大阪の食文化、海外発信強化 観光局と大商が新組織設立へ(産経新聞 2020年1月5日)https://www.sankei.com/west/news/200105/wst2001050015-n1.html

大阪観光局と大商が、高級料理を含む多彩な食をアピールする「食創造都市 大阪推進機構」を1月下旬にも発足させる。辻調理師専門学校らもアドバイザーを務める。粉もんに代表される廉価な食事が大阪の魅力の一つではあるが、割烹やミシュラン獲得店にも外国人が来て欲しい。万博シンポでも強く語られたが、日本人が減少していくなかで、外国人にお金を使ってもらう経済を真剣に考えないといけない。

【ポイント】2025年大阪・関西万博の開催を見据え、「食いだおれ」の街としてのブランド力を国際的に高めようと、大阪観光局と大阪商工会議所が、高級料理を含む多彩な食をアピールする新組織を1月下旬にも発足させる。海外の有名シェフと地元の料理人がタッグを組むレストランの誘致や、影響力のある美食家とのネットワーク作りを目指し、「粉もん」だけではない大阪の食文化を広く海外に発信する。
設立されるのは「食創造都市 大阪推進機構」。溝畑氏と大商の尾崎裕会頭が共同代表を務め、辻調理師専門学校(大阪市)の辻芳樹校長らがアドバイザーとして参加する。

粉もんは手ごろな価格帯が魅力の一つ。訪日外国人(インバウンド)をターゲットにした観光戦略の観点に立つと、その安さゆえに全体の消費額が伸びない。
「大阪の食は質が高い割に、安ければ安いほどいいという意識があり収益性が低い。食のブランド化を図り、世界での認知度を向上させたい」。観光局の溝畑宏理事長は新組織への期待感をこう語った。

観光局によると、平成30年に大阪を訪れた外国人客約4千人に大阪で食べたものを聞いたところ、「ラーメン」(77%)「たこ焼き」(58%)、「うどん・そば」(41%)が上位に入る一方、割烹(かっぽう)やミシュランで星を獲得した店で飲食した人は3%以下だった。
クレジットカード大手マスターカードの調査では、同年に外国人客が大阪のレストランで支払った食事代は平均131ドル(約1万4150円)。これに対しニューヨークは284ドル(約3万680円)、東京は202ドル(約2万1820円)と、他の主要都市と比べても低い。

こうした状況を踏まえて設立される新組織。大商の担当者は「発信力のある著名なシェフや美食家とネットワークを構築することで海外の富裕層に大阪の食をPRしたい」と意気込む。

もちろん大阪にも富裕層が訪れる店は少なくない。
「少子化で人口が減るのは分かっていた。国内だけでなく、海外からもお客さんを呼んでこないと」と語るのは、大阪市西区のレストラン「HAJIME(ハジメ)」のオーナーシェフ、米田肇さん(47)。平成20年にフランス料理店として店をオープンさせたときから、高価格帯の店を利用する海外の客もターゲットにしていた。当初は日本人客ばかりだったが、翌年にミシュランガイドで三つ星を獲得すると欧米の客が増加。25年にアジアのベストレストラン50に選ばれると、アジア圏の客も押し寄せた。
現在は、宇宙や地球をテーマに独創的な料理を提供する。4万円以上のコースがメインだが、予約は常にいっぱい。その6割以上は海外の富裕層だ。
客の多くはインターネットで情報を得る。「世界の名店は発信力が高い。日本はその点では遅れている」

富裕層をターゲットにビジネスを展開する「GOYOH」(東京)は特別な食の体験ができるサービスを提供している。会員制で、一度の食事代は数万~数百万円。ミシュランで星を獲得した2つのレストランがゲストのためだけにコラボレーションしたり、高級料亭の食事会に京友禅の着物の着付けと著名カメラマンによる撮影会を組み合わせたりと、豪華な企画を提供してきた。
同社の担当者は「大阪は多くのグルメがあり、海外に比べて値段も手頃」と評価するが、「海外の富裕層へアピールするには食事の提供だけでなく、エンターテインメントや文化的要素を加えた『大阪だけの特別な食体験』が鍵となる」と話す。