中国人の「医療ツーリズム」熱が高まるわけ 〜コーディネーターの質など普及には課題も
(東洋経済オンライン 2019年9月3日)
https://toyokeizai.net/articles/-/300364

中国人は、日本の医療水準が高いという認識を持ち、医療滞在ビザ発給件数は2018年1390件と、3年間で1.6倍に拡大している。
日本語を話せない中国人が、健康診断や治療予約をするのはハードルが高く、患者と医療機関をつなぐ「医療コーディネーター」が存在する。ただ、医療知識が乏しいコーディネーターによる問題も発生しているという。
医療通訳とともに医療コーディネーターの質の向上が求められる。

【ポイント】
2018年に日本を訪れた中国人観光客数は、前年比13.9%増の838万人。
その中国人観光客の間で、医療を目的とする訪日が急増している。外務省によると、中国人への医療滞在ビザ発給件数は2015年の829件から2018年は1390件へと、3年間で1.6倍に拡大している。

2011年から訪日外国人への医療滞在ビザの発給がスタートした。
医療目的で来日する外国人は期限内であれば必要に応じて6カ月間、複数回滞在できるようになった(90日を超える場合は入院が前提となる)。
日本の医療滞在ビザを取得する外国人の中でも中国人の割合は高く、全体の8割を占める。

患者の中には中国の医療水準より、日本の医療水準のほうが高いという認識があり、安心できる日本の医療へのニーズが高まっているようだと話す。
日本語を話せない彼らが、自分たちで健康診断や治療の予約をするのはかなりハードルが高い。
こうした中国人の心理的負担を減らす存在として注目されるのが、患者と医療機関をつなぐ「医療コーディネーター」である。

医療コーディネーターは大半は中国人で、基本的には専業の会社に所属して語学研修も受けて活動している。口コミや中国内の代理店経由でやってきた患者に「どういった目的で来日するのか」「どの医療機関で健康診断や治療を受けるのか」といった要望をヒアリング。患者に代わって医療機関に受診予約を入れる。医療行為時に立ち合う通訳者も手配する。帰国後も診断結果の書類の翻訳や、万が一トラブルがあった際のアフターフォローも行う。
医療コーディネーターは治療費の数%に相当する金額を受け取る。

医療のなかでも特に成長が見込まれるのがアンチエイジング施術などを含めた再生医療の分野だ。
日本では2014年に再生医療関連法が施行される一方、中国では再生医療に関する法律がまだ整備されていない。

JTBは2010年、医療コーディネーター事業を展開する「ジャパン・メディカル&ヘルスツーリズムセンター(JMHC)」を社内に立ち上げた。同センターは、「中国人観光客が医療目的で訪れるのは、現在のところ東京など大都市圏が主流。ただ、中国人は地方にもレジャー目的で訪れるようになったので、医療ツーリズムも地方に広がっていくことを期待する」と語る。

医療ツーリズムの普及には課題もある。医療コーディネーターの質の問題だ。
医療通訳なので専門用語がわからないといけないが、医療知識が乏しいコーディネーターを採用してしまった医療機関もあり、患者に間違った通訳をすることでトラブルに発展するケースもある。
医療ツーリズムやコーディネーターへの規制は基本的にはない。「政府としても悪質な医療コーディネーターを取り締まるための枠組みを作る必要があるのではないか」と口にする。