『トワイライトエクスプレス』が運行開始から25周年を迎えたが、来年の春には廃止されるという。これで大阪駅を通る寝台特急は、東京〜高松・出雲間の「サンライズ瀬戸」と「サンライズ出雲」のみになってしまう。私達の年代は、『ブルートレイン』と呼ばれる青色の寝台特急は憧れの的だった。 かつての寝台特急は、特急というスピードと、早朝に到着するという機能性、快適な空間という三拍子がそろっていたが、今や、「早さ」においても、「料金」においても、快適さとしての「宿泊」においても凌駕するサービスがでており、ビジネスで利用されることが無くなった。 しかし『トワイライトエクスプレス』の利用客の大半は観光客である。個室寝台はいつも満室が続いていたという。にもかかわらず廃止する理由は、来春、北陸新幹線が長野から金沢まで開通し、平行する在来線が第三セクターに移管され、この在来線を走行する場合、JRは第三セクターに使用料を支払わねばならない。また、2016年春に北海道新幹線の新青森から新函館北斗間が開通し、青函トンネルでの深夜運行が線路点検時間帯になってしまうからだという。 昨年10月にJR九州が運行を開始した『ななつ星』は、7両編成の客車に14部屋で定員は30人。料金は長崎・阿蘇・湯布院を観光する1泊2日コースが18万円から。湯布院・宮崎・霧島・阿蘇を観光する3泊4日コースが43万円からという高額設定であるにも関わらず、予約が殺到しているという。 寝台特急を利用する理由が、「移動手段」から「観光」に大きく変わったのだ。 JR西日本もJR東日本も2017年には『ななつ星』のような豪華クルーズトレインを運行する予定だという。観光に特化したクルーズトレインの発想は正しいと思う。しかし、車両が新しくなり、特別な食事やサービスが提供されるだけでは、この計画は頓挫する。「観光」は、非日常のなかで、特別なサプライズが用意されなければならない。当然、車窓から見る景色が最も重要である。『ななつ星』のような満足感のあるプランが提供されることを切に願いたいと思う。