9月25日 自民党総裁4候補の観光政策討論を分析!
(MATCHA 週刊インバウンドニュースマガジン 2021年9月27日)
「政策討論会の観光に関する話題のYouTube」
https://www.youtube.com/watch?v=ljaq4W1vFNQ&t=3748s

【ホッシーのつぶやき】
自民党総裁4候補の政策討論で、観光のことにこれほど時間をかけておられているのに驚きました。それだけ観光を重要と捉えられているのだと思います。
要点は下記の通りですが、上記のYouTubeを見ていただくとさらに広い話が聞けます。
どの候補もインバウンドに前向きであり、アフターコロナ に向けて速やかな経済回復を意識しておられるようです。

【 内 容 】
いよいよ開票が9月29日に迫った、自由民主党総裁選挙。次代の日本のリーダーを決め、ひいては日本の観光・インバウンド行政の方向性も占う重要なイベントです。今回は25日に行われた政策討論会をご紹介し、各候補が日本観光をどのように考えているのかをチェックして参ります。

Q1. コロナ後の観光客誘致について、どのような政策を提案されるか。
岸田
GoTo2.0という新しい観光振興策を訴えている。従来のGoToキャンペーンをバージョンアップさせたい。ワクチンパスポート、陰性証明を持っている方にはプレミアム率を上げるなど。以前のGoToトラベルは大型店・高級店に人々が殺到したので、中小・小規模の旅館・お店に行ってもらえるようにプレミアム率を上げるなど。また地域共通クーポンはぜひデジタル化したい。

高市
コロナ後は需要が爆発すると思う。それまでに事業主体が潰れてしまわないよう、早急に補正予算を成立させたい。今後は長期滞在型、高単価、看板になる商品がある、受け入れ体制が整備されている観光地が選ばれていくだろう。また、最近では少人数観光・お一人様などのニーズも生まれている。そのような多様化する需要に答えられるよう、宿の改築などの部分にお金の支援をしていきたい。

野田
もともと私はホテルで働いていた旅行業界はまだまだ伸びしろがある。
なるべく早く制限を解除し、多くの方がGoToトラベルを利用して、リベンジ消費を行えるようにしていきたい。
観光は地方にとっても新たな産業。一時中断している状況だが、新しい標準を作って、観光を通じて人の心を豊かにするよう取り組んで行きたい。

河野
コロナ後、まずは日本人のリベンジ消費が回復し、その後インバウンドが始まってくるだろう。これからの観光は「いまだけ、ここだけ、あなただけ」で、非日常を体験できるようなものになってくるだろう。ワーケーションのような働き方、観光の楽しみも出てくる。
外国人向けには、外国人向けのマイナポータルのようなもので、外国の方にも民間や行政のサービスが提供できる仕組みを作ったらどうかなと考えている
プロダクトアウトではなくマーケットインが大事だと思う。
徳島の事例。阿波おどり渦潮を推していたら、海外からの検索は「サーフィン、サテライト移住」などだった。

Q2.富裕層観光について。
高市
どう呼び込むか。IRなどあり得るがまだ時間がかかるだろう。お隣の韓国では富裕層向けのサービスが展開しているようだ。その他宇宙旅行も話題だが、あれも富裕層向けのスペシャルな体験。
日本では、日本の技術を使って、富裕層がスペシャルな体験ができる。ICT技術を使えたら楽しいと思う。

野田
スーパーリッチの開拓がまだ不十分だと思う。医療ツアーなどで、日本の強みを活かせるのでは。
スーパーヨット、プライベートジェットなどのインフラを整備しないと、そもそも来たくても来れないと思う。

河野
シェフを同伴してスイートに1ヶ月滞在する、瀬戸内を自分のヨットでクルージングするような富裕層が存在する。その他迎賓館やお寺などを貸し切るなどの取り組みが現実に始まっている。
いま保税ルールを代えて、保税地域で芸術品のオークションができるようにしました。ぜひ東京にアートバーゼル(アートフェア)を誘致したい。非常に有望な市場なのでしっかりやります。

岸田
まだまだ伸びしろがある。日本とアメリカでは富裕層の落とすお金の単価が10倍くらいちがう。その理由は日本にはまだ体験型の観光が不十分であるからだと指摘されている。
日本には素晴らしい文化・芸術がある。まずはそのような種を活用するところから、日本の観光の可能性を追求していきたい。

Q3.GoToトラベルについて。昨年感染拡大の一因にならなかったか? 今年再開された時に同じことにならないか心配している。
野田
昨年からこれまでの間に、科学的医学的な解決の術がたくさんできた。知見がたまった。特にワクチン接種、各自の感染拡大抑止のための努力。
昨年とは違う日本の状況(取り組み)があるので、万全の体制で経済を止めないように取り組んで行かないと行けない

