と組んで日本でビジネスをしたいと考えている。

・日本にIRを導入するのであれば、今の法制度と整合的があり、かつ経済政策としても、社会政策としても納得できる合理的な仕組みを作るべく、社会事象や国民の意識等を十分に調べて議論を尽くす必要がある。
・外国で富裕層がカジノを利用する方法は、「クレジットライン」と呼ばれ、顧客があらかじめ申請書を出して一定の与信額を設定して、その枠内でカジノを利用する方法と、「フロントマネー」と呼ばれる、一種の預かり金のように担保された金額から差し引いて処理される方法がある。

・賭博罪の認知件数と検挙件数は、戦前の昭和8年から19年までに、年間約3万5000件から6万4000件と全刑法犯数のほぼ半数を占めた。

 戦後は昭和21年の2万9000件をピークに緩やかに減って、平成24年の賭博罪の認知件数は366件、検挙件数は355件となった。