アフターコロナの観光・インバウンドを考えるVol.9
「加速する食の多様性 〜地域・観光事業者が今すぐやるべきこと〜」
(やまとごころ 2020年6月19日)
https://www.yamatogokoro.jp/column/inbound-seminarreport/38847/

ベジタリアンやハラールなど食の多様性についてこのレポートは必見です。(長いですが…)
ベジタリアンは、1位インド28%、2位台湾14%、3位ドイツ10%、4位カナダ9%、日本は4%480万人だと観光庁が発表しています。台湾の14%には驚きです。
多様な食に対応するには、ベジタリアンに対応するのをベースに、イスラム教などの宗教を重ね合わせて、使用できない食材、使用しても良い食材を考えると理解しやすい。(下記の表を参照)
訪日客のうちイスラム教徒は100万人、ベジタリアンは149~190万人だそうです。日本のベジタリアンも480万人いることから、『世界の誰もが食べられる食材、調理法』で料理を提供することが、日本人にも、ハラールなど宗教上の理由を持つ人にとっても、適しているとの話でした。

【ポイント】
インバウンドの増加により、ベジタリアンやハラールなど食の多様性に対応する飲食店が増えつつある。食の多様性を踏まえた事業を展開する専門家、フードダイバーシティ株式会社・代表取締役の守護彰浩氏とフリーフロム株式会社代表の山崎寛斗氏を迎えて、世界の食の潮流を読み解いた。

参考:台湾から訪日するベジタリアンは想定60万人!台湾で訪日ベジタリアンガイドブックを制作する山崎氏の挑戦
https://www.yamatogokoro.jp/inbound_interview/35431/

1)マクロな情報から「世界の食の多様性」を知る
村山:ベジタリアン、ハラールといった食事について、その違いについて大まかに教えてください。
守護:食の多様性は「アレルギー」「食の禁忌」「好き嫌い」の3つに分類するとわかりやすいです。
なかでも食の禁忌は、イスラム教のハラールのように「宗教」を理由とするものと、ベジタリアンのように「動物愛護や健康志向」といった主義によるものなど多岐に渡ります。
例えば、グルテンフリーの場合、アレルギーでなる人もいますが、主義でなる人もいます。
食の多様性といっても、その理由はさまざまだという認識を持っておくとよいと思います。

多岐に渡るベジタリアンの背景 欧米では主義、東洋では宗教
村山;飲食店からは、何から始めればいいのかわからないという声が多いのですが。
守護:ベジタリアンをベースに考えてみると着手しやすいと思います。ベジタリアン食を作る際に卵を避ければヒンドゥー教の多くに対応できますし、根菜類を避ければジャイナ教にも対応できます。逆にハラール肉と魚介をプラスして、みりんや料理酒等のアルコール成分の調味料を避ければ、イスラム教にも対応できます。
 

村山:ベジタリアンの比率が多い国はどこですか。
守護:欧米よりも東洋のほうがベジタリアンは多い。観光庁調査によると、1位インドで28%、2位台湾で14%、3位ドイツで10%、4位カナダの9%となっています。日本は約4%480万人がベジタリアンと言われています。
村山:台湾が多いことに驚きました。
山崎:台湾には仏教徒が多く、人口の約14%がベジタリアンだと言われています。台湾の仏教徒は「五葷(ごくん)の野菜」と呼ばれる匂いが強い根菜類(ネギ、にんにく、にら、らっきょう、あさつき)を使わない素食を食べます。街中の飲食店の看板をよく見てみると、ベジタリアン食を意味する「素食」が表記されている店が多いです。
ベジタリアンになる理由として、欧米は環境問題、動物愛護などの主義が多く、アジア圏では圧倒的に宗教が多いという傾向があります。

