(平成28年11月10日) 参加者数:44名

観光カリスマで、有馬温泉 御所坊の主人、有馬温泉観光協会長の金井啓修様。
先日、経済産業省のDMO先進地視察でスイスのツェルマットを訪れた話題も取り入れ、東京オリンピックまでに“有馬温泉を日本一の温泉地にしたい”との野望について語っていただきました。
 
1、有馬温泉は日本一になれるか?
有馬温泉は古事記に出てくる希少な温泉。古いことと歴史があるとは違う。有馬温泉には歴史の話が多数ある。舒明天皇(じょめいてんのう)(593年)の頃の話だが、舒明天皇といっても誰も分からない。分かりやすい物語が必要だと思っている。
有馬には火山が無いが、200mの所から98度の湯が出てくる地質学的にも希少な温泉だ。
 
2、有馬のインバウンドは台湾から
台湾に「哈日族(ハーリー族)」と呼ばれる、日本が好きでたまらない若者たちがいる。
peachもアジアの人が“桃”が好きだから“peach”と命名した。「KANO」という映画がある。日本統治時代の台湾、嘉義(かのう)農林学校の監督として迎えられた日本人の近藤兵太郎によるスパルタ式訓練により、甲子園球場で行われた全国中等学校野球大会で準優勝する。2014年の台湾で最もヒットした映画。今も、甲子園ミュージアムを訪ねる台湾人が多い。
有馬に「KANO」の主役二人に来てもらった。有名ブロガーに来てもらう取り組みも多いが、台湾をターゲットに選ぶなら、このような取り組みのほうが効果が高い。
台湾を訪問して驚いた。商品のパッケージがダサい。中華系の人は“パッケージをきれいにすると中身が良くない”と感じるという。有馬でも“手ぶら観光”に取り組んだが、荷物を他人が運搬するのを信用できなくて失敗した。学んだことは“中華系の人は人を信用しない”ということ。
赤色も、日本人が好む赤色、韓国の赤色、中華系の赤色と違う。このようなことも合わせて外国人目線で見ることが大切になる。
 
3、三次交通について
富山の光岡自動車が製作しているトライクという100kgまで積載する2人乗り電気自動車。1台160万円。月3万円程度のレンタルなら1時間千円程度で貸し出すことも可能と考えて、4人乗れるように改造し採用した。超小型モビリティより効率的だ。すると他の旅館も欲しいということで6台購入。LOTAS CLLBのメンバー資格を取り、保険料80%offにもなった。
有馬のように道の狭い所の三次交通に適したコンパクトカーを自ら開発する意気込みで、陸運局とも交渉して、トライク運行にこぎつけた。
 
4、山椒は小粒でピリリと辛い 
有馬の料理といえば山椒を使った料理だった。しかし、かつて生育されていた有馬山椒が地域から消えていた。「有馬山椒を復活させよう」と活動し、有500本に増やした。
絶滅危惧種を復活させて登録し、プレシディア(特別な場所)と認定されると、プレシディアを使用したメニューが開発され、スローフードインターナショナルに登録される仕組みがある。有馬山椒はこのプレシディアに認定されたことにより、ステータスにしていくことができる。
各地で伝統野菜の復活に取り組んでいるが、このように戦略を持って、プレシディアに登録する取り組めばよい。
 
5、DMO
スイスのツェルマットには170万人の観光客が訪れており、有馬と同規模になる。
ツェルマットのDMOを訪問して驚いた。宿泊税の7億円をDMOの合議で観光開発に使っている。7億円あればロープウェイでも何でも建設できる。
また支配人クラスでフェラーリーに乗っている。48室程度のホテルでシーズン中の従業員は21人、オフシーズンは18人という。有馬で同規模のホテルなら従業員は100人。提供するサービス、オペレーションが違う。日本の宿泊施設もサービスを効率化しなければならない。
人を教育するのに時間がかかるが、スイスはマイスター制をとっており、ホテルであれば3年以上の経験を積んで1段階の認定を得る。何段階かの経験を積み、さらにマネージメントを学ぶ学校を経て支配人になる。このようなマイスターの制度も学ぶところがある。
 
懇親会では、関西の観光のキーマンを集めた『有馬の湯の談合』を開催しようとの密議も飛び出しました!