JNTOが独自調査。重点22市場の訪日意向・傾向が明らかに
(MATCHAインバウンドニュース 2022年5月2日)
往来再開を見据え、世界 22 市場で訪日旅行意向に関する独自調査を実施
~訪日旅行の潜在的な市場規模は推計 3.3 億人~
(JNTOプレスリリース 2022年4月28日)
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/gd6qf900000017ic-att/r_20220502_1.pdf

【ホッシーのつぶやき】
今回のJNTOの22市場の海外旅行の意向は分かりやすく整理されている。
訪日リピーターの多い台湾、香港は、日本をよく知っているのでダイレクトに魅力を伝えるほうが良いですが、中国は訪日経験のない人も58%いるので、まだまだスタンダードな情報が必要です。
欧米豪・インド・中東市場を見ると無認知層が多いので、他の国よりスタンダードな魅力を訴える必要があります。日本全国、欧米豪をターゲットにしようとしていますが、よほど他国より優れた魅力を訴えないと厳しいのが現実です。

【 内 容 】
JNTO(日本政府観光局)が、独自調査を実施、結果を発表しました。
対象となったのはビジットジャパン重点地域に定められた22市場(※)で、訪日を含める海外旅行の意向等が調べられました。
今回はレポートの中から一部を抜粋し、今後の訪日施策に役立ちそうな情報をご紹介いたします。

※対象地域は以下の通り
韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、米国、カナダ、メキシコ、豪州、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア、中東地域(UAE、サウジアラビアを中心とした GCC 加盟6ヶ国、トルコ、イスラエル)

■訪日への関心が高いアジア層、未認知が多い欧米層

こちらは各国の旅行者層の訪日に関する意識を4段階(無認知、認知、興味関心、比較検討)に分け、その割合を示したものです。
まず、訪日リピーターの多い台湾では、無認知・認知層が少なく圧倒的に興味関心・比較検討層の割合が高い結果となっています。
「日本とはこんな国」という認知や基本知識を与える必要がないので、ダイレクトに観光的魅力を伝えることができます。
一方、フィリピンや中国などは比較検討の割合が高いことから、単純な観光的魅力の発信ではなく、他の国々に勝っている点の訴求や、他の国の観光PRを上回るメッセージが有効そうです。

欧米豪・インド・中東市場のデータも見てみましょう。
アジア地域に比べると圧倒的に無認知層の割合が高く、そもそも旅の選択肢としての日本の存在を伝える必要があります。
地域というよりどちらかというと国レベルでの施策が必要なのかもしれませんが、もしも地域で情報発信をするのであればわかりやすい日本らしさや、圧倒的にインパクトのある観光的魅力の訴求がポイントとなるでしょう。
日本全国に欧米豪をターゲットにしている地域があり、それはまったく悪いことではありません。
ただし欧米豪をターゲットにする場合は、このようなハードルの高さ、アジアと比べて相対的に少ないパイを取り合っている現実を認識しておきたいところです。

■地方エリアへの関心が高いのは台湾・中国・タイ
地域でインバウンド集客を担当する方はこちらのデータが気になるのではないでしょうか?
日本の地方エリアへの訪問を考えている人の国別割合です。なお、ここでいう地方エリアとは東京都、大阪府、京都府以外の地域のこと。
台湾では最も高い87.3%が地方エリア訪問を希望しています。リピーター率の高い台湾ですので、納得の数値ではあります。
その後、中国、タイ、インドネシアなどの東アジア、東南アジア諸国が続きます。一方でアメリカ、イギリスなどの欧米諸国は50%程度と低い割合にとどまっており、地方部での集客を考えている方は参考になさってください。
■日本の競合国はどこ? ターゲット国ごとに検証すると?
官民を含める過去のアンケート調査と比較して今回ユニークだったのは、各市場ごとに日本の競合になりうる地域を調査している点です。

今回はアメリカと中国の例を紹介いたします。

アメリカ人旅行者層を訪日回数(0回、1回、2回以上)で3グループに分け、彼らがそれぞれ日本以外にどの国へ言っているのかをグラフ化しています。
訪日経験が少ないアメリカ人旅行者(0回、1回)は、メキシコなどの近隣国、イギリス、ドイツなどの欧州諸国を数多く訪問しています。この結果から推察するに、この層が海外旅行に求めるのは、距離感や観光資源など日本にはない特徴であるようです。
では、アメリカの訪日リピーター層(=2回以上訪日)の場合はどうでしょう。
私たちは”訪日リピーター層”と聞けば随分な日本ファンだと思いこんでしまいますが、実際はシンガポールや香港への訪問回数のほうが高い結果となっています。
つまり、彼らは日本ファンというより東アジアファンなのかもしれません。彼らを呼び込むためには、日本らしさだけでないアジアらしさや、香港やシンガポールと比較した場合の優位性が必要となります。

中国の例も紹介します。
中国市場では旅行者層を更に細かく4つに分類(訪日回数0回、1回、2-3回、4回以上)して調査。
訪日回数が少ない層は韓国・タイなどのアジア諸国への訪問割合・回数が高く、訪日回数が高まると欧米豪地域への訪問割合が上昇しています。
前者を仮に海外旅行初心者、後者を玄人と表現してみます。
海外旅行全体への参加回数が少ない初心者層は、日本ではなく韓国、タイを選ぶ率・回数が多いようです。つまり、中国人の海外旅行初心者が求めるものを、日本は十分に提供できていないのかもしれません。それは気軽さ(値段、ネット環境、言語環境)かもしれませんし、わかりやすい海外旅行らしさのような魅力なのかもしれません。
このあたりは統計データではなく、個別のユーザーヒアリングなどで調査してみたいところです。
一方、後者の海外旅行玄人層、特に訪日回数4回以上の層のデータを見ていると、アメリカ、フランスなどの並み居る観光大国を抑え、日本の訪問回数が7回と圧倒しています。
日本は何度訪問しても楽しめる国、様々な国を訪問してこそ魅力に気づける国と言えるかもしれません。

■訪問率が高く消費単価の低いアジア市場、訪問率は低いが消費単価は高い欧米豪・インド・中東市場
このような結果を踏まえ、資料中では各市場における日本の立ち位置を上記のように整理しています。
なんとなくみなさんがイメージしていた通りの姿かもしれませんが、具体的な言葉や数値で示されると、よりわかりやすくなりますね。
今回は一部のみご紹介しましたが、読めば読むほど気づきの得られるデータが満載ですので、ぜひGWのお供に読み進められることをオススメいたします。