村山:次に、それぞれの市場規模について教えてください。
守護:イスラム教徒は世界で18億人いて、訪日インバウンド市場においては100万人と言われています。一方、ベジタリアン人口は2018年には6.3億人にのぼり、訪日インバウンドにおいては149~190万人と推計されます。
ただ、単純に対象者数だけでは図れない部分があります。例えば20名の団体客のうち、ベジタリアンが一人でもいれば、対応食がある店を選びます。つまり、たった一人の対象客が残りの19人を連れてやってくるわけです。その経済効果は大きく、飲食店において食の多様性に対応する価値が充分にあります。
山崎:最近は公にはしない「隠れベジタリアン」、週1回だけの「ゆるベジタリアン」が日本を含む世界各地で増えており、潜在的な客は相当数いると推測されます。

2)アフターコロナにおける食の変化
村山:アフターコロナにおいて食へのニーズで大きな変化はありますか。
守護:世界中でコロナ太りと野菜不足が顕著です。日本においてもコロナ太りを感じている人が57%いました。実際、4月のマクドナルドの売上は前年比107%、5月は115%と伸びています。ファストフード業界の売上はコロナ下においても減っていません。健康不安から少しでも野菜を摂取しようと、1月~4月期の野菜ジュースの売上も前年比を上回りました。
山崎:アメリカでも健康志向の高まりから、プラントベースミート(植物性の肉)の4月の売上が1週間で200%増、昨年対比で265%増になりました。
世界最大規模のベジタリアン・レストラン検索サービスであるHappy Cow上で、世界一のヴィーガンレストランとして支持を集める自由が丘の「菜道」では、コロナショック以降、ヘルシーな野菜料理を求め、ベジタリアンではない新規客が一気に増えたそうです。しかし、食べる量を減らしたいわけではないので、食べ応えのある和食でベジタリアンアレンジされたものが好評だったようです。

ベジタリアンやヴィーガンの動きが世界中で活発化
守護:ベジタリアン=サラダは日本だけの捉え方で、世界では全く通用しない常識です。見た目も味も本物の肉と遜色ないプラントベースミートを使ったりすることでメニューの幅も広がっています。食においてはいま、コロナ太り特需のような形でヘルシーなベジタリアン食に世界中から注目が集まっています。

3)地域・観光事業者が今やるべきこと
村山:コロナ禍で食の多様性に対して地域や事業者が今できることは何でしょうか。
守護:まずは国内500万人と言われるベジタリアンをどう集客するかだと思います。
飲食店やホテル、物販でもベジタリアンをはじめとする食のニーズの多様性について学び、対応していくことで、日本人需要だけでなく、その先のインバウンド需要も取り込める可能性があります。
山崎:飲食店やホテル事業者と実際に話をしてみると、ベジタリアン食、ハラール食を外国人向けの「特別食」と捉え、対応を後回しにしてしまう傾向が強くあります。しかし、目の前の国内市場においてもコロナ太り・野菜不足特需として一般消費者のなかでもベジタリアン食を求めるニーズは高いです。
国内ニーズをうまく取り込み、後々インバウンド客が戻ってきたときに、同じベジタリアン食を提供すれば効率的です。

既存メニューが「実はハラール」「実はヴィーガン」
村山:経営的に厳しい飲食店事業者にとって、食の多様性に対応する手間やコストを省ける方法はありますか。
守護:手間やコストを考えた場合、メニュー開発の方法として3つのパターンがあります。
1つ目が既存メニューの中で、ハラール、ヴィーガン対応できるメニューを見つけるというパターン、
2つ目が既存のメニューとは別に特別食を開発するパターン、
3つ目が特別食は外部調達するパターンです。
実際にはパターン2から始める店が多いのですが、手間もコストも増えてしまいます。お店の負荷が一番少ないのは、パターン1です。実績が出るお店はパターン1が多いです。
村山:特別食だと気付かずに、一般消費者も食べているということですね。
山崎:京都御所にあるうどん屋は、既存メニューにハラール対応やベジタリアン対応のマークだけ付けています。あまり大々的に表記してしまうと、該当しない一般の日本人が注文を避けてしまうリスクがあるので、必要な人にだけ伝わればいいというスタンスで、マーク表記にしているのでしょう。
守護:プリンも卵を使っていないものを「ヴィーガン用プリン」と謳うのではなく、「植物生まれのプリン」として売り出している例があります。
最近の食品メーカーは一般消費者も取り込めるように、ヴィーガン食を開発することに注力しています。

