観光再生へ基金創設、国交省検討 DXや施設改修支援
(日本経済新聞 2022年8月22日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA055VL0V00C22A7000000/

【ホッシーのつぶやき】
国交省が、観光業の再生に向けた基金の創設するようです。複数年度(5年以上を想定)にわたり使える予算を確保し、宿泊施設の大規模改修やデジタル化に補助金を出すといい、数千億円規模を見込むとあります。
自治体や事業者が一体となって観光振興計画を策定することが支援条件になり、自治体を含めた対象事業者が原則、半額を負担することになるようです。

【 内 容 】
国土交通省は新型コロナウイルス禍で厳しい経営環境にある観光業の再生に向けた基金の創設を検討する。複数年度にわたり使える予算を確保し、宿泊施設の大規模改修やデジタル化に補助金を出す。基金は数千億円規模を見込む。観光産業の基盤整備を支えることで付加価値を高め、収益力の強化につなげる。

基金による補助事業は使途や需要見通しなどの吟味が甘くなりやすいとの指摘がある。単年度予算の枠に縛られず、柔軟に運用できる利点を生かしつつ、費用対効果や実効性のチェックが欠かせない。

国交省が2023年度予算の概算要求に概要を盛り込む。要求段階では金額は明示しない方向だ。財務省などと基金の規模や財源を含めた制度の詳細を詰める。対象期間として5年以上を想定する。今年秋以降に予想される経済対策の補正予算編成で議論する可能性もある。

国交省はコロナ禍後の観光再生に、県民割など一時的な需要喚起策とは異なる中長期的な支援が欠かせないとみる。21年度の経済対策で約1000億円を確保した観光再生事業を拡充し、複数年度の政策に替える。宿泊施設のリニューアル工事は1年で間に合わないケースもあり、補助金の使い勝手が悪いとの声があった。

現行制度は宿泊施設の大規模改修や観光地の廃屋撤去に最大1億円補助する。土産物店や飲食店の改修、公共施設へのカフェ併設などにも資金を出す。基金創設を機に、事業のデジタル化も支援対象に加える。温泉街といった地域単位での予約システムの統合や、キャッシュレス決済の導入などを後押しする。

基金事業のチェック機能を高めるため、自治体や事業者が一体となって観光振興計画を策定することを支援の条件とする。政府は観光資源の活用や施設改修に詳しい専門家や、事業者の経営支援を担うコンサルタントらを派遣し、計画づくりを支える。資金と人材の両面で支援し、観光地の構造改革を促す。

自治体を含めた対象事業者が原則、半額を負担する。事業者にとっては自己負担分の資金調達も重荷となる。このため銀行などから借り入れしやすくする仕組みを整える。融資額に対する信用保証協会の保証枠の活用を促す。

コロナ禍で観光業は極端な需要減に見舞われた。21年の訪日客数は24万5862人で、コロナ禍前の19年比で99%減少し、過去最少に落ち込んだ。日本人の国内宿泊旅行者も21年は1億4177万人で、19年の半数以下だった。国内旅行消費額も低迷したままだ。

観光業は稼ぐ力に乏しいと指摘される。法人企業統計によると、従業員1人あたりの付加価値額を示す労働生産性は20年度の全産業ベースの688万円に対し、宿泊業は242万円と4割弱にとどまる。コロナ禍で宿泊旅行が減り、生産性の低下に拍車がかかっている。離職率は2~3%程度で平均を上回り、人手不足も課題となっている。

国の基金事業を巡っては柔軟に財政出動できる半面、国会の監視が働きにくい面もある。日本経済新聞の調べでは、20年度の基金の支出実績のうち51%の事業で計画が未達だった。脱炭素対策など大型基金の新設が相次ぐなかで適切な運用管理のあり方も問われる。