京都・仁和寺「100万円の宿坊」どんな内容 境内独り占めもおカネ知って納得
(日本経済新聞 2022年12月3日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF222PK0S2A121C2000000/

【ホッシーのつぶやき】
京都・仁和寺、100万円で貸切宿泊です。その魅力は「1200年の歴史がある境内の夜の静寂や朝の爽やかな空気など言葉にできない感動」といい、富裕層が対象となります。世界に100万米ドル(1億4千万円)を保有する富裕層は5600万人いるといい、富裕層の方は特別な体験を求めています。
ローマ教皇のバチカン美術館のチケットは17ユーロです。しかし早朝ツアーは3倍、ディアー付き夜間ツアーは10倍、特別ツアーは300倍だといいます。特別な体験はお金に変え難い価値になります。

【 内 容 】

2018年に宿泊施設に改装した「松林庵」

世界遺産・仁和寺を一晩貸し切りにできます――。ふるさと納税のサイトでこんなページを見つけて驚いた。寄付しなくても一般利用できるが料金は100万円だという。「100万円の宿坊」では、いったい何ができるのだろうか。

「インバウンド(訪日外国人)で活況だった2018年に海外の富裕層を想定して受け入れを始めました」。訪れた仁和寺で大林実温執行長が説明してくれた。

日本財団の補助を受け、総工費約1億5700万円をかけて境内にあった旧家屋「松林庵」を改装。地場の職人や老舗企業がつくったソファや寝具をしつらえ、モダンな宿泊施設に生まれ変わらせた。テレビやWi-Fi設備などデジタル機器はほぼないが、ヒノキ風呂やプライベート庭園を堪能できる。宿泊できるのは最大5人だ。

モダンな宿泊施設に生まれ変わった「松林庵」

松林庵のほか、午後5時の一般拝観の終了後も翌朝の午前9時まで境内を自由に散策可能。松林庵の管理担当の矢倉槙子さんは「1200年の歴史がある境内の夜の静寂や朝の爽やかな空気など言葉にできない感動がある」と魅力を話す。

貸し切り期間中は散策以外に何ができるのだろうか。大林執行長によると「決まったプランはなく、希望に合わせて個別対応している」。宸殿(しんでん)で能楽を鑑賞したり、生け花や和菓子作り体験をしたりなど「基本的に何でも対応している」(仁和寺)。

100万円はあくまでも「場所貸し代」(同寺)で文化体験はそれぞれ追加料金が必要。要望に合わせて料亭や講師を無料で紹介する。依頼主と相談しながらプランを練るため相談から宿泊まで半年から1年ほどかかる場合もあるという。

これまで累計で10組以上が利用した。新型コロナウイルス禍の影響もあり海外からの利用は2~3組にとどまっている。日本文化に造詣の深い国内の個人が利用する場合や、企業が取引先や顧客の接待として利用するケースが多いという。足元では旅行需要が回復しており、22年度中には10組近くが宿泊予定で、海外からの問い合わせも増えている。

要望があれば宸殿(しんでん)内で能楽を鑑賞できる

仁和寺にとり宿泊料収入は施設維持の重要な財源になりうる。大林執行長は「国宝や文化財を修繕し続けるためには収入増を図る必要がある」と語る。境内を貸し切りにして個別の要望に応える寺院は全国でも珍しい。今後は訪日客需要も捉えながら寺の運営に生かしていく考えだ。