世界の観光リーダーが今年の注目トレンドを予測、旅行体験では「ハイパーローカル」、出張の滞在は長期化か?【外電】
(トラベルボイス 2022年1月3日)
https://www.travelvoice.jp/20220102-150285

【ホッシーのつぶやき】
世界の旅行関係者は「未来をつくるのは私たち」とポジティブで、野心的な予測をしている。テクノロジーも進化し、バーチャルツアーがリアルな旅行体験を補完し、今までになかった新しい観光の姿が世界的に広がるという。
サステナブルな旅、環境負荷の少ない旅を意識し、オーバーツーリズムやコロナ禍の反動から、訪問先の地域を知り、地元の人々と交流し、より深い文化体験を求めるようになるという。
観光に携わる者は、このような意識をさらに高める必要がある。

【 内 容 】
世界の旅行関係者が日々、情報交換している英語のオンライン・コミュニティ、トラベルマッシブ(Travel Massive)をご存じだろうか? 2021年も終盤に近付くなか、同サイトで盛り上がった投稿の一つが「2022年はどんな年になる?」というお題。ここに寄せられたコメントから、世界のトラベルリーダーの視線の先にあるものを探ってみよう。
トラベルマッシブ創業者であり、コミュニティ・リーダーを務めるイアン氏が「2022年の旅行予測」を募ると、2週間ほどの間に、様々な分野で旅行・観光ビジネスに従事する起業家や経営者、グローバル企業の幹部社員などから35以上のコメントが集まった。「未来をつくるのは私たち」という気概にあふれた「クリエイティブかつポジティブ、野心的」な予測を、とのリクエストに応えた投稿の一部を紹介する。

加速するテクノロジー
近未来的かつポジティブな注目株として、まず挙がったのは自動運転車両。米国の複数都市でロボタクシーの走行が始まる予定で、ドイツや中国でも同様の動きが広がるなか、「これを活用したイノベーションがツーリズムでも本格化する」(Autoura、アレックス・ベインブリッジ氏)。中国では、すでに無人飛行機での観光も始まっている。

2022年はフェイスブックに続き、アップルもメタバースに本格参入。同社が開発に力を入れてきたウェアラブル端末のメガネ、「アップルグラス」が登場し、拡張現実(AR)の世界を楽しめるようになりそうだ。
洗練されたバーチャルツアーが楽しめるようになれば、リアルな旅行体験を補完したり、これまで直接、つながることが難しかった旅行者と現地ガイドの関係が深まり、リピーター客獲得につながるなど「今までにはなかったハイブリッドな世界が広がる」(Neuwly、スティーブ・クリステンセン氏)。

それから暗号資産(クリプトアセット)。イーサリアムやビットコインへの関心は、一部層に限られているが、2022年はクリプト投資元年に。「クリプトにやさしい自治体、例えば米マイアミやドバイなどへ、資金調達したい旅行系スタートアップなどが集まるようになる。さらにRedditやツイッターなどがユーザー教育に力を入れることで、仮想通貨に投資する人のすそ野が広がり、使い勝手のよいクリプト・ウォレットでの決済取引が増えていく」(トラベルマッシブ、イアン氏)。

ハイパーローカルな体験
旅行体験に関するキーワードとして多く挙がったのは、「ハイパーローカル(地域密着型)」「スロー」「人との交流」など。
パンデミック以前から問題となっていたオーバーツーリズムや、ロックダウン下の暮らしへの反動で、「訪問先の地域を知り地元の人々と交流できる、表層的ではなく、より深い文化体験」(The Storied Experienceサマンサ・ハードキャッスル氏)が求められる。

同時に、過去2年の経験から、自分が暮らすエリアを再発見する楽しさに目覚めた人たちが、引き続き自宅近くで「ハイパーローカルな小旅行や体験を楽しむ流れも継続する」(Jake Bergquist氏)。「マイクロトラベルのブランドは今後さらに増えて、今までにはない体験、ハイパーローカルかつサステナブルな提案が充実する」(Tashi, マカルタン・ゴーガン氏)。

