ホテル中央グループ代表取締役社長 山田 英範 様 (平成31年4月8日)

山田さんは大学時代、バックパッカーとして訪れたタイ・バンコクのカオサンで人生が変わったといいます。その後、オーストラリアにも1年8ヶ月留学し、2005年から父が経営する簡易宿泊所の仕事に就きます。

かつての新今宮は“日雇い労働者の街”として繁栄していました。バブル崩壊後、労働者が減少、生活保護者の街に変貌、200件あった簡易宿泊所組合員も約60件に減ってしまいます。これまでの日雇い労働者の職安機能を持つ“労働センター”も、携帯電話の登場で、仕事を探す方法が変わり、若者が寄り付かなくなったといいます。
労働者は高齢化し、店舗のシャッターが閉まり、活気のない街に変貌します。

そのような時、東京のアメフトの学生が安宿を探しており、1500円の宿泊費に喜び、簡易宿泊所の新しい活用法のヒントをつかみます。インターネットが登場した時代でしたが、日本語のホームページをいち早く開設したところ、日本人ビジネスマンが宿泊するようになり、日本語が分かる韓国や台湾の若者が利用するようになり、ホームページの多言語化にも取り組まれます。
新今宮の魅力は何と言っても交通アクセスが良いことです。そして新今宮に宿泊するのは団体旅行者ではなく個人旅行者でした。

このような時、帰国した山田さんは、「新今宮に活気を取り戻すため」には外国人を増やすことだと気付き、簡易宿泊所でインバウンドに取り組む「OIG委員会」に参加。阪南大学の松村先生と出会います。外国人向けパンフレット作成や、ホームページの作成、外国人旅行者アンケートと活動されます。2004年のホテル中央グループの外国人宿泊者は1万泊弱でしたが、2007年には5万泊にも増えたといいます。

また数年前まで、旅行誌「ロンリープラネット」を抱えて旅をする人がほとんどでしたが、最近は見ないといいます。スマホの普及が旅行形態を変え、ネット予約を増やしました。ネットで宿泊場所を探す人は“点数”と“レビュー”を見ます。この評価をいかに高めるか。それは「接客が一番」です。設備が良くても、たった一度の接客で最低の評価も受ける場合もあるといいます。
地道な努力の結果、2013年にトリップアドバイザーのベストバリューで4位にランクします。

2000年後半には、外国人が8割、日本人が2割という時代を迎えます。しかし2009年、リーマンショックで為替が80円に急騰し、外国人旅行者が激減します。また2011年、東日本大震災・福島原発問題でも外国人旅行者が急減します。昨年の台風で関空が閉鎖された時も大きく減少しました。
来阪外国人は2013年から急増していますが、ホテル経営のリスクヘッジを考えると、外国人旅行者に偏るのは良くありません。ホテル中央グループでは外国人50%、日本人50%の比率を貫いているといいます。

今、新今宮が大きく変わろうとしています。「星野リゾートのホテル建設」も今年着工し、2022年に開業されます。外国人向け職業施設「グローバルハブ恵美」も今年できます。また「なにわ筋線」も2020年に着工し、2030年ごろに開業されます。

かつて“労働者の町”だった新今宮。バックパッカーを中心に多くの外国人観光客が利用している新今宮。様々なインバウンドの取り組みにより“旅行者の町”に変貌させた歴史を持ちます。

かつて、タイ・バンコクのカオサンで感じた「活気とエネルギーが溢れる街」を、新今宮に創るべくこれからも努力したいと講演を締めくくられました。