中国の国際線再開への道のりは? 戦略見直す航空会社、パスポート再取得も需要に影響か、航空データ分析OAGが見通しをレポート
(トラベルボイス 2023年1月18日)
https://www.travelvoice.jp/20230118-152788

【ホッシーのつぶやき】
中国のゼロコロナ政策により、アジア太平洋の国際観光客数は2022年23%止まりとなった。中国の国際線市場は1億200万席、その損失額は中国国際航空と中国南方航空で70億ドルにもなる。またスタッフを再雇用やパスポートの再発行などの問題もあり、国際旅行に大きな影響が出そうだ。
それでも中国の海外旅行に期待をかけざるを得ないのが泣きどころですが…

【 内 容 】
航空データ分析OAGは、ゼロコロナ政策を転換し、移動制限を緩和した中国の航空市場の今後の見通しについてレポートしている。
中国は2019年、1億200万席の供給する世界第5位の国際線市場だったが、2022年にはわずか740万席にとどまり、51位まで市場規模は下落した。中国の航空会社の損失も甚大な規模になり、2022年第3四半期までの損失額は中国国際航空が46億ドル(約5888億円)、中国南方航空が24億ドル(約3070億円)に達した。もはや民間企業が吸収できるレベルではない。

1月22日から始まる旧正月の連休で航空予約が増えているのは回復に向けた明るい兆し。収益性が高くない国内線が中心だが、需要拡大による航空会社の収益増加への期待は大きいだろう。

一方、国際線については、ほとんどの海外の航空会社は中国便を販売してこなかった。販売可能な座席の制限、コロナ感染者報告に対する高額な罰金、乗務員の調整など多くの航空会社にとってリスクの高い期間が続いており、中国市場でのポジションをなんとか維持しながら、市場の回復を待っている状況だ。

今後の国際線市場は?
シンガポール航空は、2019年に約1万1000便、1日約30便の中国便を運航していたが、現在は1日1便。多くの航空会社にとって、中国路線の再構築には時間がかかると見られる。

中国に多額の投資を行ってきたフィンエアーは、中国の代わりに米国線のネットワークを強化。ダラス・フォートワース、シカゴ、シアトルなどへ路線を開拓してきた。多くの航空会社は、すでに2023年夏期の座席の販売を開始しているなか、中国路線を再開させる余裕はない可能性がある。

アジア各地からの路線については、北米からの接続便を最大化することで、コロナ前のようなビジネスに戻るかもしれないが、欧州から中国への路線には課題も多い。欧州の航空会社は、ロシア上空を飛行できないためにフライト時間が長くなっており、機材や乗務員、復路の時間、接続便など様々な調整が必要となる。

一方、中国の航空会社はロシア上空の飛行が可能なため、再開されれば、時間とコストで欧州の航空会社よりも優位な立場に立てるだろう。

米国の航空会社にとっては、米中の政治対立が影を落とす。コロナ前でも一部の航空会社が中国の空港で発着枠を確保するのは困難だった。アメリカン航空は2018年に、巨額の損失を出したことから、シカゴから北京および上海への運航を停止した。現状、米国の大手航空会社は中国への定期便は運航しておらず、その期間、欧州とインドに投資を行ってきた。

そのような背景から、今後は中国の航空会社が欧州および米国市場で優位に立つ可能性がある。中国国際航空はスターアライアンス、中国南方航空はスカイチームに属しており、その2社は、新たな路線を開拓することなく、パートナーの国内短距離路線に接続させるだけで、市場を拡大できる。それは、2社にとって極めて合理的なシナリオになるだろう。

国際線回復には供給量以外の課題も
中国の国際線市場の回復には、別の課題もある。過去3年間、中国ではパスポートが発行されておらず、パスポートを失効した人は再度申請をしなければならない。しかし、その処理にはかなりの時間がかかると見られている。2018年の申請数は約3000万件といわれ、もし3年の間に失効したパスポートの再申請を加えると、その数は約9000万件にのぼると言われている。

また、コロナ禍で旅行市場も変化した。中国人旅行者が市場からいなくなって以来、多くの観光地では、インドや中東などの市場を開拓し、少なくとも今夏の宿泊予約は確保していると言われている。そのなかで、中国のオペレーターが在庫を確保するのは難しく、中国向けのマーケティングにも時間がかかると見られている。

中国の海外旅行市場は、VFR(友人・親戚訪問)から回復する可能性が高い。この傾向は、今年初旬に中国の航空会社が発表した米国便の予約にも表れている。VFRの次にグループ旅行が戻るが、法人の回復はかなり遅れるかもしれない。

中国当局は、突然、渡航制限を緩和したが、海外旅行市場の再開に向けた計画はなく、航空会社が急に供給量を増やすことはできないこと理解していないようだ。

それでも、中国は来年にかけて、再度、世界の主要な海外旅行者の供給国になるだろう。特にタイ、ベトナム、日本、韓国などへのレジャー旅行は今年下半期には急速に回復すると予測されている。今年徐々に回復し、2024年以降には再びトップ5の市場に返り咲くだろう。