旅行者意識の6カ国比較調査からインバウンド復活時のヒントを探る、非接触決済からクチコミの変化まで -トラベルボイスLIVEレポート
(トラベルボイス 2020年8月5日)
https://www.travelvoice.jp/20200805-146787

新型コロナへの懸念の意識は、「非常に心配している」が下がる傾向にあり、国内観光の意識は増加傾向で、「自宅から90分以内」の近場観光が41%になった。
各国とも「旅行中の人混みをさけること」がトップとなり、新型コロナの影響が見て取れる。
少人数のプライベートツアーも、日本は「知っている人と行く」が92%で、「知らない人と行く」は9%に減るが、海外では20%~30%あるといい、「知らない人とのコミュニケーションも体験の一部」と考える傾向もあるという。
「非接触決済」も普及したように見えるが、この調査では、日本13%、イギリス51%、シンガポール66%などと高く、「非接触チェックイン/アウト」は、日本26%に対し、他国は50%以上あることから、将来のインバウンド需要を考えると、さらなるひっ接触のデジタル化の普及が求められる。

【ポイント】
新型コロナウイルスは世界中で感染拡大を続けており、6月中旬から国境閉鎖を緩和してきたヨーロッパでは、再び自由な旅行を制限する動きが出てきた。
日本でも、インバウンド市場の回復への道筋は依然として闇の中だ。一方、国内旅行は東京外しで「GoToトラベル」が7月下旬に開始し、人は動き始めた。

トリップアドバイザーは、4月に続き6月も、日本、アメリカ、イギリス、シンガポール、オーストラリア、イタリアの6カ国で、「旅行」に求めるポイント、コロナ禍での意識調査を実施。7月下旬の「トラベルボイスLIVEオンライン版」で、同社代表取締役の牧野友衛氏を迎え、国内旅行で求められること、将来のインバウンド市場復活に向けて今できること探った。

牧野氏は「6カ国で共通する部分もあるが、国ごとに異なる傾向もある」と説明。
それぞれの傾向を今後のインバウンドの復活や国内旅行の需要喚起に向けたヒントにして欲しいと呼びかけた。

国内旅行の意向は積極的な態度に変化
今年6月、日本人の国内旅行の回復については、「3ヶ月以内」が前回の12%から24%に増加、「半年以内」も34%から50%に増えたことから、「積極的な態度に変化している」と分析。一方、海外旅行については、依然として85%が「1年以上見合わせる」と回答。前回の87%とほぼ変わらなかった。

日本人に「次回旅行に行くとしたら」との問いでは、前回と比較して「国内線を利用」(12%)のみが減少。「自宅から90分以内」が7ポイント増えて41%、「ステイケーション」も6ポイント増えて23%となった。「地方自治体が独自に展開した需要喚起キャンペーンが大きいのではないか」と分析。トリップアドバイザーの検索動向でも、東京では「箱根」「熱海」「草津」などが増えている。
日本人は、「次の旅行を計画する際、これまで以上に念入りに調べる」と回答しており、「観光地、DMO、旅行会社は、旅行者が必要とする情報を発信できるかが大事になる」と指摘した。

インバウンドでは国立公園の訴求も
インバウンド市場では、「次に旅行に行くとしたら」に、5カ国とも国内旅行が最も多い。
アメリカ、オーストラリア、シンガポールでは、「5時間以上の長距離海外」の割合が前回より下がった。自国での感染の再拡大が背景にあると見られる。
海外旅行再開のタイミングは、「1年未満」が最も高いのがイタリア。「1年以上先」ではアメリカ(55%)、オーストラリア(62%)が多い割合となった。
各国とも「アウトドア/自然を楽しむ旅行が増える」が30%~50%を占めてており。「アフターコロナのインバウンド市場では、国立公園などの訴求も大事になる」との見解を示した。

日本以外で「非接触決済」を求める割合は40%以上
ウィズコロナでの「新しい生活様式」については、日本では「外出中のソーシャルディスタンスの確保」が、4月の60%から70%に上昇しトップ、「屋外でのマスク着用」が61%で続いた。
屋内施設や交通機関でのマスク着用の義務化が世界的に広がっているが、その意識は国によって異なる。オーストラリアでは、屋外、屋内とも20%台と、他の5カ国と比較してかなり低い。
「旅行先を決める上で重視すること」は、各国とも「旅行中の人混みをさけること」がトップになり、「3密回避対策の説明や観光施設の混雑状況の告知が重要」とし、平日の誘客に力を入れる必要性にも触れた。また、各国とも「地域で公衆衛生に取り組んでいること」を重視する割合も高くなっている点も挙げた。

日本との違いが顕著なのが「最新設備のある病院へのアクセス」。日本は20%ほどだが、他5カ国ではすべて50%を超える。「非接触決済の普及」も日本は13%だが、イギリス51%、シンガポール66%など他5カ国はいずれも40%を超えた。
「安全性という文脈で、日本でも非接触への取り組むべき」との考えを示した。
「次回の旅行で使用する可能性の高いサービス」については、6カ国とも「旅行中断を補償する旅行保険」がトップ。「キャンセル規約の検索」もすべて30%以上となっており、先が見通せない状況が続くと予想されることから、柔軟な対応を求める旅行者が多いことも分かった。

「知らない人と行くツアー」で日本と他国で大きな差
「宿泊施設を決める上で重要なこと」として、宿泊施設の安全安心対策を求める声は、日本よりも他国の方が高かった。「宿泊施設は、安全安心対策についての情報発信とともに、クチコミに対するコミュニケーションにも気を配るべき」と助言した。
現地体験やアクティビティで「魅力に感じるもの」の調査では、日本では「知っている人と行く少人数のプライベートツアー」が92%と、他国よりも飛び抜けて高い。一方、「知らない人と行く少人数のプライベートツアー」は日本は最も低い9%。海外の20%~30%と大きな差が出た。「海外では、知らない人とのコミュニケーションも体験の一部として考えている」と指摘した。

コロナ禍で増えているパーチャル体験については、海外は20%前後だが、日本は7%と最低。
「日本はこれから増えてくるのではないか。将来のリアル旅行の有効な手段」との考えを示した。

クチコミへの能動的なコミュニケーション
デジタル化についてライブアンケートを実施した結果、「今回を契機にデジタルシフトが進んだ」が55%にのぼり、旅行先の決定で重視するのに「混雑状況を知りたい」が、日本より他国の方が高く、「ここにデジタルのニーズがあるのではないか」と指摘。ライブストリーミングで混雑具合を知らせるアイデアを披露した。
「非接触チェックイン/アウト」について、日本は26%だが、他国は50%以上であることからも「デジタルの役割は大きい」との考えを示した。
不確実性の時代、旅行者の信頼を得るため、旅行者とのコミュニケーションがますます重要になってくる。「消費者は、施設の発信する情報よりも、クチコミを信じる傾向がある」と指摘。
旅行者の実体験の方が説得力があることから「安心して滞在できたことを書いもらうことが大切」と付け加えた。
「海外では旅行者にクチコミを書いてもらえるようにさまざまな工夫をしているが、日本ではまだ少ない」と、クチコミの能動的な活用を勧めた。

※編集部注: この記事は、2020年7月20日の実施回をまとめたものです。