観光型MaaS整備でアフターコロナのインバウンド誘致へ | MaaSの意味や国内の事例を解説
(訪日ラボ 2021年1月31日)
https://honichi.com/news/2021/01/31/sightseeingxmaas/?fbclid=IwAR2IlXSiPez3jayguJnY3EVGAs17ANuj0cd7H-zKI7pwmRU5KTc5whUfDc0

【ポイント】
『観光型MaaS』とは、観光地における移動関連サービスで、観光客に快適な観光体験を提供するためのサービスとして生まれた。事前決済により混雑緩和を避けられるため、新型コロナ対策としても注目されており、電子チケットなどの利便性も期待されている。
この事業の推進には多くの事業者の協力が必要となる。当面はエリア限定の実証実験で、その利便性と費用対効果の検証を重ねる必要があるのだろう。

【 内 容 】
目次
• 観光型MaaSとは?
• そもそもMaaSとは?
• 5つのMaaS
• なぜ今観光型MaaSに取り組むべきなのか
• 観光型MaaSで期待される効果
• アフターコロナの観光客誘致へ繋げる
• 日本における観光型MaaSの取り組み事例
• 1. Izuko(イズコ)
• 2. setowa(セトワ)
• 3. ことことなび
• 観光型MaaSで観光客にとって快適な旅を

観光型MaaSとは?
観光型MaaSとは、観光地における移動関連サービスを指します。
MaaSはさまざまな交通手段を一括して1つのサービスとしてとらえる概念で、現在では国土交通省もMaaSの普及を促進しています。
以下では、MaaSの概要とその中でも観光地MaaSをふくむ5つのMaaSについて紹介します。

そもそもMaaSとは?
MaaSとは、Mobility as a Serviceの略称です。
直訳すると「サービスとしての移動」という意味で、電車やバス、タクシーなどのさまざまな交通手段を、種別ごとや事業者ごとに提供するのではなくシームレスなサービスとして提供していくことを指します。
MaaSの普及によって移動の効率化を実現し、サービスの幅が広がると考えられています。
2019年4月には国土交通省が「日本版MaaS」への取り組みを発表しており、今後さらなる発展が想定されている領域です。

5つのMaaS
国土交通省では、日本版MaaSに取り組むうえで、MaaSを地域や整備の目的によって大都市型・大都市近郊型、地方都市型、地方郊外・過疎地型、観光型の5種類に分類しています。
• 大都市型MaaS
日常的な混雑を緩和するとともに、訪日外国人を含む万人が移動しやすい都市交通を実現する
• 大都市近郊型MaaS
局所的な混雑を緩和するとともに、駅を中心とした利便性に長けた生活圏を実現する
• 地方都市型MaaS
自家用車に依存せず、高齢者も移動しやすい交通環境を実現する
• 地方郊外・過疎地型MaaS
自家用車に依存せず、交通空白地帯における移動手段の確保を実現する
• 観光型MaaS
観光客の回遊率向上、訪日外国人の観光体験の充実を実現する

なぜ今観光型MaaSに取り組むべきなのか
観光型MaaSへの取り組みにより、訪日外国人を含む観光客の移動がしやすくなり、観光産業の発展をはじめ、さまざまなメリットが生まれると考えられています。
また、観光型MaaSには新型コロナウイルス対策としての一面もあります。
以下では、観光型MaaSに取り組むことによるメリットを紹介します。

観光型MaaSで期待される効果
まず、観光型MaaSにより観光客の移動手段が充実すると訪問客数の増加が見込めます。
複数の交通機関が一体となってサービスを提供すれば、より利便性の高い交通網が構築され、従来の交通機関ではアクセスしづらかった観光地への誘客促進にもつながります。
また、交通機関だけでなく観光地とも連携し、施設の営業時間に合わせたダイヤ作成、繁閑期に応じた増便や減便など、観光客のニーズに応えるサービスを提供することで、観光地全体の満足度向上にも効果が期待できます。
また、スムーズな移動を実現することで観光地の混雑緩和や、地域への滞在時間増加による消費拡大など観光産業の発展を促す効果もあります。