誰もが食べられる世界標準の料理で多くの客層を取り込む
守護:ホテル事業者は感染予防のためビュッフェを休止するところが多く、代わりにお弁当でどうやって特別食に対応するかが課題となっています。ビュッフェであれば客本人が食べる料理を取捨選択できますが、お弁当ではそうはいきません。かといって特別食対応の食事が用意できなければ、そもそも宿泊先として選んでもらえません。
お弁当メニューの開発が急務ですが、弁当の種類を増やすよりも、誰もが食べられる調理方法で作っておくと無駄がありません。ヴィーガン(卵・乳製品・はちみつ不使用)かつ、アルコールフリーで調理すればすべての人が食べられるメニューになります。
難しいと感じる場合は、まず肉を使わない、次に魚を使わない、その次はアレルギー7品目を使わない、最後はアルコール調味料も使わないというふうに、段階的に取り組めば実現しやすいと思います。

まずはベジタリアン対応を地域全体で取り組む
守護:ベジタリアン対応を謳っていても調味料まで配慮できていない店が多くあります。ガイドもお店の対応度合いを確かめてから送客するようにしましょう。
山崎:お店側もハラール認証は取得していなくても、食材や調理方法、調味料もすべてハラール対応しているなど、特別食への対応ポリシーをホームページなどに表記しておくことが有効です。
村山:やはり、地域全体でハラールやベジタリアン対応をしたほうがよいのでしょうか。
守護:その地域に1店舗だけあっても旅先に選ばれる可能性は低いので、地域全体で取り組んだほうが効果的です。また、この地域には対応できる店がこれだけあるという情報発信も重要です。
村山:食の多様性に合わせすぎると、伝統的な日本の食文化の良さが失われないでしょうか。
守護:100年以上続く名古屋の老舗みそ煮込みうどん店では、ベジタリアンに対応するため、かつお節の出汁をキノコ出汁に変えて提供しています。日本の総人口が減るなか、5代目の主人が世界標準で作らないと店も続かないと考えた結果、ベジタリアン対応食を始めました。
村山:最後に観光事業者に向けてメッセージをお願いします。
守護:食の多様化についてぜひ一度、学んでみてください。最初は面倒だと思うかもしれませんが、コロナ禍で日本国内にテレワークがここまで浸透したように、食の多様性もやってみればそんなに難しいことではありません。
山崎: withコロナもアフターコロナの生活も同じ一本の線でつながっています。食のニーズが多様化する今、ベジタリアン対応を進めておけば、今後、ムスリムや台湾ベジタリアン、欧米ベジタリアンにもアプローチしやすいと思います。

【登壇者プロフィール】
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役 守護 彰浩氏
楽天株式会社を経て2014年1月より6カ国語で日本国内のハラール情報を発信するポータルサイトHALAL MEDIA JAPAN運営のほか、国内最大級のハラールトレードショー・HALAL EXPO JAPANを4年連続で主催。2018年4月からベジタリアン事業にも注力し、中国語でのベジタリアン情報サイト「日本素食餐廳攻略」をスタート。フードダイバーシティをコンセプトにハラール、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャなど、あらゆる食の禁忌のコンサルティングを提供中。

アフターコロナの観光・インバウンドを考えるVol.9
「加速する食の多様性 〜地域・観光事業者が今すぐやるべきこと〜」
(やまとごころ 2020年6月19日)
https://www.yamatogokoro.jp/column/inbound-seminarreport/38847/