電車や自転車でサステナブルな旅
温暖化ガスの排出量を減らし、気候変動への悪影響を軽減する手段として、注目が高まるのが鉄道や自転車だ。
「移動時間が長くなり、多少スローな旅になるとしても、(飛行機より)鉄道を選ぶようになる。実際にスコットランドでは、ロンドンとの往復に便利な新鉄道サービス、Lumoが運行開始し、安価に気軽に移動できるようになった」(Traveltech for Scotland,ジョシュア・ライアン-サーハ氏)、「海外の鉄道の予約も、もっと便利になってほしい」(GigsGuide, フランチェスコ・セトラーロ氏)。
ヨーロッパでは、「鉄道=サステナブル」というイメージを意識した取り組みも。2021年12月に登場した英国の鉄道プラットフォーム「Trainhugger」では、気候変動問題に敏感なユーザー獲得の一策として、予約手数料の一部を木の苗の植樹費用に充てている。
自転車やEバイクでの市内ツアーやレンタル利用を挙げたコメントも多い。ほどよいペースであちこち移動できるし、何より健康的で身体に良いことも理由だ。

移動手段だけでなく、宿泊先についても、サステナブルな施設かどうかが、これまで以上にチェックするようになる。「例えばLEED認証を受けているか、トイレタリーグッズは地元産のものを使用しているか、水の使用量は適切か」(elsewhere.io, クレイグ・ザパトカ氏)。
地球や他者に寄り添うこと、より良いソーシャルインパクトのある旅、地域社会にも環境にもやさしいグリーントラベル志向はさらに高まる。「旅行会社やガイド選び、ショッピングでも、何かしらの形で地域社会や環境に貢献しているところを選ぶようになる」(Yugen Earthside, ヒラリー・マトソン氏)

ワークスタイルの多様化で変わる法人旅行
パンデミックによる移動制限やSDGs、リモートワークの普及など、複数の要因が重なった結果、大きく変わりそうなのが法人旅行だ。「出張の頻度は減り、滞在日数は長くなる」(Travelport, マーク・レナハン氏)。
例えば、急に出張が決まり、長時間のフライトで移動し、短い対面ミーティングをする、といった営業スタイルは過去のものに。「企業側が出張の必要性をよく吟味し、計画的に予約手配するようになると、旅行業の売上はどちらかといえば減るのかもしれないが、本当に必要とされている出張のあり方を模索するべきだ」(レナハン氏)。
社員やチームが毎日オフィスに出勤するのではなく、別々の場所で働くようになると、適宜、必要な人材を集めたワークショップやミーティングの機会を作ることも必要になりそうだ。こうした需要に対応できる旅行事業者やITサービスにも注目だ。
ノマド的ライフスタイルが広まることで、ビジネスと観光、旅と日常の境界線があいまいになるとの指摘も。「旅行しながら仕事したり、休日を楽しんだりするノマドワーカーが増えると、一回の旅行当たりの滞在期間は長くなる。受け入れデスティネーション側がこうした旅行者層をターゲットにするなら、従来の観光客向けとは違うマーケティングや、リモートワーカー向けの各種サービス、就労ビザ緩和などの対策も必要だ」(GeotravelerMedia + Local Purse,ローラA.オーケストロム氏)。

その他、ワクワクする未来というより、現実的なところでは、「グローバルで通用するワクチンパスポートが何より急務」「航空券の変更や再予約にかかる手数料は、少なくとも3-5年は廃止され、PCR検査費用も航空会社が負担するようになる」「保険がますます重要になる。突然の国境閉鎖、海外滞在中の健康不安などに対応するために必須」「パンデミック下の暮らしで便利に活用してきたオンラインでの食事手配や各種サービスを、旅先でも利用したくなる」など、様々な意見が寄せられた。

※この記事は、海外旅行業関係者が情報交換をおこなうオンライン・コミュニティ「トラベルマッシブ(Travel Massive)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。