アフターコロナの観光客誘致へ繋げる
新型コロナウイルスの流行により「接触や混雑を避けられる旅行」は観光客のニーズとして顕在化しています。
そんな中で観光型MaaSはさらに重要度を増していく可能性があります。
MaaSには便利な交通網の構築だけでなく、移動手段の検索、予約、決済までをひとつのサービスとして提供することも含まれます。
そのため、MaaSでは、交通を含む観光関連のチケットの事前決済やスマート化、交通機関や観光地の混雑状況を把握できるシステムの実装などにより接触、混雑の機会減少が可能です。
世界的な感染症の流行を受けて変化する観光客のニーズにいちはやく対応し、アフターコロナの観光業界を盛り上げるうえで観光型MaaSへの取り組みは有効な施策となります。

日本における観光型MaaSの取り組み事例
MaaSは比較的新しい概念ではありますが、既にいくつかの事業者は観光型MaaSへの取り組みを開始しています。
中には、ウィズコロナ時代の移動手段という点を意識した施策もあり、今後MaaSに取り組む予定の観光地において参考になるものもあります。

以下では、日本における観光型MaaSの取り組み事例を紹介します。

  1. Izuko(イズコ)
    Izukoは、東急、JR東日本、伊豆急行の3社が合同で取り組む観光型MaaSです。
    サービス内容は、スマートフォンでチケットを事前に購入し、観光地ではスマートフォンの画面を提示するだけで、交通機関や観光施設を利用できるようにするというものです。
    また、各観光地や駅の混雑状況をリアルタイムで確認できる機能も備えており、ウィズコロナの観光における需要に応えるサービスを実現しています。
    取り組みは、3つのフェーズに分けて実施されており、2019年4月から6月はフェーズ1、2019年9月から11月はフェーズ2、2020年11月16日から2021年3月31日はフェーズ3と区分されています。
    フェーズ1では観光関連チケットの試験的なスマート化やIzukoアプリのリリース、フェーズ2ではIzukoアプリの操作性向上、サービスエリアの拡大、フェーズ3では事前購入機能の拡大、観光情報の検索機能の充実など、徐々にサービスの幅を広げています。
  2. setowa(セトワ)
    setowaは、JR西日本が主導する観光型MaaSです。
    スマートフォン向けにリリースされたサービスで、広島県全域を中心とするせとうちエリアの交通機関、宿泊施設、観光地などの検索、予約までをひとつのアプリで一貫して行えます。
    新幹線、レンタカー、レンタサイクルなど、さまざまな交通手段を予約できるため、観光スタイルに合わせて手配できます、
    また、計画段階から旅行の終わりまで利用できるナビゲーション機能「観光ナビ」が実装されており、旅マエから旅ナカのサポートも充実しています。
  3. ことことなび
    京阪ホールディングス、京阪バス、日本ユニシスの3社は大津市と協同して、MaaSアプリ「ことことなび」をリリースしました。
    比叡山・びわ湖エリアを中心とするサービスを展開しており、2020年10月16日から12月6日にかけて実証実験を行いました。
    「ことことなび」では鉄道、バス、ケーブルカー、ロープウェイが乗り放題になる企画乗車券の販売、クーポンの配布などのサービスを行っており、交通機関の利便性を向上し、観光客の周遊促進につながることが期待されています。
    また、ウィズコロナの観光にも対応しており、アプリでは、交通機関や観光施設の混雑情報をリアルタイムで確認できます。
    また、交通機関のコロナ対策の周知や、新型コロナウイルス感染症対策を徹底している飲食店をアプリ内で紹介するなどのサービスを行っています。

観光型MaaSで観光客にとって快適な旅を
観光型MaaSは、観光地における移動手段の充実や観光関連サービスの一括化を促し、観光時の利便性向上を図ります。
もともとは観光客に快適な観光体験を提供するためのサービスとして生まれた概念でしたが、混雑状況の緩和、チケットのスマート化、事前決済により旅行中の接触や混雑を避けられるため、新型コロナウイルス対策としての一面も注目されています。
観光型MaaSはアフターコロナのインバウンド対策としても有効な施策となる可能性があります。