百貨店の減収が止まらない インバウンド頼れぬ地域の「名門」苦境に
(産経Biz 2019.5.7)
https://www.sankeibiz.jp/compliance/news/190507/cpd1905070650001-n1.htm

全国の主要百貨店78社の2018年売上高合計は5兆9865億円(前期比0.087%減)、減収幅は前期比1933億円減(3.1%減)となった。
売上高上位10社のうち増収増益は5社。売上高トップは、髙島屋(大阪市中央区)の7246億円。
「地場独立系」百貨店の売上高トップは、天満屋(岡山市北区)の864億円。「地場独立系」上位10社の最新期の売上高合計は5572億円だが、売上高トップの髙島屋1社の売上高(7246億円)の約4分の3にすぎない。
街の中心地に位置した百貨店の存在感が薄れているという。

【ポイント】
百貨店の減収に歯止めがかからない。
全国の主要百貨店78社の2018年の売上高合計は5兆9865億円(前期比0.087%減)で、減収となった。
減収幅は、2017年が前期比1933億円減(3.1%減)に比べて縮小したが、減収に歯止めがかからない。
利益合計は前期の46億円の赤字から、170億円(前期は46億3400万円の赤字)で、減収増益だった。
売上高は増収が25社に対し、減収は53社と約7割を占めた。
好調な百貨店と不振百貨店の二極化で、好調組が全体の業績をけん引している。

大手百貨店などのグループと大手電鉄系を除いた「地場独立系」百貨店35社は、減収が27社と約8割に達し、赤字は13社だった。
中核都市にある百貨店の閉店が相次ぐが、その背景には百貨店の価格、商品構成の優位性が揺らいでいる。
郊外型商業施設に消費者が流れ、街の中心地に位置した百貨店の存在感が薄れている。
特に、インバウンド需要を取り込みにくい「地場独立系」は8割が減収。

売上高上位10社のうち、増収増益は5社(赤字縮小を含む)。
売上高トップは、近畿圏や首都圏を中心に全国展開する髙島屋(大阪市中央区)の7246億円。
2位はそごう・西武(千代田区)、3位は三越伊勢丹(新宿区)、4位は大丸松坂屋百貨店(江東区)と続き、持株会社のもとに経営統合した大手百貨店グループが上位を占めた。
5位以下は、東京、大阪の電鉄系の百貨店が並んだ。拠点となるターミナル駅に立地し、人の集まる鉄道事業と、知名度の高さを生かしている。

全国の主要百貨店78社のうち、大手百貨店グループや、大手私鉄を親会社に持つ企業を除いた「地場独立系」百貨店35社の、最新期の売上高合計は8786億5600万円で、全体(5兆9865億5700万円)の約7分1。
損益面では2016年の6300万円の赤字から、2017年は26億1500万円の黒字に転換し、2018年は20億3000万円の減益ながら黒字を確保した。
増収は8社(構成比22.8%)に対し、27社(同77.1%)が減収。赤字が13社(同37.1%)だった。

「地場独立系」百貨店の売上高トップは、中国地区を地盤とする天満屋(岡山市北区)の864億円だった。
スーパーを経営する天満屋ストア(同、東証2部)などのグループ企業と一体経営を展開し、地場の雄として知名度は高い。
次いで、東京・銀座と浅草の2店舗体制で独立路線を続ける老舗の松屋(東京都中央区)。北九州市を拠点とする井筒屋(北九州市小倉北区)が続く。

78社の最新期の増収は25社に対し、減収は53社に達する。好調組が全体業績を押し上げた構図となっている。
減収企業は、前年比マイナス5%~0%未満が最も多く40社と半数を占める。マイナス10%~マイナス5%未満が11社で、マイナス10%以上の減収率も2社あった。

全国展開する大手は地方中核都市の不振店舗の閉鎖を急いでいる。
インバウンドによる活況に加え、今後も需要が見込まれる都心部の旗艦店舗に経営資源を集中させる。
一方、「地場独立系」百貨店は、業績維持が限界となり閉店を余儀なくされるケースが目立つ。

創業1615年で400年以上の歴史を持つ老舗・丸栄(名古屋市中区)は2018年6月に閉店し、甲府駅前に立地する山交百貨店(甲府市)は2019年9月に閉店を表明した。
「地場独立系」上位10社の最新期の売上高合計は5572億円だが、これは売上高トップの髙島屋1社の売上高(7246億円)の約4分の3にすぎない。今後も経営格差は大きく開く。