ベジタリアンやハラールなど食の多様性についてこのレポートは必見です。(長いですが…)
ベジタリアンは、1位インド28%、2位台湾14%、3位ドイツ10%、4位カナダ9%、日本は4%480万人だと観光庁が発表しています。台湾の14%には驚きです。
多様な食に対応するには、ベジタリアンに対応するのをベースに、イスラム教などの宗教を重ね合わせて、使用できない食材、使用しても良い食材を考えると理解しやすい。(下記の表を参照)
訪日客のうちイスラム教徒は100万人、ベジタリアンは149~190万人だそうです。日本のベジタリアンも480万人いることから、『世界の誰もが食べられる食材、調理法』で料理を提供することが、日本人にも、ハラールなど宗教上の理由を持つ人にとっても、適しているとの話でした。

【ポイント】
インバウンドの増加により、ベジタリアンやハラールなど食の多様性に対応する飲食店が増えつつある。食の多様性を踏まえた事業を展開する専門家、フードダイバーシティ株式会社・代表取締役の守護彰浩氏とフリーフロム株式会社代表の山崎寛斗氏を迎えて、世界の食の潮流を読み解いた。

参考:台湾から訪日するベジタリアンは想定60万人!台湾で訪日ベジタリアンガイドブックを制作する山崎氏の挑戦
https://www.yamatogokoro.jp/inbound_interview/35431/

1)マクロな情報から「世界の食の多様性」を知る
村山:ベジタリアン、ハラールといった食事について、その違いについて大まかに教えてください。
守護:食の多様性は「アレルギー」「食の禁忌」「好き嫌い」の3つに分類するとわかりやすいです。
なかでも食の禁忌は、イスラム教のハラールのように「宗教」を理由とするものと、ベジタリアンのように「動物愛護や健康志向」といった主義によるものなど多岐に渡ります。
例えば、グルテンフリーの場合、アレルギーでなる人もいますが、主義でなる人もいます。
食の多様性といっても、その理由はさまざまだという認識を持っておくとよいと思います。

多岐に渡るベジタリアンの背景 欧米では主義、東洋では宗教
村山;飲食店からは、何から始めればいいのかわからないという声が多いのですが。
守護:ベジタリアンをベースに考えてみると着手しやすいと思います。ベジタリアン食を作る際に卵を避ければヒンドゥー教の多くに対応できますし、根菜類を避ければジャイナ教にも対応できます。逆にハラール肉と魚介をプラスして、みりんや料理酒等のアルコール成分の調味料を避ければ、イスラム教にも対応できます。
 

村山:ベジタリアンの比率が多い国はどこですか。
守護:欧米よりも東洋のほうがベジタリアンは多い。観光庁調査によると、1位インドで28%、2位台湾で14%、3位ドイツで10%、4位カナダの9%となっています。日本は約4%480万人がベジタリアンと言われています。
村山:台湾が多いことに驚きました。
山崎:台湾には仏教徒が多く、人口の約14%がベジタリアンだと言われています。台湾の仏教徒は「五葷(ごくん)の野菜」と呼ばれる匂いが強い根菜類(ネギ、にんにく、にら、らっきょう、あさつき)を使わない素食を食べます。街中の飲食店の看板をよく見てみると、ベジタリアン食を意味する「素食」が表記されている店が多いです。
ベジタリアンになる理由として、欧米は環境問題、動物愛護などの主義が多く、アジア圏では圧倒的に宗教が多いという傾向があります。

村山:次に、それぞれの市場規模について教えてください。
守護:イスラム教徒は世界で18億人いて、訪日インバウンド市場においては100万人と言われています。一方、ベジタリアン人口は2018年には6.3億人にのぼり、訪日インバウンドにおいては149~190万人と推計されます。
ただ、単純に対象者数だけでは図れない部分があります。例えば20名の団体客のうち、ベジタリアンが一人でもいれば、対応食がある店を選びます。つまり、たった一人の対象客が残りの19人を連れてやってくるわけです。その経済効果は大きく、飲食店において食の多様性に対応する価値が充分にあります。
山崎:最近は公にはしない「隠れベジタリアン」、週1回だけの「ゆるベジタリアン」が日本を含む世界各地で増えており、潜在的な客は相当数いると推測されます。

