JR東日本のMaaS戦略とは? 鉄道のオンライン化は正念場、チケット販売の未来から新たな観光需要の創出まで担当者に聞いてきた
 (トラベルボイス 2019年8月2日)
https://www.travelvoice.jp/20190819-135857

「MaaS」は、情報通信技術を活用した交通手段をシームレスにつなぐ新たな『移動』の概念になる。
2018年の観光関連のネット比率は新幹線26%。航空57%、宿泊施設44%だという。
これまでの駅は、販売拠点に過ぎなかったが、これからはお客様を迎える玄関の場となる。訪日客などの情報発信の場であるとともに、今後、2次交通をサポートする場として価値を高めていく。
シームレスに移動できれば、観光周遊の発展が期待できる。

【ポイント】
日本の旅行販売のオンライン化において最大の鍵を握るのが鉄道分野。
国内旅行、訪日旅行ともに、今後の成長を左右するのは需要の地方分散であり、利便性を高めて誘客を鉄道とバスなどの二次交通をシームレスにつなぐことは、新たな周遊を促進するうえで不可欠。

JR東日本でMaaS事業も担当する鉄道事業本部営業部観光流動推進グループリーダーの鴇澤良次氏のミニセッション。

JR東日本は予約サイト「えきねっと」を強化する方針。
2022年3月の旅行業システム更新に合わせ、旅行商品は交通と宿泊を選んで組み合わせる価格変動型のダイナミックレールパックに特化する。
2022年までに自社新幹線のチケットレスの割合を半分程度に引き上げる計画もある。

従来は、人が切符を発券して届けるオフラインの世界で動いていたが、パッケージツアーの販売減少、少子高齢化による担い手不足から、本格的なオンライン化に踏み込めむことになった。

鉄道の2018年のネット比率は26%(新幹線に限定)。57%の航空や44%の宿泊施設に大きく水を開けられているが、2001年にICカード・Suicaを導入し、現在はスマートフォンで予約・決済もできるようになったが、航空に比べ全般的に遅れている。
鉄道は発着駅、経路、設備のバリエーションが多く、単純にオンライン化できないが、新しい技術も取り入れ変わっていかなければならないと語る。チャットボット、スマートスピーカーなどの技術の導入も視野に入れる。
JRはえきねっとを強化する一方、2022年3月末までに駅で個人型パッケージツアーを販売する「びゅうプラザ」を営業終了する。

全国に駅という拠点があるのは鉄道業界の大きな強みである。
これまでの駅は販売の拠点だったが、これからはお客様をお迎えする場となる。訪日客や地方顧客への地域に根差した情報発信の場であるとともに、今後、ポイントとなるのがMaaS(2次交通統合型移動サービス)をサポートする場としての体制づくりだ。
OTAとの大きな違いは、ITとリアルな場との両輪で展開できること。テクノロジーを取り入れてオンライン化を進める一方、駅は販売だけでなく、これまでの定例業務だけでなく、地域の人たちと一緒に観光流動を進める仕事なども担っていくことを目指す。

JR東日本は、2019年4月から東急電鉄と共同で、伊豆エリアで観光型MaaS実証実験を実施している。
鉄道、バス、レンタサイクルなどの交通手段をスマートフォンで検索・予約・決済し、目的地までシームレスに移動できることを目指した第一歩を踏み出した。
地域を「シームレスにつなぐには互いの基幹システムの違いもあり、簡単ではない。予約、決済できることを目指しつつ、リンクを張るところからスタート。
観光型MaaSが実現し、シームレス化に移動時間が短縮できれば、観光周遊の可能性も高まる。
1日の乗降客数が1750万人に上るJR東日本が描く「デジタル×観光」から目が離せない。