新たな観光の目標は「人数」より「消費額」、インバウンド消費をひとり20万円に、観光庁が「観光立国推進基本計画」の素案を提示
(トラベルボイス 2023年2月9日)
https://www.travelvoice.jp/20230209-152926
【ホッシーのつぶやき】
観光庁は、2025年までの「新たな観光立国推進基本計画の素案」を示した。具体的数値目標は下記のとおり。
・旅行消費額5兆円の早期達成を目指す
・旅行消費額単価を2019年比25%増の20万円/人
・地方部宿泊数を同10%増の1.5泊
・旅行者数は2019年水準越え
・国内旅行消費額20兆円の目標を早期達成し、2025年には22兆円
・地方部での延べ宿泊者数目標は、同5%増の3.2億人泊
観光庁サイト
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001586267.pdf
【 内 容 】
観光庁は、交通政策審議会観光分科会の第45回会合を開催し、2023年3月末までの策定を目指している2025年までの新たな観光立国推進基本計画に向けた計画素案を示した。目標については、質の向上を強調し、人数に依存しない目標を中心に設定した。また、「持続可能な観光地域づくり戦略」を大きな柱として「インバウンド回復戦略」と「国内交流拡大戦略」を進めていく。
持続可能な観光、実践する地域を100地域に
「持続可能な観光地域づくり戦略」では、観光地・観光産業の再生・高付加価値化に向けて、地域への経済効果の高い滞在型旅行の拠点である宿泊施設や観光施設のリノベーションを支援し、観光産業の収益力を向上させる。また、地球環境に配慮した旅行を推進するとともに、観光DXを進めることで事業者間・地域間のデータ連携を強化し、広域での収益最大化を目指す。
観光DXの具体的な施策としては、旅行者の利便性向上や周遊の促進、顧客予約管理システム (PMS)の導入などによる生産性の向上、マーケティング(CRM)やデータ・マネージメント・プラットフォーム(DMP)の活用による観光地経営の高度化、観光デジタル人材の育成・活用を挙げた。
そのうえで、2025年までの目標として、「日本版持続可 能な観光ガイドライン」(JSTS-D)に沿った持続可能な観光に取り組む地域を現在の12地域から100地域に増やすことを掲げた。
インバウンド回復へ、2つの新指標
「インバウンド回復戦略」では、日本各地の魅力を全世界にアピールするとともに、高付加価値旅行者の地方誘客、消費額の拡大に向けた高付加価値なコンテンツの充実、地方直行便の増便や大都市から地方への周遊円滑化、IR整備の推進に取り組む。
数値目標としては、旅行消費額5兆円の早期達成を目指す。また、新たな指標として、旅行消費額単価を2019年比25%増の20万円/人、一人当たりの地方部宿泊数を同10%増の1.5泊に設定。国際会議の開催件数についてはアジア最大の開催国を目指す。旅行者数については2019年水準越えとするにとどめた。
国内交流拡大戦略、2030年の22兆円目標を前倒し
「国内交流拡大戦略」では、人口減少の影響は避けられないなか、地域のコンテンツの充実や魅力の向上、休暇取得の促進などによって、国民の観光旅行の実施率向上や滞在長期化を図っていくほか、旅行需要の平準化や地域の関係人口拡大にもつながる形で交流需要の拡大を進めていく。
そのうえで、国内旅行消費額20兆円の目標を早期に達成し、2025年には2030年の目標を前倒しし22兆円を目指す。また、地方部での延べ宿泊者数の目標は、同5%増の3.2億人泊と設定した。
アウトバウンド、インバウンドとの相乗効果と位置付け
日本人の海外旅行(アウトバウンド)については、インバウンドと相乗効果を上げる施策として位置付け、日本人の国際感覚や異文化理解力を育む意義を踏まえ、若者の海外旅行や海外留学の促進などにより、その復活に向けて取り組んでいく。2025年の日本人海外旅行者数は2019年水準(2008万人)越えを目標とした。
3月の次回会合で計画案を提示へ
今回の議論では、計画素案について、委員からは概ね好意的な意見が寄せられたが、「インバウンド誘致に向けた空港と観光との関係性を高めていくこと」「宿泊施設の整備だけでなく、周辺産業へも高付加価値化となるような支援」「双方向交流の点からアウトバウンドに関する記載が少ないのはパランスが悪い」「持続可能な観光地域づくりの目標が、単なるJSTS-Dロゴマークの取得に終わらないことが大切」などの意見も聞かれた。
観光庁は、新たな観光立国推進基本計画の策定に向けて、3月の第46回会合で計画案を提示したのち、3月末での閣議決定を目指す。