京都の街並みを再現した960億円の巨大プロジェクト、中国の大連市で進行中(やまとごころ 2019年9月30日)https://www.yamatogokoro.jp/column/inbound-frontrunner/34198/?utm_source=newsletter&utm_medium=email

中国の大連市に東京ドーム約13個分という広大な敷地に、本格的な京都の街並みを作る巨大プロジェクトが進められている。投資総額は960億円という。日本人と共に設計チームを結成し、日本の建築材や家具を取り入れるなど和風の再現にこだわり、すでに別荘は完売し、温泉付きホテルもオープンしているという。日本の企業も興味を示しているというが、時代が本物思考を向く中で、取らぬ狸の皮算用に思えてならない。

【ポイント】中国の大連市で本格的な京都の街並みを作る『京都風情街プロジェクト』が進められている。投資総額は960億円という。

プロジェクトは、不動産開発から木製工芸品の加工まで幅広く手がける大連樹源科技集団有限公司(以下、樹源グループ)。きっかけは、樹源グループのオーナーの張氏が訪日旅行した際、日本流のおもてなしや雰囲気に感銘を受けたことだという。「京都では食べ歩きをしながら、お店に立ち寄ったりしながら町歩きを楽しむことができる。そんな事ができる魅力的な街は世界中どこにもない」。オーナーの夫人のそんな言葉がプロジェクトスタートのきっかけとなったという。場所は、大連市の中心部から約40キロ西にある金石灘地区で、64万㎡(東京ドーム約13個分)という広大な敷地に、温泉ホテルと温泉付き別荘が開発されており、今後は清水寺の参道「二年坂(二寧坂)」を模した、情緒ある家屋や商店が立ち並ぶ美しい街並みが開発される予定となっている。

湯景沢ホテルと別荘地の開発では、日本人と共に設計チームを結成し、日本の建築材や家具を取り入れるなど、和風を再現することにこだわっている。屋根には日本製の瓦が使われており、雨どいまで付いている。別荘は2016年より販売され、最高金額は1億5000万円となるが、約200棟すべてが販売直後に完売したほどの人気ぶりだ。購入者は中国国内の富裕層だ。 

観光客用の温泉付きホテルもすでにオープンしている。提供される料理は和食にこだわり、日本から料理人を派遣して、従業員に和食のノウハウを伝授した。日本の温泉宿をイメージした露天風呂のみならず、スパも完備。スタッフは日本風にお辞儀をし、和服でおもてなしをする。ハード面でもソフト面でも、観光客が日本に来ているような錯覚を起こすほどの出来栄えとなっている。ホテルは2人部屋でも1泊で約27,000円という、中国においては高額な価格設定となっているが、日本流のきれいさで好評を得ている。

京都風情街プロジェクトのスタートにあたり、京都の街並みを再現することにこだわったという。京都の風景には中国の唐の文化が残っていて、中国人が受け入れやすい、そして唐の時代のものは中国よりも日本の方がよりよく保存しているという点に着目したという。このプロジェクトを通じて中国人がより日本の文化を深く知るきっかけを作り、両国間の文化交流のプラットフォームとなることを目指している。プロジェクトの開発区のある大連には数多くの日系企業が進出しており、日本とのつながりも深い。清水寺周辺を再現した商店街には、日本の商品を取り扱う店や文化体験ができる施設を最終的に300〜400店建設する予定という。京都の老舗漬物店の出店予定などが興味を持ち、地方自治体のアンテナショップなどの使い方もできるという。日本文化を中国に伝えることで、両国の人々にとっての架け橋となることが期待されている。

2018年に日本を訪れた中国人は、前年比13.9%増の838万人と過去最高を記録した。一方で日本を訪れたことのない中国人もまだまだ多く、彼らは日本旅行に強い憧れを抱いている。大連で再現される小京都は、そうした中国人観光客に日本を疑似体験してもらうことで、訪日につなげる役割を担う可能性も大いに秘めているという。