河野
感染のリスクがどうなっているのかまずは情報を集める
次に、感染しても治療できる・重症化させない対応策を確立させる
その上で、経済をいつまでも閉じておくことはできない。どのような形で経済を再開させることが感染リスクを最小化できるのか、感染者が出ても治療ができるのか。
政府としてきちんと説明をして、国民の理解を得ながらだんだんと経済を再開させていきたい

岸田
先述のようにGoToはバージョンアップさせた形で、ワクチン接種証明、陰性証明と組み合わせた形で再開させていくことを主張している。
ただし、コロナは変異も行われるので、共存する際に油断しては行けない。
社会全体がコロナと共存するため、無料PCR検査の体制を用意する、簡易検査キットの入手を簡単にするなど体制を作っていかなければいけない。
旅行自体も、このコロナの次代にどのような旅行が安全なのかも、有識者会議を通じて考えていくのが大事なのではないか。

高市
自分も国産の治療薬がでるまで(観光再開には)不安がある。それでも感染対策をして、経済を動かしていく必要がある。
宿の感染防止対策。今は地方創生臨時交付金を活用しているところもあり、重要な対策だと思っている。家族旅行、一人旅行ができるよう宿を改築していくための、事業再構築補助金の活用を拡大して取り組んでいきたい。

Q4.国として今だからこそやるべき観光資源の活用方法は何か。どんな観光資源をどのように発信していくのか。
河野
アバターを利用して、あたかもそこにいるかのように観光を楽しむようなことができるようになった。一部では人気になっていると聞いている。食材を送って日本食を楽しむようなものもある。
アフターコロナに日本を楽しんでもらうのための情報発信は国だけでなく地域、民間でも必要だと考える。宮崎県小林市の紹介ビデオの紹介。そういうものもある、ぜひ楽しんで欲しい。

岸田
人の行き来ができるようになった時のために何をやっておくべきか。様々なツールを使って、様々なソフトを紹介していく。
日本には海外の方に大変な魅力を感じていただける歴史・文化・伝統等、様々な財産が特に地方にある。こういうときだからこそきめ細やかに情報発信していく必要がある。

高市
やはり日本は海外にとってアニメ・文化が強い。そのような作品のゆかりの地をアピールしていく。バーチャルで観光地を楽しんでいくような取り組みも。
生産者と協力して、日本の各地の国産品をネット販売していくことも今やるべき。

野田
アニメは呼び寄せのコンテンツとして重要だと思う。ネットでも流すことができる。
次は和食。海外で和食を提供し食べてもらい、「日本に行ってみたい」と思ってもらう。
日本酒の輸出の取り組みを行っている。

Q5.観光振興についてもう一度聞きたい。地域の疲弊した経済が観光で回復可能なのか? インバウンドで様々な問題も起きたと思うが、ネガな面での意見も聞きたい。
高市
まずは日本の国内観光を大事にし、充実させたい。
インバウンドのせいで様々な問題が起きているが、一方で日本に来た訪日客の方が日本人のマナーのよさや清潔さを学んでくれている。
それもまた良しかなと思っている。

野田
日本は観光産業がまだ遅れており、可能性がある。
地方に残っている活力は減ってきている。工場などが海外に行き、人も減っている。そんな中でそこにしか無い観光資源は非常に重要。
共生。うまくやっていこうということだと思う。

河野
観光産業はこれから非常に大事になってくると思う。コロナが収まれば、インバウンドを復活していきたい。
これからのインバウンドについては、富裕層をどう日本に来てもらうか。また、インバウンドを盛んにし、全国に波及させることで日本全体にいい影響が出てくる。観光産業には大きな未来がある。
地域地域で問題が起きているところもあるが、そこは地域でしっかりマネージメントしていかなければならないだろうと思う。

岸田
観光は地域にとって大変大きな可能性を占めている。
観光を活かすためには、地域や社会の活力を維持した上でないと、(その可能性は)発揮できない。地域・地方について、デジタル田園都市という構想を持っている。技術を活用して、都市と地方の物理・時間的距離を埋められないかと思っている。
そういったふうにしっかり地方を作った上で、観光を乗せて大いに盛り上げていきたい。

いかがでしたでしょうか? 目新しい意見はあまりなかったように思いますが、様々な議題がある中で、各候補が観光分野に関する政策を把握していらっしゃる点に驚きました。
また、どの候補も概ねインバウンドに対して前向きであり、かつ速やかな経済回復を意識していらっしゃる点を個人的には嬉しく思っています。
29日の開票が楽しみです。