在日外国人に聞く、ビ―ガンの受入れにはライフスタイルや理念への理解が欠かせない(後編)(やまとごころ 2019年10月18日)https://www.yamatogokoro.jp/report/34917/

急速にビーガン食への関心が高まっている。しかしビジネス視点が強すぎて、動物の命の尊重する考え、食の安全、環境問題を前提とした理解には欠けているという。狂牛病が発覚してから、乳製品、卵もやめ、代替品としてミルクを豆乳やアーモンドミルクなどを利用するようになり、さらにウール、シルク、革製品も使用しなくなったそうだ。ビーガンは、環境問題に敏感な若いミレニアル世代が増えている。背景には、動物福祉や自然環境問題の映像がYouTubeで拡散していると指摘されている。

【ポイント】前編では、欧米を中心に若い世代に急速に広まっているビーガン市場についてお伝えした。日本では、まだまだビーガン料理を提供している飲食店は少ないが、確実にニーズは高まっている。

「東京ビーガングルメ祭」が東京都江東区の木場公園で開催された。多くの在住外国人を含め、ビーガン食の人やビーガン食に興味のある人が集まった。55店のブースでビーガン食を楽しめた。大豆ミートを使った焼きそば、カキフライのような味の舞茸を使った料理、野菜だけでつくった押し寿司など、実に多彩である。玄米のアイスクリームも好評だった。全国のビーガン関連のお店が一同に介したイベントだった。
東京都内でビーガン料理のお店が集中したエリアが西荻窪界隈だ。もともとオーガニック系のレストランや店が多く、その流れがあるという。外国人向けのビーガンマップも存在しており、マップを製作したのは西荻窪に暮らすイギリス人のイアン・ジャクソンさんと奥さまのミナコ・ジャクソンさん夫妻で、いずれもビーガンだ。
イアンさんはリバプール出身の67歳、ベジタリアンとして20年、さらにビーガンとして20年の筋金いり。西荻窪のフレンドリーなところが好きになり、長期滞在をして、移住となったという。
ビーガンマップを作ろうと西荻窪界隈のビーガン店をリサーチしたところ、ベジタリアン向けのお店も含めると多いことが分かってきた。店主に相談すればビーガンメニューを作ってくれる店も出てきた。オーナーさんたちがチャレンジしてくれた。さらにビーガンに優しいお店は、ビーガンフレンドリー店として掲載した。
イアンさんがビーガンになったのは動物愛護からきているそうだ。ベジタリアンの時から動物の命の尊重するエシカルな考えが主な理由だったが、酪農問題、特に狂牛病の問題が発覚してからは、乳製品、卵もやめたのだ。代替品としてミルクを豆乳やアーモンドミルクなどを利用している。さらにはウール、シルク、革製品も使用しない。人間の合理性のために動物が虐げられているのが許せないと憤る。動物虐待に加担したくないという意思表明でもあり、ライフスタイルだという。

年々、ビーガン商品は手に入りやすくなった。特に環境問題に敏感な若いミレニアル世代が増えた。その背景には、YouTubeによる映像の拡散がある。そこに映る動物福祉の問題、自然環境の問題が共感を生み、欧米の若者を中心に意識が変わってきている。一方、年配の方々は、やはり食生活を急に変えるのは難しいという。

このようなムーブメントは、食品業界にも変化をもたらし、ビヨンドミートという大豆やエンドウ豆などを主原料として植物だけを使用した肉が、普通の欧米のスーパーで売られるようになった。またビーガン向けの冷凍食品、ビーガンバーガー、植物性ミルクなどの食品も、スーパーのプライベートブランドとして販売されている。普通のレストランにもビーガンメニューが増えた。マイクロソフトのビル・ゲイツや、俳優のレオナルド・ディカプリオも代替食への投資をするなど、世界的な潮流になっている。 

今後、ビーガンの外国人観光客や国内の実践者向けに、ビーガンマークがあると一目で分かると提言する。原材料表示では外国人には分かりにくい。今年になって急速にビーガン食への関心が、レストラン業界や食品業界で高まっているが、ビジネス視点が強すぎて、食の安全性、健康食、環境への配慮などがビーガンが世界の流れであり、ビーガンの食材をそろえれば良いという問題でもないという。

ビーガンが日本で盛り上がるのは嬉しいが、動物愛護や環境問題が前提とした理念にも理解・関心を持ってもらいたいという。ビーガンという世界的な潮流に乗り遅れないようにと、真似ばかりしても、魂入れずでは、本末転倒のことにもなりかねない。ビーガンになるかどうかは別として、それを理解したうえで共感したいものだ。