星野リゾートの新業態「OMO」が挑戦する都市観光とは? 地域の魅力を掘り起こすガイドツアーを宿泊して体験してきた
(トラベルボイス 2019年5月5日)
https://www.travelvoice.jp/20190505-128161

星野リゾートの都市型観光ホテル「OMO(おも)」はカジュアル志向ホテルとして2018年にオープンした。
大阪・新今宮でも2022年に開業予定だという。
「OMO」は、「はしご酒ツアー」や「まちなかさんぽツアー」などのガイドツアーを行なっている。
東京・大塚にはビジネスホテルなどが多いが、宿泊客と地域がリンクすることはなかった。地元も「観光的要素は何もない」と言っていたが、今は、地元客だけでなく、国内外の観光客が来て喜ばれている。
どこの街にも魅力的なスポットはあり、魅力的な人が住んでいる。ホテルという拠点が核になり、地域と観光客をつなぐ新しいスタイルに期待したい。

【ポイント】
星野リゾートが2018年にオープンした「OMO(おも)」はカジュアル志向の「都市型観光ホテル」。
都市部での観光目的のビジネスホテル需要に注目し、競争力ある価格と旅の楽しみの創出を両立させた新たな挑戦を、「OMO5東京大塚」で体験してきた。

OMOのコンセプトは「寝るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市観光ホテル」という。
観光目的でのビジネスホテルの利用では、「宿泊は十分だが、観光の気分は下がる」との印象を宿泊客が抱くことが、星野リゾートの調査で明らかになった。ここに活路を見出し、ホテルで用意しきれない部分は街の持つ機能を活用して、ホテルと街の新たな魅力にしていくという考えで、下記を用意している。
(1)徒歩圏内の散策を提案する地図「Go-KINJO MAP(ご近所マップ)」
(2)ご近所ガイドOMOレンジャーによるガイドツアー
ご近所マップは、お客様が周辺地域に興味を持ち、散策したいと思っていだけるよう、実際に足を運んだスポットを、自分たちの視点で切り取り発信している。
ガイドツアーは、『この地域に住む友だちがいたら、どんな店に連れていくか』がコンセプト。
行き先はその日に担当するOMOレンジャーのお勧めで、マニュアルのないツアーなのが特徴。

OMO5東京大塚の最寄りであるJR大塚駅は、観光で楽しめるという印象が薄いエリアだ。各スタッフが実際に街歩きをして魅力を探すと「路面電車の走る街並み以外にも、花街だった歴史や商店街が7つもある庶民の生活感など、大塚ならではの魅力の原石がありました」
夜の「はしご酒ツアー」は、OMOレンジャーレッドが決めた3軒のお店を約2時間で飲み歩く。
翌朝の「まちなかさんぽツアー」では、開店準備を終えたばかりのお店を覗く。店の女将さんとOMOレンジャーの井戸端会議のような会話を聞くだけでも、街の仲間に加わったような気分になってくる。
ホテルが宿泊客を街に出し、OMOレンジャーが街との媒介になる。それは、想像以上に街と宿泊客、そしてホテルの関係を結び付ける存在になる。

地域にとっても、「新しい風になっている」「星野リゾートがこの街に来ると聞いて皆で喜んだ」といい、否定的な見方はなかったといい、地域の魅力を発掘することに期待していた。
大塚には、ビジネスホテルやシティホテルが多く建っているが、宿泊客と地域がリンクすることはなかった。各店舗に取材協力すると、歓迎しながらも「自分たちの街には(観光的要素は)何もない」と言われたという。
今では「地元客が多かったけれど、国内外の観光客が来てくれるようになり喜んでいる」と笑顔を見せ、自分たちの日常が観光客に魅力的に映ることを地域が認識することに、街の活性化になるという。

「星野リゾートではこれまでも旅の地域性にこだわり、地域の文化や伝統、食事をいかした体験の提供に注力してきました。OMOでもこのノウハウが活かすことができます」と胸を張る。
OMOは、星野リゾートのリピーターにも利用されている。リピーターの「常にラグジュアリーな旅をしたいわけではない」との感想に、旅行者が旅の使い分けをされていることを実感した。

今後、大阪・新今宮などで、新たな開業計画も発表されている。どんな新しいOMOが都市観光のマーケットを作り出していくのか、今後の展開に注目したい。