2)アフターコロナにおける食の変化
村山:アフターコロナにおいて食へのニーズで大きな変化はありますか。
守護:世界中でコロナ太りと野菜不足が顕著です。日本においてもコロナ太りを感じている人が57%いました。実際、4月のマクドナルドの売上は前年比107%、5月は115%と伸びています。ファストフード業界の売上はコロナ下においても減っていません。健康不安から少しでも野菜を摂取しようと、1月~4月期の野菜ジュースの売上も前年比を上回りました。
山崎:アメリカでも健康志向の高まりから、プラントベースミート(植物性の肉)の4月の売上が1週間で200%増、昨年対比で265%増になりました。
世界最大規模のベジタリアン・レストラン検索サービスであるHappy Cow上で、世界一のヴィーガンレストランとして支持を集める自由が丘の「菜道」では、コロナショック以降、ヘルシーな野菜料理を求め、ベジタリアンではない新規客が一気に増えたそうです。しかし、食べる量を減らしたいわけではないので、食べ応えのある和食でベジタリアンアレンジされたものが好評だったようです。

ベジタリアンやヴィーガンの動きが世界中で活発化
守護:ベジタリアン=サラダは日本だけの捉え方で、世界では全く通用しない常識です。見た目も味も本物の肉と遜色ないプラントベースミートを使ったりすることでメニューの幅も広がっています。食においてはいま、コロナ太り特需のような形でヘルシーなベジタリアン食に世界中から注目が集まっています。

3)地域・観光事業者が今やるべきこと
村山:コロナ禍で食の多様性に対して地域や事業者が今できることは何でしょうか。
守護:まずは国内500万人と言われるベジタリアンをどう集客するかだと思います。
飲食店やホテル、物販でもベジタリアンをはじめとする食のニーズの多様性について学び、対応していくことで、日本人需要だけでなく、その先のインバウンド需要も取り込める可能性があります。
山崎:飲食店やホテル事業者と実際に話をしてみると、ベジタリアン食、ハラール食を外国人向けの「特別食」と捉え、対応を後回しにしてしまう傾向が強くあります。しかし、目の前の国内市場においてもコロナ太り・野菜不足特需として一般消費者のなかでもベジタリアン食を求めるニーズは高いです。
国内ニーズをうまく取り込み、後々インバウンド客が戻ってきたときに、同じベジタリアン食を提供すれば効率的です。

既存メニューが「実はハラール」「実はヴィーガン」
村山:経営的に厳しい飲食店事業者にとって、食の多様性に対応する手間やコストを省ける方法はありますか。
守護:手間やコストを考えた場合、メニュー開発の方法として3つのパターンがあります。
1つ目が既存メニューの中で、ハラール、ヴィーガン対応できるメニューを見つけるというパターン、
2つ目が既存のメニューとは別に特別食を開発するパターン、
3つ目が特別食は外部調達するパターンです。
実際にはパターン2から始める店が多いのですが、手間もコストも増えてしまいます。お店の負荷が一番少ないのは、パターン1です。実績が出るお店はパターン1が多いです。
村山:特別食だと気付かずに、一般消費者も食べているということですね。
山崎:京都御所にあるうどん屋は、既存メニューにハラール対応やベジタリアン対応のマークだけ付けています。あまり大々的に表記してしまうと、該当しない一般の日本人が注文を避けてしまうリスクがあるので、必要な人にだけ伝わればいいというスタンスで、マーク表記にしているのでしょう。
守護:プリンも卵を使っていないものを「ヴィーガン用プリン」と謳うのではなく、「植物生まれのプリン」として売り出している例があります。
最近の食品メーカーは一般消費者も取り込めるように、ヴィーガン食を開発することに注力しています。

