訪日客を取り込む、阪急阪神百貨店が「WeChat Pay」に注力する理由とは?
(マイナビニュース 2019年7月19日)
https://news.mynavi.jp/article/20190719-862205/

阪急梅田本店は、訪日外国人の免税売上310億円のうち8割が中国本土の訪日客だ。
QRコード決済「WeChat Pay」も2017年から試験導入、全国14店舗のうち9店舗に導入する。
メッセージ機能の「WeChat」は、中国で月間11億人が利用し、その基盤上の「WeChat Pay」は月間8億人が利用するという。
アリババグループの「AliPay」同様に、巨大SNS上で展開する決済は全てを飲み込む勢いだ!

【ポイント】
中国のQRコード決済の2強のひとつがテンセントの「WeChat Pay」だ。
訪日外国人の増加が続く中、インバウンド需要を見込んで導入する企業が急増しているという。

その中でも阪急阪神百貨店は、WeChat Payの活用に積極的だ。
梅田の阪急本店は、訪日外国人による免税売上310億円のうち、8割を中国本土の訪日客が占めている。
その買い物体験を向上させるべく、2017年から試験的に導入してきたのが「WeChat Pay」だ。
現在では全国14店舗のうち、食料品中心の小型店などを除いた9店舗に導入する。
決済以外にも、WeChatを活用したマーケティングを展開しており、中国国外で初めて「旗艦百貨店」の認定を受けている。

LINEのようなメッセージングアプリであるWeChatは、中国で月間11億人が利用する。
そのユーザー基盤の上にWeChat Pay(月間8億人が利用)などのサービスを展開している。

WeChatのアプリ内には「ミニプログラム」と呼ばれるアプリ内アプリの仕組みがある。
WeChatのアプリから阪急阪神百貨店の機能を呼び出し、テーブルオーダーや店舗案内、VIP客向けの会員カードを利用できるのだ。
阪急阪神百貨店のレストランでは、WeChat Payを利用したテーブルオーダーの導入を進めている。
テーブルごとに置かれたQRコードをアプリで読み取ると、メニューの説明や原材料を中国語で確認できる。アプリ上で注文と決済もできるため、店員にとっても接客の手間が減り好評だという。

店舗内のガイドマップもWeChatのミニプログラムで提供し、自分のスマホで調べられる。
VIP客に配っている会員カードは中国に置いてきてしまう客が多いことから、WeChatのアプリに登録できる電子化を導入した。
3万5000人のフォロワーを持つ阪急阪神百貨店のWeChat公式アカウントを通して、リピーターを獲得していくことが狙いといえる。

WeChatを利用した化粧品の事前注文も開始した。
中国では越境ECの規制があることから、家族や友人から買い物を頼まれることが多いという。
事前注文なら専用カウンターで素早く受け取れるため、余った時間に別のショッピングや観光を楽しめるというわけだ。

中国の経済成長は鈍化しているが、阪急阪神百貨店の荒木直也社長は、「一時的に消費は落ち着いているが、中国市場は巨大だ。長期的な視点で情報発信や利便性向上に取り組みたい」と語った。

テンセント側は阪急阪神百貨店での買い物に40中国元の割引クーポンを提供するなど、日本市場の開拓を加速している。日本でWeChat Payを導入した企業は2019年6月までに前年同期比で665%という。