【寄稿】欧米豪から人気の日本。死角はないか  Amobee Japan シニアマネージャー 齊藤飛鳥
(観光経済新聞 2020年9月8日)
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【ポイント】
アメリカ、イギリス、オーストラリアともに「日本」への関心は高いようだが、盤石とはいえない。
旅行に対する関心は、『体験』が最も高く、食事、ビーチ、歴史、山、文化が続くが、国によって関心は異なる。日本は『文化要素』が高特点だが、文化要素では、中国と競合する面が多いようだ。
また、マリンリゾートのブランド化への取り組みも必要となるという。

【 概 要 】
観光業界は難しい状況のなか、日本への関心は依然高いという話を聞く。人気観光地の日本に死角はないだろうかについて、欧米豪視点で日本への関心を分析した。

過去一年間を通して日本への関心は高い

図1は3カ国の消費者視点で、2019年7月末から2020年8月末の1年間のトラベル関心度を時系列で示した。縦軸は関心度で、上であるほど関心が高い。
3月22日にニューヨークでステイホームが宣言されたが、同タイミングでいずれの国もいずれもトラベル関心が大きく低下している。その後はケースによって横ばい、回復傾向と分かれている。
日本への関心(赤線)は8月下旬はいずれの地域でも回復が見られる。アメリカ視点では北アメリカ(カナダ)に次ぐポジションであり、日本への関心は高い。イギリス視点でも回復傾向は確認できるが、同じヨーロッパ圏への関心には及ばず、北米より低い。オーストラリア視点では日本は他地域と比較してもっとも関心度が高い。

日本は観光目的の多くをカバーしている。特に文化要素は強い

図2は3カ国の消費者視点で旅行に対して関心目的が高いかを示した。
いずれの国も『体験』が最も高く、食事、ビーチ、歴史、山、文化が続く。オーストラリアのみ『山』への関心が若干高い。COVID前の期間を多く含んでいるためか、清潔安全要素は上位にはなっていない。

図3は対象地域別に関心の差を見た。
いずれの地域も体験要素が最も高いが、日本に対してのみ『文化要素』が高い点は特徴だ。
3カ国の消費者は日本に対して体験を求めてることは間違いないが、文化的要素はそれ以上に重要である。

ビーチ要素はタイを始めとする東南アジアが強く、日本は課題点か

欧米豪3カ国の視点でアジアの競合国はどこか。図4は体験要素をアジア圏内で比較したグラフだ。
日本への関心が高く、『体験』、『食事』、『山』といった要素は3カ国から関心が寄せられている。
同様の傾向が確認できるのは中国だ。中国も同要素が上位に確認できる。
大きく傾向が異なるのは東南アジアの国々だ。インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムなど、これらの国々はビーチの要素が2番目に来ている点が特徴的だ。
特にタイは関心の高さも日本に比肩している。ビーチ要素が必須と考え、アジア圏内で旅行先を探す消費者はタイを選択する可能性が高いだろう。
イギリス視点ではわずかではあるがタイへの関心が高い結果となっている。

文化的要素は中国も高い

図5はアジア圏内で文化的要素を比較したものだ。
オーストラリア視点では日本への文化的関心が最も高く、他国の2倍近い差がついている。
イギリス視点で見てみると、日本は中国とほぼ同等、タイも比較的関心が高い。
アメリカは、中国の歴史要素が日本よりも高関心という結果になった。
体験要素の比較では、中国は日本と同等の傾向を見せており、両国とも体験や食事、歴史文化のコンテンツを同じように打ち出している可能性がある。
歴史や伝統文化を打ち出す際には、中国との差別化という視点も必要かもしれない。

まとめ
欧米豪には体験、食事、ビーチ、歴史、山が重要なキーワードである。
日本に対し、それぞれの要素で高い関心を持たれているが、唯一ビーチ要素が弱い。
東南アジアにはビーチ要素が強い国が多く、タイのように関心度自体が高い国も存在する。
中国は日本と体験要素が似通っており、また文化要素が強いことが確認された。
上記の関心傾向はイギリス、アメリカ、オーストラリアの順で見られ、欧州からの誘客では、ビーチ要素でタイト、文化要素で中国と競合すると考えられる。欧州とタイはビーチが強く、ビーチ目的の消費者は誘客しにくいと考えられる。アジア文化や歴史に関心がある層は中国へ流れる可能性もある。

上記より、国内に高級マリンリゾートのブランド地域が欲しい。伝統文化を押し出す場合は欧米視点で理解できる中国との差別化対策も必要と考えられる。