誰もが食べられる世界標準の料理で多くの客層を取り込む
守護:ホテル事業者は感染予防のためビュッフェを休止するところが多く、代わりにお弁当でどうやって特別食に対応するかが課題となっています。ビュッフェであれば客本人が食べる料理を取捨選択できますが、お弁当ではそうはいきません。かといって特別食対応の食事が用意できなければ、そもそも宿泊先として選んでもらえません。
お弁当メニューの開発が急務ですが、弁当の種類を増やすよりも、誰もが食べられる調理方法で作っておくと無駄がありません。ヴィーガン(卵・乳製品・はちみつ不使用)かつ、アルコールフリーで調理すればすべての人が食べられるメニューになります。
難しいと感じる場合は、まず肉を使わない、次に魚を使わない、その次はアレルギー7品目を使わない、最後はアルコール調味料も使わないというふうに、段階的に取り組めば実現しやすいと思います。

まずはベジタリアン対応を地域全体で取り組む
守護:ベジタリアン対応を謳っていても調味料まで配慮できていない店が多くあります。ガイドもお店の対応度合いを確かめてから送客するようにしましょう。
山崎:お店側もハラール認証は取得していなくても、食材や調理方法、調味料もすべてハラール対応しているなど、特別食への対応ポリシーをホームページなどに表記しておくことが有効です。
村山:やはり、地域全体でハラールやベジタリアン対応をしたほうがよいのでしょうか。
守護:その地域に1店舗だけあっても旅先に選ばれる可能性は低いので、地域全体で取り組んだほうが効果的です。また、この地域には対応できる店がこれだけあるという情報発信も重要です。
村山:食の多様性に合わせすぎると、伝統的な日本の食文化の良さが失われないでしょうか。
守護:100年以上続く名古屋の老舗みそ煮込みうどん店では、ベジタリアンに対応するため、かつお節の出汁をキノコ出汁に変えて提供しています。日本の総人口が減るなか、5代目の主人が世界標準で作らないと店も続かないと考えた結果、ベジタリアン対応食を始めました。
村山:最後に観光事業者に向けてメッセージをお願いします。
守護:食の多様化についてぜひ一度、学んでみてください。最初は面倒だと思うかもしれませんが、コロナ禍で日本国内にテレワークがここまで浸透したように、食の多様性もやってみればそんなに難しいことではありません。
山崎: withコロナもアフターコロナの生活も同じ一本の線でつながっています。食のニーズが多様化する今、ベジタリアン対応を進めておけば、今後、ムスリムや台湾ベジタリアン、欧米ベジタリアンにもアプローチしやすいと思います。

【登壇者プロフィール】
フードダイバーシティ株式会社 代表取締役 守護 彰浩氏
楽天株式会社を経て2014年1月より6カ国語で日本国内のハラール情報を発信するポータルサイトHALAL MEDIA JAPAN運営のほか、国内最大級のハラールトレードショー・HALAL EXPO JAPANを4年連続で主催。2018年4月からベジタリアン事業にも注力し、中国語でのベジタリアン情報サイト「日本素食餐廳攻略」をスタート。フードダイバーシティをコンセプトにハラール、ベジタリアン、ヴィーガン、コーシャなど、あらゆる食の禁忌のコンサルティングを提供中。

フリーフロム株式会社 代表 山崎 寛斗氏
「フードダイバーシティ株式会社」の社内ベンチャーとしてフリーフロム株式会社を設立。”プラントベースで日本と世界を繋ぐ”をミッションに、メディア、コンサルティングなど多岐にわたる事業を展開。訪日台湾ベジタリアン向けメディア「⽇本素⾷餐廳攻略(Facebookページ)」のほか、『東京食素!美味蔬食餐廳47選』及び「關西食素!美味蔬食餐廳55選」を出版。訪日ベジタリアン向けプラットフォーム「素伴 vegmate」で更なる満足度向上を目指す。