沖縄県のインバウンド誘致策を聞いてきた、航空とクルーズのハブ構想から欧米豪市場の取込み、離島誘客まで(トラベルボイス 2019年10月7日)https://www.travelvoice.jp/20191007-135751

沖縄県の2018年度の観光客が過去最高の999万9000人となった。沖縄の外国人観光客の8割が東アジアだが、欧米豪の取り込み、離島への誘客につなげたいと構想する。オーバーツーリズムの問題も出てきた。一気に数千人が上陸するクルーズは、住民に恩恵が感じられないという。沖縄は亜熱帯気候であり、JNTOと日本全体をプロモーションすることも難しい点があるようだ。

【ポイント】沖縄県への2018年度の観光入込客数は前年度比4.4%増の999万9000人で、6年連続で過去最高。そのうち外国人観光客数は同11.5%増の300万人となり、11年連続で過去最高。当初の目標は、国内700万人、海外300万人の計1000万だったから、概ね目標達成。
沖縄県では観光振興基本計画(第5次)で、2021年度までに観光入込数1200万人、観光収入1兆1000億円を目指す。外国人観光客数の目標値は2019年度で324万人だ。

沖縄県は経済政策としてIT、物流、航空、クルーズの「4つのハブ構想」を掲げているが、そのうち航空とクルーズが観光。沖縄は東南アジアと東アジアを結ぶ位置にあることから、「沖縄をファーストポイントとして、アジアからの観光客を日本国内に運ぶ」という。物流は、すでにANAが貨物拠点を那覇空港に置いている。
航空は現在、那覇空港と台湾、韓国、香港、中国、シンガポール、タイと直行便でつながっており、2019年夏期スケジュールでは20社が国際線で乗り入れ、週223便になっている。クルーズは、大型クルーズ船の寄港も急増しており、5港を合わせると日本のトップ。その成長は航空以上で、那覇港への寄港数は2010年の52回から2018年は243回と拡大。5港合計でも526回と増加した。

こうした背景から、外国人観光客誘致では「フライ&クルーズ」に注力しているという。航空とクルーズのハブとした戦略を進めていくうえで、2020年3月末の那覇空港第2滑走路の供用開始や、4月の平良港新クルーズ船専用岸壁の運用開始にも期待がかかる。

OCVBは、欧米豪の取り込みと離島への誘客を挙げる。現在は8割が東アジアだが、欧米豪の観光客は滞在期間も長いため現地消費額の増加にも期待がかかる。OCVBは航空会社と協業を重視しており、ANAとのコラボレーションでドイツとオーストラリアで東京経由沖縄のキャンペーンを展開した。認知度向上を目的として異業種とも協業。オリンパスの世界広告で沖縄を舞台とした。
インバウンドだけでなく国内旅行でも「本島+1島」を売り出すことで、滞在期間を伸ばしてもらうとともに、観光客の分散化を図る狙いもあるという。今年4月に下地島空港が開港。7月からはジャットスタージャパンが関西から、香港エクスプレスが香港から乗り入れていることから、「宮古島のプロモーションにも力を入れていきたい」考えだ。
最近ではレンタルシェアバイク「ちゅらチャリ」のサービスを始めた。GPS搭載の自転車を貸し出すことで、観光客の流動を追跡。「まだビックデータの活用には遠い」としながらも、観光客の動きを見える化することでマーケティング施策に生かす方針だ。

一方で、外国人観光客の急激な増加によって課題も出てきた。特に、一気に数千人が上陸するクルーズ。宮古島の平良港や石垣港にも大型グルーズ船が寄港する。「地元にお金は落ちるものの、島民の生活と経済活性化のバランスをとっていかなければいけない」という。
住民の満足度調査では、観光の恩恵を受けていないと感じている住民も多いという。実際にその恩恵をしっかり伝えていく必要もある。混雑緩和に向けては、二次交通や海上交通の整備も議論に上がり始めているという。
OCVBは広域連携DMO。沖縄というブランドを対外的に売り込んでいくが、「沖縄・奄美」で世界自然遺産を目指していることから、県の枠を超えて奄美を加えた広域連携も強化している。
夏のタイやシンガポールで開催される旅行博では、JNTOとは別に沖縄県のブースを単独で出展する。夏の旅行博でJNTOは日本の冬を売ろうとする。しかし、沖縄は日本で唯一の亜熱帯気候。事情が違う。桜も沖縄は1月には咲く。

広域連携DMOの「沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)」の誘客事業部海外プロモーション課課長の平川美由紀氏へのヒアリング。