今、『観光』が大きく変化しようとしている!
(NPO法人 スマート観光推進機構 星乃 勝 2022年4月7日)

【ホッシーのつぶやき】
・日本の花火は400年の歴史、毎年1500件開催。しかし補助金や寄付金頼り。
・“煙火店主催の花火大会”を熱海で開催。花火だけでなく、2時間のエンターテイメントに演出して、チケットは1万円、10万円。
・「祭り」は担い手不足、神輿などの補修費も不足。新しい手法が必要。
・2019年の外国人旅行消費額4.8兆円。日本最大の自動車産業の輸出12兆円に次ぐ産業。日本の貿易収支にとって重要。
・インバウンド観光の収益増は「単価を上げる」、単価を上げるには「高付加価値」。
・8割の観光スタイルは変わらない、2割が変わり、この2割が8割を変える。観光は「多様化」に向かう。

【 内 容 】
 かつての観光は団体旅行と団体ツアーが中心でした。これらは多くの観光客を集め、効率よく観光して、食事するという、効率中心の観光スタイルでした。これがコロナ禍で「密を避ける」観光へと変化することになり、訪れることの無かった地域にも観光客が訪れるように変化しました。
 それでもコロナ禍で観光客は激減し、観光業界は悲鳴をあげ、祭りや花火大会も中止になっています。

 熱海の花火大会の事例をご紹介します。
 熱海では、これまで真夏から初冬にかけて、20分間の花火大会を、毎週、無料で開催されていました。それがコロナで全て中止となり、煙火店は事業継続が困難な状態になりました。そのような時、コーチング指導する文化庁の事業を受け、“煙火店主催の花火大会”が開催されました。チケットは1万円、10万円と高額でした。
 この話を聞きしたときはビックリしました。これまで有料席が数千円という花火大会はありましたが、1万円というものを私は知りません。しかし花火を見るだけでなく、花火を見る前と終了後を入れた2時間のエンターテイメントにすると聞いて納得しました。熱海では和太鼓と阿波踊りをミックスして、花火にオリジナル音楽をつけ、1フード1ドリンクを提供して、熱海の地場産の干物を土産に付けるなど工夫されています。チケットは発売とともに完売したそうです。
 日本の花火は400年の歴史があり、毎年1500件の花火大会が開催されています。しかし花火大会は、補助金や寄付金に頼っているため膠着化し、煙火店は請負事業者として参加しているだけで、自分たちでコントロールすることが無く、高付加価値化することができなかったといいます。
 煙火店主催による花火大会も検討されていたようですが、価格設定、PR手法、企画についても未知の問題ばかりなので、このコーチング事業に応募されたようです。
 今回の花火大会が成功裡に終わって本当に良かったと思います。 これまでのような請負仕事から、エンターテイメント事業者になるための経験を積まれたのが一番の収穫だと思います。観光協会をはじめ多くの事業者と協業していくノウハウは、今後の事業に大いに生きると思います。

 コロナ禍で事業ができなかったのは「花火大会」だけではなく「祭り」も同じです。「祭り」は、少子高齢化で担い手不足になり、また神輿や地車などの補修費など、財政面も地域だけで担っていくのは困難になっています。
 「祭り」は神社仏閣の祭礼であり、地域の伝統文化であることが多く、自分達で何とかしなければという思いも強いようですが、「祭り」も地域だけで担うのは難しくなり、新しい手法の開発が必要です。

 『観光』のスタイルも、観光地を訪れない「オンラインツアー」も生まれ、近隣を観光する「マイクロツーリズム」も生まれました。これまで無かったような観光スタイルです。
 12月に丹波のモニターツアーに参加しましたが、満足度が高かったのが「畦道ウォーキングツアー」です。最初は“ただの田んぼの畦道を歩くだけのツアー”と軽く見ていたのですが、ガイドのマリオさんが、昔やったことのある草笛や花輪などの「野あそび」「昔あそび」をしながら、食べられる野草を解説してもらったりしたのですが、ノスタルディからなのか脳が活性化された思いでした。最後に収集した野草やドングリを調理して食べさせてもらったのも、とても心地良かったです。今後の「マイクロツーリズム」のコンテンツに育ちそうに思いました。

 インバウンドは、今、ほぼゼロの状態です。しかし「日本に行きたいと思う外国人」が多いようです。しかしここでお話ししたいのは、2019年の訪日外国人数は3188万人、外国人旅行消費額が4.8兆円だったことです。訪日外国人3188万人は「混雑」「ゴミ問題」などの観光公害を引き起こしましたが、外国人旅行消費額が4.8兆円というのは驚くべき数字です。日本の貿易収支を見ますと、日本最大の輸出産業である自動車産業の12兆円(2018年)に次ぐ数字で、外国人旅行消費額が日本の第2位の収益を上げる産業にまでなっています。国は2030年には外国人旅行消費額を15兆円にすることを目指すとしています。
 日本のモノづくり産業の成長も重要ですが、インバウンド観光が、今後の日本の貿易収支にとってとても重要であることは変わりがないと思います。

 観光が変わろうとしているポイントの話です。1つ目は「多様化」です。2つ目は「高付加価値」、3つ目が「高単価」です。インバウンド観光の収益を増やすには「単価を上げる」こと、単価を上げるには「高付加価値」にするする必要があります。付加価値を上げるためには、設備を良くしたり、ガイドのスキルを上げたりすることが必要です。これまでの訪日旅行は「安くて楽しめる」から、外国人が大勢来られたという背景があるのですが、高付加価値にして、高単価の観光客を増やそうという戦略に切り替えようとされています。
 私も「高単価」「高付加価値化」「多様化」の考え方に賛同していますが、これは日本人の旅行スタイルにも変化を与えそうです。
 多分、8割の観光スタイルは変わらないのでしょうが、2割の観光スタイルが変わり、この2割の観光スタイルが8割の観光スタイルを変えていくのだと思っています。まずは「多様化」に向けた取り組みが始まったばかりです。この新しい観光スタイルが、健全で、日本の発展に寄与することを期待したいと思います。